授かり婚の子を父親の健康保険の被扶養者とするには
先日、次のような事例がありました。入籍する前に出生がある、いわゆる『授かり婚』です。
入籍日には、母(花子)と子の両方を父(太郎)の被扶養者とします。
なお、名前と日付は適当にアレンジしています。
- 8月20日:出生・太郎と花子は別居
- 9月 5日:入籍・太郎と花子は同居開始
父(太郎):会社勤めで協会けんぽに加入
母(花子):別居する自分の父親(一郎:会社勤めで協会けんぽに加入)の健康保険被保険者
子(あゆみ):花子が8月20日に出産
8月20日から9月5日の間に子(あゆみ)を誰の被扶養者とするべきか、あれこれ考えてみました。
①花子の父(一郎)の被扶養者とする
別居している孫を被扶養者とすることが可能なので、問題ありません。
しかし、短期間だけ被扶養者とするために、一郎の勤務先に手続してもらうのは少々気が引けます。
②太郎と花子の事実婚の子として被扶養者とする
子は出生すると当然に母親の子となるため、あゆみは生まれながら花子の子となります。(すごく当たり前のことですが)
ですので、出生前の太郎と花子が事実婚であれば、あゆみは事実婚の妻(花子)の連れ子という構成も可能となり、事実婚の配偶者の子として被扶養者とすることができます。
しかし、事実婚が認められるには同居が前提となります。出生時には、太郎と花子は同居していないため、事実婚として認められるのは難しそうです。
③太郎の婚外子として被扶養者とする
「認知届」という書類を提出することで、父と母が結婚していなくても法的に父親の子として認められます。
ですので、太郎が「認知届」を提出することで、あゆみは太郎の婚外子となります。
また、この「認知届」は出生時に遡って父親の子となりますので、出生時からあゆみは太郎の子となり、8月20日から晴れて太郎の健康保険の被扶養者となれるのです。
実際には、太郎と花子はこの「認知届」を出生届と同時に提出していました。
実際どうするのか年金事務所に問い合わせてみると、次のようなに教えてくれました。
(1)被扶養の認定日
あゆみ:8月20日でOK
花子:9月5日でOK
(2)年金事務所で確認する事項
住民基本台帳ネットワーク(通称:住基ネット)にアクセスして、被扶養者異動届に記載されたそれぞれのマイナンバーから、あゆみと太郎の親子関係と花子と太郎の婚姻関係を確認する。
(3)必要書類
認知届や婚姻届を提出しても住基ネットに反映されるまで時間がかかることがあり、場合によっては婚姻届提出後の住民票(コピー)の提示が必要になる。(なお、出生児のマイナンバーも必要となるため、その際にマイナンバーが記載された住民票を取得してもらうことをお勧めする。)
(参考)
《被扶養者の範囲》
1.被保険者と同居している必要がない者
- 配偶者
子、孫および兄弟姉妹
- 父母、祖父母などの直系尊属
2.被保険者と同居していることが必要な者
・上記1.以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)
・内縁関係の配偶者の父母および子(当該配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)
《被扶養者の認定》
被扶養者に該当する条件は、被保険者により主として生計を維持されていること、及び次のいずれにも該当した場合です。
(1)収入要件
年間収入130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入※180万円未満)かつ
同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満(*)
別居の場合 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
※ 年間収入とは、過去における収入のことではなく、被扶養者に該当する時点及び認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。(給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下。雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であること。)
また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれますので、ご注意願います。
(*)収入が扶養者(被保険者)の収入の半分以上の場合であっても、扶養者(被保険者)の年間収入を上回らないときで、日本年金機構がその世帯の生計の状況を総合的に勘案して、扶養者(被保険者)がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認めるときは被扶養者となることがあります。
(2)同一世帯の条件
配偶者、直系尊属、子、孫、兄弟姉妹以外の3親等内の親族は同一世帯でなければなりません。