社会保険労務士川口正倫のブログ

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【賃金】日本勧業経済会事件(最大昭36.5.31民集15巻5号1482頁)

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日本勧業経済会事件(最大昭36.5.31民集15巻5号1482頁)

参照法条  : 労働基準法24条1項民法505条
裁判年月日: 1961年5月31日
裁判所名  : 最高大
裁判形式  : 判決
事件番号  : 昭和34年 (オ) 95 

1.事件の概要

倒産したY社の従業員XがY社に対して未払賃金の支払を求めたところ、破産後保管していた金品を投資者に返済した従業員Xの行為はY社に対する背信行為であるとして、Y社の従業員Xに対する損害賠償請求権と、Xが主張する賃金債権との相殺の意思表示をしたため、Xがこの相殺に対して訴えを提起した。

2.判決の概要

労働者の賃金は、労働者の生活を支える重要な財源で、日常必要とするものであるから、これを労働者に確実に受領させ、その生活に不安のないようにすることは、労働政策の上から極めて必要なことであり、労働基準法24条1項が、賃金は同項但書の場合を除きその全額を直接労働者に支払わねばならない旨を規定しているのも、右にのべた趣旨を、その法意とするものというべきである。しからば同条項は、労働者の賃金債権に対しては、使用者は、使用者が労働者に対して有する債権をもって相殺することを許されないとの趣旨を包含するものと解するのが相当である。このことは、その債権が不法行為を原因としたものであっても変りはない。