社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【労働者性】ソクハイ事件(不当労働行為救済命令取消請求事件)(平24.11.15労経速2169号3頁)

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ソクハイ事件(平24.11.15労経速2169号3頁)

審判:一審
裁判所名:東京地方裁判所
事件番号:平成22年(行ウ)433号
裁判年月日:平成24年11月15日

1.事件の概要

X社は企業等の委託を受けて自動二輪車、自転車、軽四輪車により書類等の配送等を業とする会社であり、本件当時従業員164名に対し、運送請負契約を締結した配送員が、バイク308名、自転車(メッセンジャー)153名、軽四輪18名のほか、下請5社があった。
Aは平成16年8月にX社とメッセンジャー契約を締結した者で、平成19年1月にメッセンジャーにより結成されたB組合の委員長だった者であり、また、X社飯田橋営業所の所長であった。
B組合は、①平成19年11月、配送員の労働者性を議題とする団交を申入れ、これが拒否されたため東京都労働委員会に救済申立てをし、Aが調査期日に出席した。②これに対しX社は東京都労働委員会出席を理由に所長を解任した。③B組合はAの東京都労働委員会出席及び所長解任について2回にわたり団交を申し入れたが、いずれも拒否された。
①~③につき、東京都労働委員会はいずれも不当労働行為であるとしたが、中央労働委員会は、③につき労働組合法7条2号、②につき同条1号、4号に該当する(①は7条2号に当たらない)として初審命令を変更した。
これに対して、X社が中央労働委員会に救済命令の取消を求めて提訴したのが本件である。

メッセンジャーの業務状況)
(1)メッセンジャー(運送請負)契約においては、Aは、X社の指定する時刻に荷送人より荷物を受け取り遅滞なく荷届先に届けることとされ、その際、運送毎にX社の指定する運送伝票(5枚綴)に必要事項を記載し、X社の指示通り処理することとされていた。業務の再委託は禁止されていた。さらに、付帯業務として「必要に応じてX社の指定した業務を行う」と定められていた。
荷物に関する事故処理については「荷送人より受領した荷物の破損・紛失・盗難等により荷送人又は荷届先その他関係者より異議申立てがあった場合は、速やかにX社に連絡しX社の指示に従うこと」とされる一方、交通事故の責任については「運送請負業務中に交通事故が発生した場合は、全てAの責任において処理すること」とされていた。
(2)請負運賃(時期により変更がある)は、歩合(配達料金の55%等)のほか、加算や皆勤手当が付く一方、勤怠控除もあった。
(3)メッセンジャーは所属の営業所において、原則として8時45分頃から行われる朝礼に参加したうえ、各自の待機場所へ移動し、配達指示メールを待つ。配送後は再び待機となるが待機場所はX社が指示する。19時頃X社から上がり指示メールが来て業務終了となる。
待機中、配車係から配達業務の手配メールが来てその依頼がされた場合、即時性を尊ぶメッセンジャー即配便の性質等もあいまって、メッセンジャーがこれを断るといことは多くはなく、メッセンジャーは概ね当該業務を引き受けている。しかし、Aを含め、メッセンジャーが、これを断りたい旨の申出をすることもあり、配車係において、その申出内容を踏まえてさらに引受け方を依頼することはあるものの、メッセンジャーがあくまで配送業務を受諾しない場合、配車係が、それ以上、強いて依頼することはなく、これによって直接的な不利益処分が行われたこともなかった。

2.判決の概要

メッセンジャーについて営業所長の管理の下、X社の事業組織に組み込まれていたといえること、契約内容をX社が一方的に決定していたものといえること、メッセンジャーの報酬は本来出来高払い制であるもののその出来高労務提供(労働量)に依存する側面があること、メッセンジャーは個々の業務依頼を基本的には引き受けるべきものとされていたこと、メッセンジャーの稼動について、時間・場所・態様の各面につき、一定程度の拘束があるとみるのが相当であること、メッセンジャーの事業者性が高いものとは評価し難いことなどの諸点に、労働組合法の目的(同法1条1項)を総合考慮すると、メッセンジャーは、労働契約又は労働契約に類する契約によって労務を供給して収入を得る者として、同法3条所定の労働者に当たる(X社との関係では同法7条の「雇用する労働者」にも当たる)と認めるのが相当である。

3.解説

INAXメンテナンス事件(最三小判平23.4.12労判1026号27頁)で言及された、労働組合法上の労働者性を判断する要素となる、①労働者が事業組織に組み入れられていること、②契約内容が使用者によって一方的に決定されていること、③報酬が賃金に準ずる収入として労働の対価としての性格を有すること、④業務の依頼に応じるべき関係にあること(実質的に許諾の自由がなかったこと)、⑤業務遂行において指揮監督下にあり、時間的かつ場所的拘束性があったこと に加えて、⑥独立の事業者としての実態を備えていないこと が判断要素として加えられた判決。

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