社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります(令和3年1月1日施行)

バナー
Kindle版 職場の出産・育児関係手続ガイドブック~令和の常識~
定価:800円で好評発売中!!


にほんブログ村
続き

子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります(令和3年1月1日施行)

www.mhlw.go.jp


f:id:sr-memorandum:20200106204452j:plain
f:id:sr-memorandum:20200106204510j:plain


子の看護休暇・介護休暇の時間単位での取得に関するQ&A

1.取得単位について

問1-1
「時間」単位について、例えば2時間単位での看護・介護休暇の取得のみ認め、1時間単位での取得を認めないこと とする取扱いはできるのか。


○「時間」とは、1時間の整数倍の時間をいい、労働者からの申出に応じ、労働者の希望する時間数で取得できるようにする必要がある。
○したがって、事業主が一方的に、又は労使協定を締結することにより、例えば2時間単位での看護・介護休暇の取得のみ認め、1時間単位での取得を
認めないこととする取扱いはできない。


問1-2
分単位で看護・介護休暇を取得できることとしている場合に、時間単位で取得することが可能な制度を別途設ける必要があるか。


○分単位で看護・介護休暇を取得できる制度を導入している場合は、法を上回る内容となっているため、別途、時間単位で取得できる制度を設ける必要はない。


問1-3
例えば1日の所定労働時間数が7時間30分の労働者が、看護・介護休暇として1日の勤務時間全て休暇を取得する場合、どのように取り扱えばよいか。


○ 1日分(=1日の所定労働時間数である7時間30分)の看護・介護休暇の取得として取り扱うこととなる。


問1-4
時間単位で看護・介護休暇を取得する場合、何時間分の休暇で「1日分」の休暇となるか。


○ 看護・介護休暇を日単位で取得するか時間単位で取得するかは、労働者の選択に委ねられるものである。
○ 時間単位で看護・介護休暇を取得する場合は、休暇を取得した時間数の合計が1日の所定労働時間数(※)に相当する時間数になるごとに「1日分」の休暇を取得したものと扱う。この場合、1日の所定労働時間数に1時間に満たない端数がある場合には、端数を時間単位に切り上げる必要がある。
○ 例えば、1日の所定労働時間数が7時間30分の場合、時間単位で看護・介護休暇を取得する場合は、「30分」という端数を切り上げて、8時間分の休暇で「1日分」となる。
※「1日の所定労働時間数」は、日によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1日平均所定労働時間数となる。1年間における総所定労働時間数が決まっていない場合には、所定労働時間数が決まっている期間における1日平均所定労働時間数となる。
f:id:sr-memorandum:20200106205458p:plain


問1- 5
日によって所定労働時間数が異なる労働者が1日の所定労働時間数と同じ時間数の看護・介護休暇を取得する場合には、日単位として取り扱うべきか、時間単位として取り扱うべきか。


○ 日によって所定労働時間数が異なる労働者が1日の所定労働時間数と同じ時間数の看護・介護休暇を取得する場合、当該休暇を日単位として取り扱うか、時間単位として取り扱うかにより、労働者にとって有利になる場合もあれば不利になる場合もある。
○ 例えば、介護休暇1日の時間数(1日平均所定労働時間数)が7時間の労働者が、所定労働時間数が8時間の日に8時間分の休暇を取得する場合、日単位として取り扱うと介護休暇1日分に相当するが、時間単位として取り扱うと介護休暇1日と1時間分に相当することとなり、時間単位として取り扱う方が労働者にとって不利となる。
○ こうした場合の取扱いをあらかじめ統一的に定めるため、時間単位で看護・介護休暇を取得する場合の「時間」は「1日の所定労働時間数未満の時間」としており、1日の所定労働時間数と同じ時間数の看護・介護休暇を取得する場合には、日単位での看護・介護休暇の取得として取り扱うこととなる。
f:id:sr-memorandum:20200106205901p:plain


問1-6
例えば勤務時間が8:30~17:00(休憩12:00~13:00)の企業では、始業時刻から連続した4時間の看護・介護休暇を取得すると休憩時間に差し掛かってしまうが、どのように取り扱えばよいか。


労務提供義務のない休憩時間に看護・介護休暇を請求する余地はないため、休憩時間を除く、実際に労働に従事することとなる時間帯でみて、始業時刻から連続し、又は終業時刻まで連続する時間単位で看護・介護休暇を取得できることとなる。
○ このため、上記の企業において、始業時刻から連続した4時間の看護・介護休暇を取得する場合には、8:30~12:00及び13:00~13:30を合計した4時間となる。


