社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



第15回紛争解決手続代理業務試験(特定社労士試験)の倫理の解答例

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第15回紛争解決手続代理業務試験(特定社労士試験)の倫理の解答例

※私が実際に書いた解答で、正解ではありません。

1.小問(1)

【問題】
平成28年11月に、特定社会保険労務士甲の友人であるAが、総務部長としてB社に中途採用された。当時B社では、別に社会保険労務士を顧問としていたが、Aは、社長に甲を推薦して、同社の顧問を甲に変更してもらった。それ以降甲は、B社から、人事制度についての相談を受けたり、社員との個別紛争についてあっせんの代理などを受任したりしていた。
しかし、本年10月に社長は引退し、その息子のCが新社長に就任した。Cは、甲を解任して、以前の社会保険労務士を顧問に復帰させた。これにAが異を唱えたところ、Cから退職勧奨を受け、Aがこれに応じなかったところ、協調性を欠くなどとして、本年11月20日付けで解雇された。これに対してAは、地位の確認を求めてあっせんの申請をすることとし、甲にその代理を依頼してきた。
甲は、Aから依頼を(ア)「受任できる」か、(イ)「受任できない」かを、解答用紙第6欄の結論欄に記号で記載し、その理由を理由欄に250字以内で記載しなさい。

【私の解答】
(イ)

社労士法22条に抵触しないものの、甲は、法人であるB社の顧問をしていたため、B社に対して守秘義務がある。仮にCの依頼を受けたとすると、B社に対するこの守秘義務が制限となり、Cの権利を十分に実現できない可能性がある。また、解任されたとはいえ、本件解雇の約1か月前まで甲はB社の顧問をしており、Cの立場からすれば相手方から報酬を得ていることとなり、あっせんが思ったとおりの結果とならなかった場合、職務の公正誠実さを疑われかねない。さらに、B社に対する信義則にも反する。よって、受任不可。

(※)「疑」という字を、「擬」と誤記してしまい二重線で消したらマスにスペースが無くなり、「うたがわれかねない」とひらがなかで記入しました。そしたら、最後のほうでマスが足りなくなり、「受任できない。」で終わらせるべきところ、「受任不可。」としました。なお、思い出しながら書いているのですべてが一言一句同じであったわけではありませんが、実際の試験は250字ちょうどになりました。

2.小問(2)

【問題】
社会保険労務士法人の丙は、昨年4月より、D社の内部通報業務を受任し、当時丙の勤務社会保険労務士であった乙も、他の勤務社会保険労務士と分担して、その窓口業務を担当した。この窓口業務では通報者が匿名の場合、窓口業務担当者も氏名を明かさず、匿名で聞き取ることとされていた。
本年6月に乙は、D社社員を名乗る匿名の電話で、D社のE部長が女性社員のFに対して、セクハラを繰り返しているとの通報を受け、D社に対してその聞き取り内容を報告した。その報告を受けてD社の人事部長が、E部長及びFに対して事情聴取を行ったが、E部長もFも、通報内容には心当たりが無いとのことであった。この件は、通報が匿名であったこともあり、それ以上の問題とはならず、E部長に対する注意や処分などはなされないままであった。
乙は、本年10月初めに丙を退職して独立した。その2週間後にFから、D社に対して損害賠償を求めてあっせんの申請がなされた。この事件について、D社の人事部長から乙に、受任してもらえないかとの打診があった。乙がその申立内容を見ると、FはE部長からセクハラで、以前からのうつ状態が悪化したこと、本年6月に、勇気を振り絞って匿名で通報を行ったが、社内での事情聴取ではE部長が怖くてセクハラのことは言い出せなかったこと、その後E部長からセクハラはなくなったが、うつ状態が悪化して退職せざるを得なくなったことなどが書かれていた。
乙は、D社からの依頼を(ア)「受任できる」か、(イ)「受任できない」かを、解答用紙第7欄の結論欄に記号で記載し、その理由を理由欄に250字以内で記載しなさい。

【私の解答】
(ア)

乙は、丙を退職後も、丙に勤務している時の業務について守秘義務を負うものの、乙はD社の内部通報窓口業務でFから相談を受け、その内容はD社に報告をされているため、Fに対する守秘義務が制限となることはない。また、乙はFから報酬を受けておらず、あっせんがうまくいかなかったとしても、職務の公正誠実さが疑われる可能性もない。さらに、利益相反行為ともならず、Fに対する信義則違反にもならず、また、特定社労士の業務を禁止する社労士法にも抵触しない。よって、受任可。

(※)最後の方でやはり字数が足りなくなり、「紛争解決手続代理業務を禁止する社労士法の規定にも抵触しない」と記載したかったところを、「特定社労士の業務を禁止する社労士法にも抵触しない。」と記載し、また、「よって、受任できる。」と終わらせるところを、「よって、受任可。」としました。なお、思い出しながら書いているのですべてが一言一句同じであったわけではありませんが、実際の試験は250字ちょうどになりました。

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