社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



年齢別の心理的な時給格差は最大約5倍!?

バナー
Kindle版 職場の出産・育児関係手続ガイドブック~令和の常識~
定価:800円で好評発売中!!


にほんブログ村
続き

年齢別の心理的な時給格差は最大約5倍!?

1.心理的な時間

朝の出勤前の30分はすぐ過ぎてしまうけど、通勤ラッシュで電車に押し込められている30分は長く感じます。また、休憩時間の1時間はすぐに過ぎてしまうけど、仕事が忙しくない日の午後の1時間はやたら長く感じます。このように、時計が刻む客観的な時間は同じでも、状況によって心理的な時間の長さが異なることは誰でも経験したことがあるでしょう。
また、子供の頃は時間が長く感じられ、年齢が経つにつれて時間が短く感じられるようになるということもあります。これは誰しも経験することですが、心理学では「ジャネーの法則」と呼ばれおり、簡単に言うと「生涯のある時期における時間の心理的長さは年齢の逆数に比例する(年齢に反比例する)」といものです。
これを数学的に扱うと、心理的な時間の長さをT、年齢をtとし、kを比例定数とすれば、

    dT= (k/t) dt      (1)

と表すことができます。 従って、t_{0}歳からY年間の間の心理的な時間の長さF(t_{0},Y)は、

    F(t_0,Y) = \int_{t_0}^{t_0+Y} (k/t)\,dt = k({ln(t_0+Y) - ln(t_0)})     (2)

となります。

各年齢年齢をtにおける1時間(Y=1/365/24)の心理的な時間の長さをプロットすると、図1のようになります。
なお、比例定数kは20歳におけるF(t_0,1/365/24)を1としています。
20歳の人にとっての1時間が、年齢に応じて異なる時間の長さに感じることがわかります。

f:id:sr-memorandum:20191209215026p:plain
図1

2.心理的時給

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の結果を見ると年齢と賃金の関係がわかりますが、これは各年齢層における年収をベースにしています。
例えば、図2は平成30年の「賃金構造基本統計調査」の結果ですが、20歳~24歳、25歳~29歳、・・・というように20歳から69歳までを5歳毎の年齢階級に分けて、それぞれの平均賃金の格差(20歳~24歳を100とする)を正社員と非正規社員についてプロットしたものです。
当たり前のことですが、年収とは「客観的な1年間」に得られる給料なので、図2には心理的な時間の長さは考慮されていません。同じ1年間を働いて同じ賃金をもらったとしても、心理的な時間は図1のように年齢が若いほど長いため、心理的な時間当たりの給料(心理的時給)は若いほど低くなります。
これを考慮して、心理的時給と年齢階級の格差を図2のグラフに加えると、図3のようになります。

f:id:sr-memorandum:20191209221254p:plain
図2

f:id:sr-memorandum:20191209223438p:plain
図3

通常の意味での賃金格差は大きくても2倍程度であるのに対して、心理的時給を見てみると5倍近くも格差があることがわかります。
「こんなに大きな差があるのはとんでもない」と言う人もいるかも知れませんが、現在における別の世代の時間感覚を感じることができないため、この格差を現実に感じることはできません。(だったら、なんでこんなグラフ作ったんだ・・・)
また、心理的な時間が長いのは、仕事以外の時間にもいえることで(つまり、年齢が若いと仕事の間だけでなく、休日や帰宅後の時間も長く感じる)、また年齢が高くなるにつれて体力や集中力が衰えて仕事がきつくなるということもあるため、図3がそのまま賃金に対する年齢ごとの満足度や不満足度を表してるともいえません。
しかし、年齢が若ければ、同じ労働時間でも長く感じ、同じ時給でも少なく感じる傾向にあることは理解しておくべきでしょう。


sr-memorandum.hatenablog.com