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特定法人に係る電子申請の義務化についてのQ&A

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特定法人に係る電子申請の義務化についてのQ&A

総論

問1 社会保険・労働保険の手続きについて、どのような法人の事業所が電子申請の義務化の対象になるのでしょうか。

(答)電子申請の義務化の対象となる法人(特定法人)は、
○事業年度開始の時における資本金の額、出資金の額若しくは銀行等保有株式取得機構がその会員から銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律(平成13 年法律第131 号)第41 条第1項及び第3項の規定により納付された同条第1項の当初拠出金の額及び同条第3項の売却時拠出金の額の合計額が1億円を超える法人
保険業法(平成7年法律第105 号)第2条第5項に規定する相互会社
投資信託及び投資法人に関する法律(昭和26 年法律第198 号)第2条第12 項に規定する投資法人
資産の流動化に関する法律(平成10 年法律第105 号)第2条第3項に規定する特定目的会社


問2 問1で対象となった法人は2020 年4月以降に提出する社会保険・労働保険の全ての手続きについて、電子申請により届出することになるのでしょうか。

(答)
2020 年4月以降に到来する各法人の事業年度の開始日以降に提出する手続きについて、電子申請により届出いただくこととなります(例:事業年度の開始が1月1日の場合は、2021 年1月1日以降の届出が義務化の対象となります)。
また、対象の手続きは以下のとおりです。

日本年金機構管轄(健康保険・厚生年金保険関係手続)
・被保険者報酬月額算定基礎届・70 歳以上被用者算定基礎届
・被保険者報酬月額変更届・70 歳以上被用者月額変更届
・被保険者賞与支払届・70 歳以上被用者賞与支払届

ハローワーク管轄(雇用保険被保険者関係手続)
・被保険者資格取得届
・被保険者資格喪失届(雇用保険被保険者離職証明書を含みます。)
・被保険者転勤届
・高年齢雇用継続給付受給資格確認・支給申請(除:高年齢再就職給付金)(雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書を含みます。)
育児休業給付受給資格確認・支給申請(雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書を含みます。)

労働基準監督署管轄(労働保険関係手続)
・継続事業(一括有期事業を含む。)を行う事業主が提出する以下の申告書
・年度更新に関する申告書(概算保険料申告書、確定保険料申告書、一般拠出金申告書)
・増加概算保険料申告書


問3 電子申請義務化の対象となる「特定法人」に該当するか否かは、どの時点で判断すればよいでしょうか。

(答)
毎年度、それぞれの法人ごとに定める事業年度(法人税法(昭和40 年法律第34 号)第13 条及び第14 条に規定する事業年度をいう。)開始日を基準に判断します。


問4 本店、支店ごとに適用事業所になっている場合、義務化の対象を判断するにあたっては、本店、支店の区別なく、法人単位で判断するものでしょうか。

(答)
今般の電子申請の義務化の対象は、本店、支店ごとではなく法人単位で判断することとなります。


問5 法人種別によっては、「出資金」又は「資本金」以外の名目(例:資産の総額)で資金を登記している法人もありますが、それらの法人をどこまで義務化の要件に含めるのでしょうか。

(答)
義務化対象法人かどうかの判断に当たっては、それぞれの法人の設立根拠法令に
① その資本金又は出資金自体について規定されているもの
② その資本金又は出資金の出資について規定されているもの
③ 上記のほか、定款に出資持分に関する定めがあることを前提とした制度
が規定されているものについて、「資本金」又は「出資金」が1億円超か否かで対象を判断します。


問6 電子申請の義務化の対象に「該当する」、または、「該当しない」ことを届け出る手続きは必要でしょうか。

(答)
対象の事業所であるかどうかを届出していただく必要はございません。
ただし、電子申請義務化の対象法人であるにも関わらず、電気通信回線の故障や災害などの理由により、電子申請が困難と認められる場合は、電子申請によらない方法により届出することが可能ですので、所管の労働基準監督署ハローワーク年金事務所それぞれにその旨を申し出てください。


問7 電子申請義務化の対象法人に対して、当該法人が義務化の対象である旨の通知は送られるのでしょうか。

(答)
健康保険・厚生年金保険関係手続においては、対象法人を確認したうえで、対象法人及び当該法人に属する事業所に対して、別途ご案内通知等を送付することを予定しております。
雇用保険関係手続においては、年度末に発送する雇用保険の被保険者数お知らせハガキにより全事業所への周知を行います。
労働保険関係手続においては、令和2年度の年度更新申告書において、電子申請義務化の対象法人となる可能性がある法人については、その旨を表示する予定です。
なお、義務化の対象法人の範囲は、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労働保険の4保険において同一です。