問1-7
例えば勤務時間が9:00~17:45(休憩12:00~13:00)の労働者が、終業時刻に近接した時間帯に1時間の時間単位の看護・介護休暇を取得する場合、当該1時間の区切り方は、17時から18時の1時間となるか、16時45分から17時45分までの1時間となるか。


○ 「時間単位」とは、始業時刻から連続し、又は終業時刻まで連続する時間単位を指すことから、終業時刻(17時45分)から遡った1時間である16時45分から17時45分までの1時間となる。
○ なお、労働者が例えば16時45分から17時45分までの1時間の看護・介護休暇の取得の申出をし、実際には17時から17時45分までのように1時間に満たない時間を休んだとしても、当該労働者は1時間の看護・介護休暇を取得したものとして処理して差し支えない。
○ ただし、労働者が休んだ時間分の賃金を控除する場合には、実際に休んだ時間を超えて控除してはならない。


問1- 8
現在は半日単位で看護・介護休暇を取得できるが、改正後に労使協定の締結により時間単位での看護・介護休暇の取得の対象から除外された労働者について、これまでと同様に半日単位での看護・介護休暇の取得を可能とする必要があるか。


○改正後の規定に従い、労使協定の締結により時間単位での看護・介護休暇の取得対象から除外された労働者であっても、半日単位であれば取得させることが可能な場合もある。こうした労働者については、半日単位での看護・介護休暇の取得を認めるなど、制度の弾力的な利用が可能となるよう配慮することが事業主には求められる。
○なお、これまで半日単位で看護・介護休暇を取得できることとされていた労働者について、改正後に日単位での看護・介護休暇の取得しか認めないこととすることは、労働者にとって不利益な労働条件の変更になるため、労働契約法の規定により、原則として労使間の合意が必要となることに留意が必要である。

※参考
○労働契約法(平成19年法律第128号)(抄)
(労働契約の内容の変更)
第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。


問1- 9
問1-8の労働者について、これまでと同様に半日単位での看護・介護休暇の取得を可能とするに当たり、留意すべきことはあるか。


○半日単位での看護・介護休暇の取得を可能とする場合には、日単位で看護・介護休暇を取得する場合と比べて労働者にとって不利益とならないよう、看護・介護休暇1日の合計時間数が1日の所定労働時間数を下回らないものとする必要がある。
○また、「半日」とは、1日の半分のことを指し、通常は所定労働時間数の2分の1とすることが考えられるが、例えば、所定労働時間が8時間で、就業時間が午前3時間、午後5時間の事業所において、労使協定で午前休に相当する3時間及び午後休に相当する5時間をそれぞれ「半日」として定めるなど、労使協定等において1日の所定労働時間数の2分の1以外の時間数を「半日」として定めた場合において、例えば午前休に相当する3時間を2回取得した場合や、午後休に相当する5時間を2回取得したときに、いずれも「1日分」の看護・介護休暇を取得した取扱いとすることは差し支えない。

問1- 10
時間単位での看護・介護休暇の取得が可能な労働者について、これまでと同様に半日単位での看護・介護休暇の取得も可能とする必要があるか。また、時間単位での取得に加え、これまでと同様の半日単位での取得を可能とする場合に留意すべきことはあるか。


○時間単位での看護・介護休暇の取得が可能な労働者については、半日単位での取得を可能とする必要はない。
○ なお、時間単位での取得に加え、これまでと同様の半日単位での取得を可能とする場合には、例えば次のような看護・介護休暇1日分を全て時間単位で取得する場合と比べて労働者にとって不利益な制度や運用とならないようにする必要がある。
(例)1日の所定労働時間数が8時間の労働者について、労使協定等において1日の所定労働時間数の2分の1以外の時間数(午前休に相当する3時間及び午後休に相当する5時間)を「半日」として定め、午前休に相当する3時間を2回取得したときに「1日分」の看護・介護休暇を取得した取扱いとするケース
⇒午前休に相当する3時間の2回分(計6時間分で「1日分」の休暇として扱う運用は、時間単位で取得する場合(時間単位休暇8時間分で「1日分」の休暇)に比べて2時間分不利となり、このような取扱いは適切ではない。


