社会保険労務士川口正倫のブログ

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【普通解雇】日本基礎技術事件(大阪地判平23.4.7労判1045号10頁)

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日本基礎技術事件(大阪地判平23.4.7労判1045号10頁)

参照法条   : 労働契約法16条
裁判年月日 : 2012年2月10日
裁判所名   : 大阪高
裁判形式   : 判決
事件番号   : 平成23(ネ)1506
裁判結果   : 控訴棄却
出典      : 労働判例1045号5頁

1.事件の概要

Xは、建築コンサルタント、地盤調査、地盤改良、環境保全工事等を業とするY社に、平成20年4月から新卒者として雇用されたが、試用期間(期間6か月)中である同年7月29日に、技術社員としての資質や能力等の点で適格性に問題があるとして解雇された。これに対して、XはY社に従業員としての地位確認等を求めて提訴したが、第一審はXの解雇を正当としたため、Xが控訴してのが本件である。

2.判決の概要

Xは、試用期間中の解雇であっても普通解雇の場合と同様に厳格な要件の下に判断されるべきであると主張するが、解約権の留保は、採否決定の当初においては、その者の資質、性格、能力その他適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行い、適切な判定資料を十分に蒐集することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨でされるものと解されるのであって、今日における雇傭の実情にかんがみるときは、一定の合理的期間の限定の下にこのような留保約款を設けることも、合理性を有するものとしてその効力を肯定することができるというべきである。それゆえ、留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものといわなければならない(最高裁昭和48年12月12日大法廷判決・民集27巻11号1536頁参照)。したがって、Xの主張は理由がない。
総合すると、4か月弱が経過したところではあるものの、繰り返し行われた指導による改善の程度が期待を下回るというだけでなく、睡眠不足については4か月目に入ってようやく少し改められたところがあったという程度で改善とまではいえない状況であるなど研修に臨む姿勢についても疑問を抱かせるものであり、今後指導を継続しても、能力を飛躍的に向上させ、技術社員として必要な程度の能力を身につける見込みも立たなかったと評価されてもやむを得ない状態であったといえる。
そうすると、Xとしても改善の必要性は十分認識でき、改善するために必要な努力をする機会も十分に与えられていたというべきであるし、Y社としても本採用すべく十分な指導、教育を行っていたといえるから、Y社が解雇回避の努力を怠っていたとはいえないし、改めて告知・聴聞の機会を与える必要もない。
以上によれば、Xの請求は理由がなく、同人の請求を棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却する。


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