問8 事業年度の途中で、資本金等を変更する場合、いつの時点をもって電子申請の義務化の対象になるのでしょうか。

(答)
「事業年度開始の時」に判定することになりますので、事業年度開始の時の資本金等が1 億円を超える場合は、事業年度の途中で資本金等の減資により1 億円以下となったとしても当該年度については義務化の対象となります。また、事業年度開始の時の資本金等が1億円以下の場合は、事業年度の途中で資本金等の増資により1億円を超えることとなったとしても、当該年
度については義務化の対象となりません。


問9 システム改修等が必要になるため、2020 年4 月以降に開始する事業開始年度から電子申請に切り替えることが困難な場合に罰則はあるのでしょうか。

(答)
罰則はありませんが、電子申請による届出をするための環境が整い次第、順次、実施いただきますようお願いします。電子申請の利用に係るご不明点等がございましたら、以下の問い合わせ先にご相談ください。

・健康保険・厚生年金保険に係る手続については
日本年金機構電子申請・電子媒体申請照会窓口
TEL:0570-007-123
雇用保険被保険者に係る手続については
電子申請事務センター又はハローワーク
・労働保険の徴収に係る手続については
都道府県労働局(労働保険徴収課(室))及び労働基準監督署


問10 「電子申請の義務化」に関する内容や電子申請を開始するための手順等が分かるパンフレット等はありますか。

(答)
電子申請の義務化に関するパンフレットにつきましては、厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00004.html)に掲載されております。
電子申請の手順の詳細については、「e-Gov」のホームページの『「e-Gov」電子申請講習会資料(http://e-gov.go.jp/help/shinsei/seminar/html)』をご覧いただきますようお願いします。
お問い合わせ先は、電子政府利用支援センター(TEL:050-3786-2225、FAX:050-3786-2226)となります。


問11 社会保険労務士や労働保険事務組合を通じて手続を行う場合も義務化の対象となるのでしょうか。

(答)
特定法人の適用事業所が社会保険労務士を通じて行う社会保険・労働保険の手続についても電子申請義務化の対象となります。
また、特定法人は資本金等の額が1 億円を超える法人であるので、労働保険事務組合に委託可能な中小企業に該当することは少ないものと思われますが(経済センサスから推計すると、特定法人のうち、労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託することができる中小企業に該当する事業主の割合は4%程度)、中小企業要件に該当する特定法人からの委託を受けて労働保険に関する事項の処理を行う労働保険事務組合については、ハローワークに対
雇用保険被保険者手続(対象となる手続は問2参照)を行う場合には電子申請義務化の対象となります。


各論:健康保険・厚生年金保

問12 電子申請に対応していない健康保険組合に加入する事業所の届出においても、電子申請の義務化の対象となるのでしょうか。

(答)
電子申請に対応していない健康保険組合に加入する事業所においても、問2の「健康保険・厚生年金関係手続」に示す3届出が電子申請による届出の
対象となります。
現在、全ての健康保険組合が利用できる電子申請環境の構築を進めており、その運用については令和2年11 月の開始を予定しています。それまでの
間につきましては、健康保険関係の手続きを行う場合で、電子申請に対応していない健康保険組合に手続きを行う場合に限り、やむを得ない場合とし
て、電子媒体等での手続きが可能となります。
なお、その場合でも日本年金機構への手続きは電子申請で行うこととなります。(※)
日本年金機構のホームページで配布している届書作成プログラムにより電子申請される場合、一般的には、届書作成プログラムで作成された電子媒
体等を健康保険組合に提出することが可能ですが、個々の健康保険組合において届出作成プログラムに対応しているかどうかは各健康保険組合にお
尋ねください。


問13 船舶所有者が届出する厚生年金保険手続は電子申請の義務化の対象となるのでしょうか。

(答)
船舶所有者が届出する厚生年金保険手続につきましては、電子申請の義務化の対象となりません。


各論:労働保険・雇用保険

問14 電子申請義務化における暫定任意適用事業の取扱いはどのようになりますか。

(答)
暫定任意適用事業は、特定法人を義務化対象とする今回の電子申請義務化の対象外となります。

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