問1- 11
就業時間の途中から時間単位の看護・介護休暇を取得し、就業時間中に再び戻ること(いわゆる「中抜け」)を認めている場合に、改正後の制度にしたがって、始業の時刻から連続し、又は終業の時刻まで連続する時間単位での看護・介護休暇の取得のみを可能とし、中抜けを認めない制度に変更する必要があるか。


○ 改正後の則第 40 条第1項においては、始業の時刻から連続し、又は終業の時刻まで連続する時間単位での看護・介護休暇の取得を可能とすることを
求めており、「中抜け」を想定しない制度であっても許容される。しかしながら、その上で、事業主には、看護や介護を必要とする家族の状況や、労働者の勤務状況等に柔軟に対応するため、「中抜け」による時間単位での取得を認めるなど、制度の弾力的な利用が可能となるよう配慮することが求められる。
○したがって、看護・介護休暇の取得に関し、「中抜け」による時間単位での取得を認めている場合には、法を上回る望ましい取扱いであるため、改正後に「 中抜け 」 を想定しない制度に変更する必要はない。
○なお、看護・介護休暇について、「中抜け」による時間単位での取得を認めている場合に、「中抜け」を想定しない制度に変更することは、労働者にとって不利益な労働条件の変更になるため、労働契約法の規定により原則として労使間の合意が必要となることに留意が必要である。

2.対象労働者について

問2-1
1日の所定労働時間が4時間以下の労働者については、現在は半日単位での看護・介護休暇の取得ができないこととされているが、改正後には時間単位での看護・介護休暇の取得ができることとなるのか。
また、それらの労働者についても、「業務の性質や実施体制に照らし1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者」として労使協定において定めた場合には、事業主は、時間単位の看護・介護休暇の取得の申出を拒むことができるのか。


○現在半日単位での看護・介護休暇の取得ができないこととされている1日の所定労働時間数が4時間以下の労働者について、改正後は、時間単位での看護・介護休暇の取得ができることとなる。
○ただし、それらの労働者について、「業務の性質や実施体制に照らし1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者」として労使協定を締結した場合は、事業主は、時間単位での看護・介護休暇の取得の申出を拒むことが可能である。
○ なお、労使協定で定める労働者は、「業務の性質や実施体制に照らし1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者」に該当することが必要であるため、業務の態様にかかわらず一律に「1日の所定労働時間数が4時間以下の者」であることをもって時間単位の看護・介護休暇の取得対象から除外する取扱いは適当ではない。


問2-2
半日単位で看護・介護休暇を取得することができない労働者を労使協定で定めている場合に、改正後の規定に従って時間単位で看護・介護休暇を取得することができない労働者を定めるために、改めて労使協定を締結する必要があるか。


○ 業務の性質や実施体制に照らし、半日単位で看護・介護休暇を取得することが困難と認められる業務と、時間単位で看護・介護休暇を取得することが困難と認められる業務の範囲が異なる可能性があるため、改めて労使協定を締結する必要がある。


問2-3
時間単位で看護・介護休暇を取得することができない労働者を労使協定で定めるに当たり、交代制勤務による業務のうち夜勤の時間帯に行われる業務のみを「業務の性質や実施体制に照らし1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務」とすることは可能か。


○可能である。
○なお、労使で工夫して、より多くの労働者が時間単位の看護・介護休暇を取得できるようにすることが望ましい。


問2-4
コアタイムの無いフレックスタイム制度が適用される労働者の場合は、労働者自身が始業時刻や終業時刻を決めることができ、始業時刻から連続し、又は終業時刻まで連続する時間に介護等を行うニーズに柔軟に対応することが可能であるため、時間単位の看護・介護休暇の対象としなくてよいか。


○ 看護・介護休暇は、労働者の労務提供義務を消滅させる効果を有するものであり、一定期間内においてあらかじめ定めた総労働時間数の範囲内で労働者自身が柔軟に労働時間を設定することができるフレックスタイム制度とは趣旨が異なるものである。
○ したがって、たとえフレックスタイム制度のような柔軟な労働時間制度が適用される労働者であっても、申出があった場合には、時間単位で看護・介護休暇を取得できるようにしなければならない。

凡例
○法:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)
○則:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則(平成3年労働省令第25号)
○看護・介護休暇:法第16条の2第1項に基づく子の看護休暇又は同法第16条の5第1項に基づく介護休暇
○改正後:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和元年厚生労働省令第89号)による改正後