社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



第15回紛争解決手続代理業務試験(特定社労士試験)の第1問の解答例

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第15回紛争解決手続代理業務試験(特定社労士試験)の第1問の解答例

※私が実際に書いた解答で、正解ではありません。

小問(1)

【問題】
本件において、Xの立場に立って、特定社会保険労務士としてXを代理し、本件解雇の無効を主張し、Xを申請人、Y社を被申請人として「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき都道府県労働局にあっせん申請(以下「本件手続」という。)をするとして、当事者間の権利関係を踏まえて記載するとした場合「求めるあっせんの内容」はどのようになりますか。解答用紙第1欄に記載しなさい(ただし、遅延損害金の請求は記載しないでよい。)。

【私の解答】

・Xは、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める。
・Xは、Y社に対し、令和1年10月1日以降本件解決の日まで、支払い済を除き、毎月20日限り金22万円の支払いを求める。

小問(2)

【問題】
特定社会保険労務士として、Xを代理して、Xの立場に立って、本件手続を申請し、Xの解雇が、期間の定めのある労働契約期間中の整理解雇として、適法になされたものではないとして無効を主張する場合、それを基礎づける具体的事実を、解答用紙第2欄に簡潔に箇条書きで5項目以内にまとめて(例えば、①「Xは脅迫をうけて退職願いを出したこと。」等の要領)記載しなさい。

【私の解答】
・Xの雇用契約は有期雇用契約であり、雇用契約期間中の中途における解雇であること。(一般的に、有期雇用契約の中途における解雇は、無期雇用の解雇より認められるのが難しい)
・Xは、Aに卒論のテーマとして「青少年の心理」をとりあげて資料を集めているなどを言っているが、生徒から取材といったことについては一切していないこと。
・令和1年4月1日付けの雇用契約書には、甲校を廃止し統合された場合は退職となる旨、もしくはそのような計画があることが、雇用契約書に記載されていないこと。
・令和1年4月1日付けの雇用契約の締結(更新)の際に、Xが来年3月までは勤務する必要があることを伝えていること。
・甲校では生徒は減っているが、名門の中高一貫校への進学率や有名大学への合格率が高く、生徒は相当集まっており、甲校の廃止の必要がないこと。

小問(3)

【問題】
特定社会保険労務士として、Y社を代理して、Y社の立場に立って、本件手続においてXに対する解雇が有効であると主張する場合、それを基礎づける具体的主張事実を、解答用紙第3欄に簡潔に箇条書きで5項目以内にまとめて(例えば、①「Xは、本件退職願いをもって退職の意思を表示したこと。」等の要領)記載しなさい。

【私の解答】
・人口の減少などにより、甲校の生徒数が次第に少なくなり経営的に苦戦する一方、乙校は近年生徒が多くなっており、甲校を廃止して乙校と統合する経営上の必要性があること。
・Xと同じ管理事務であるAは、主任であり、無期雇用であるため、Aのみを異動させることに合理性があり、また乙校でのこれ以上の事務職員の受入れは経営上困難であること。
・Y社は、7月中旬に削減対象者に経営縮小計画について説明し、X以外は全員承諾していること。また、8月9日には総務部長が甲校へ赴き、退職一時金として賃金の3か月を提示しており、相当な手続が行われていること。
・「Xが塾に学習に来ている生徒の何人かと親しくなり、さまざまな日常生活や考え方を取材している」旨の通報が、親からあったこと。
・Y社の期間雇用社員就業規則に、解雇事由として、「従事業務又は勤務場所が廃止されたとき」が記載されていること。

小問(4)

【問題】
本件事案について、双方の主張事実や本件事案の内容等を踏まえて本件解雇の効力について考察し、その法的判断の見通し・内容を、解答用紙第4欄に250字以内で記載しなさい。

【私の解答】
本件解雇は、有期雇用契約の期間の途中における解雇で、一般的に通常の無期雇用者の解雇より認められにくい。確かに、Y社は、甲学を廃止して乙校と統合する経営上の必要性があり、人選も合理的で、Xに退職一時金3か月を提示しており、相当な手続も行われているが、乙校以外の近隣の事業所への異動を検討する等、解雇回避努力を十分に行っていない。これに前述の事情を考慮すると、本件解雇は客観的合理性を欠き、社会的に相当ではなく、無効であると思料する。
(※)時間ばかり気にしていたため、経営上の必要性・人選の合理性がついての理由付けが欠落しています。

小問(5)

【問題】
本件事案について、Xの代理人である特定社会保険労務士として、本件「あっせん手続」において、上記小問(4)の「法的判断の見通し・内容」を踏まえ、Y社側の主張事実も考慮し、妥当な現実的解決を図るとした場合、どのような内容の提案を考えますか。解答用紙第5欄に250字以内で記述しなさい。

【私の解答】
本件解雇は、有期雇用契約を6か月残した期間の途中における解雇で、一般的に通常の無期雇用者の解雇より認められにくいうえ、Y社は乙校以外の近隣の事業所への異動を検討する等、解雇回避努力を十分に行っているとは考えられない。そこで、この点を指摘し、第一義的には継続雇用を主張する。しかし、困難な場合は、Y社が退職一時金3か月を提示した経緯があることから、有期雇用期間の満了までの賃金に相当する解決金6か月を提案して、解決を図ることとする。
(※)解決金6か月では、結果的に継続雇用と変わらないので、ちょっと強気だったかと思います。



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