社会保険労務士川口正倫のブログ

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通勤災害における「就業に関し」の意義(昭48.11.22基発644号・平27.3.31基発0331第21号・平28.12.28基発1228第1号)

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通勤災害における「就業に関し」の意義(昭48.11.22基発644号・平27.3.31基発0331第21号・平28.12.28基発1228第1号)

「就業に関し」とは、移動行為が業務に就くため又は業務を終えたことにより行われるものであることを必要とする趣旨を示すものである。つまり、通勤と認められるには、移動行為が業務と密接な関連をもって行われることを要することを示すものである。

① まず、労働者が、業務に従事することになっていたか否か、又は現実に業務に従事したか否かが、問題となる。

この場合に所定の就業日に所定の就業場所で所定の作業を行うことが業務であることはいうまでもない。また、事業主の命によって物品を届けに行く場合にも、これが業務となる。また、このような本来の業務でなくとも、全職員について参加が命じられ、これに参加すると出勤扱いとされるような会社主催の行事に参加する場合等は業務と認められる。さらに、事業主の命をうけて得意先を接待し、あるいは、得意先との打合せに出席するような場合も、業務となる。逆に、このような事情のない場合、例えば、休日に会社の運動施設を利用しに行く場合はもとより会社主催ではあるが参加するか否かが労働者の任意とされているような行事に参加するような場合には、業務とならない。ただし、そのような会社のレクリエーション行事であっても、厚生課員が仕事としてその行事の運営にあたる場合には当然業務となる。また、事業主の命によって労働者が拘束されないような同僚との懇親会、同僚の送別会への参加等も、業務とはならない。

さらに、労働者が労働組合大会に出席するような場合は、労働組合に雇用されていると認められる専従役職員については就業との関連性が認められるのは当然であるが、一般の組合員については就業との関連性は認められない。

(1)出勤(労災保険法第7条第2項第1号の住居から就業の場所への移動をいい、同項第2号の場合の第2の就業の場所への移動を含む。以下同じ。)の就業との関連性についてであるが、所定の就業日に所定の就業開始時刻を目途に住居を出て就業の場所へ向う場合は、寝すごしによる遅刻、あるいはラッシュを避けるための早出等、時刻的に若干の前後があっても就業との関連性があることはもちろんである。他方、運動部の練習に参加する等の目的で、例えば、

i) 午後の遅番の出勤者であるにもかかわらず、朝から住居を出る等、所定の就業開始時刻とかけ離れた時刻に会社に行く場合や

ii) 第2の就業場所にその所定の就業開始時刻と著しくかけ離れた時刻に出勤する場合

には、当該行為は、むしろ当該業務以外の目的のために行われるものと考えられるので、就業との関連性はないと認められる。

なお、日々雇用される労働者については、継続して同一の事業に就業しているような場合は、就業することが確実であり、その際の出勤は、就業との関連性が認められるし、また公共職業安定所等でその日の紹介を受けた後に、紹介先へ向う場合で、その事業で就業することが見込まれるときも、就業との関連性を認めることができる。しかし、公共職業安定所等でその日の紹介を受けるために住居から公共職業安定所等まで行く行為は、未だ就職できるかどうか確実でない段階であり、職業紹介を受けるための行為であって、就業のための出勤行為であるとはいえない。

(2) 退勤(労災保険法第7条第2項第1号の就業の場所から住居への移動をいう。)の場合であるが、この場合にも、終業後ただちに住居へ向う場合は就業に関するものであることについては、問題がない。このことは、日々雇用される労働者の場合でも同様である。

また、所定の就業時間終了前に早退をするような場合であっても、その日の業務を終了して帰るものと考えられるので、就業との関連性を認められる。

なお、通勤は1日について1回のみしか認められないものではないので、昼休み等就業の時間の間に相当の間隔があって帰宅するような場合には、昼休みについていえば、午前中の業務を終了して帰り、午後の業務に就くために出勤するものと考えられるので、その往復行為は就業との関連性を認められる。

また、業務の終了後、事業場施設内で、囲碁、麻雀、サークル活動、労働組合の会合に出席をした後に帰宅するような場合には、社会通念上就業と帰宅との直接的関連を失わせると認められるほど長時間となるような場合を除き、就業との関連性を認めても差し支えない。

(3) 労災保険法第7条第2項第3号の通勤における帰省先住居から赴任先住居への移動の場合であるが、実態等を踏まえ、業務に就く当日又は前日に行われた場合は、就業との関連性を認めて差し支えない。ただし、前々日以前に行われた場合は、交通機関の状況等の合理的理由があるときに限り、就業との関連性が認められる。

(4) 労災保険法第7条第2項第3号の住居間移動における赴任先住居から帰省先住居への移動の場合であるが、実態等を踏まえて、業務に従事した当日又はその翌日に行われた場合は、就業との関連性を認めて差し支えない。ただし、翌々日以後に行われた場合は、交通機関の状況等の合理的理由があるときに限り、就業との関連性が認められる。

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