全額支給停止なのに老齢厚生年金が支給されている!?
65歳以上の在職老齢厚生年金は、基本月額と総報酬月額相当額によって、次のように支給額が調整されます。
基本月額=老齢厚生年金の報酬比例部分/12
総報酬月額相当額=その月の標準報酬月額 + 直近1年間*1に受けた賞与の合計額*2/12
この式によって、「在職老齢年金による調整後の年金支給月額」が0円以下となった場合は、老齢厚生年金の報酬比例部分は全額支給停止されます。
そして、老齢厚生年金が全額支給停止となった場合は、加給年金も全額が支給停止となります。
そうすると、老齢厚生年金は一切支給されそうにはありませんが、年金額の改定通知書を見ると「厚生年金」として、わずかな額が支給されることがあります。
その正体は、「経過的加算」で、65歳以上の老齢年金は次のような仕組みになっていて、報酬比例部分は全額支給停止になったとしても支給されます。
60歳台前半に、特別支給の老齢厚生年金を受給していた人は、65歳になると定額部分は老齢基礎年金として、報酬比例部分は老齢厚生年金として受け取ることとなり、通常の老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建てと同じ形になります。
しかし、65歳からの老齢基礎年金は、65歳までの定額部分と計算方法が異なるため、当分の間、老齢基礎年金のほうがわずかですが少なくなることがあります。この「経過的加算」を65歳からの老齢厚生年金に加算することで、65歳になったとき受け取る年金が下がらないようにしています。
そして、こういう趣旨の加算であるため、在職老齢年金の支給調整の対象にもならないのです。