社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



出産・育児支援制度をざっくりまとめました1~休暇制度編(産前産後休暇・育児休業等)

バナー
Kindle版 職場の出産・育児関係手続ガイドブック~令和の常識~
定価:800円で好評発売中!!


にほんブログ村
続き

出産・育児支援制度をざっくりまとめました1~休暇制度編

主な育児支援制度として、退職すること無く出産育児のために休暇が取れる休暇制度(産前産後休業及び育児休業)、産前産後休業や育児休業は無給(事業主は、給与を支払う義務は無い)となることが多いため、その間の生活費等を支援するための金銭的支援制度(出産手当金や育児休業給付金)、休暇制度利用中の従業員としての地位保障を強化するための地位保障制度(産前産後休業中の解雇制限及び出産後1年間の解雇制限など)があります。また、その他には主に育児休業終了後に利用される制度として、育児休暇や所定時間外労働の免除等があります。
 これらの支援制度は、管轄する機関がそれぞれ異なっているためこのページにまとめておきます。

f:id:sr-memorandum:20190912204430p:plain
出産・育児支援制度の概要

1.休暇制度の概要

f:id:sr-memorandum:20190912205221p:plain

f:id:sr-memorandum:20190912205249p:plain

①産前産後休業

(1)「産前産後休業」とは
産前産後休業(「産休」と一般的に言われます)とは、女性労働者が出産の前後に取得できる母体保護のための休暇で、正社員、パート、有期雇用者、アルバイトまたは派遣労働者等の労働者であれば誰でも取得できる労働基準法で定められた制度です。従って、「制度が無いから」あるいは「前例が無いから」といった理由で産前産後休業が取得ができないといったことはあり得ません。

(2)産前産後休業の期間
産前休業
出産予定日の6週間前(双子の場合は14週間前)。ただし、実際の出産が出産予定日よりも後になった場合はその期間は延長されます。なお、本人から休業の請求が無い場合は就労が可能で、出産当日は「産前」に含まれるため(昭和25年3月31日基収4057号)、出産日まで働くことは可能です。
産後休業
出産日(出産には、妊娠第4月以降の流産、早産及び人工妊娠中絶並びに死産の場合も含む(昭和23年12月23日基発1885号、昭和26年4月2日婦発113号))の翌日から8週間。なお、産後6週間を過ぎた後、本人より就労の請求があり、医師が認めた場合は就労が可能です。

(3)産前産後休業中の給与
 勤務先の就業規則等によりますが、健康保険(協会けんぽもしくは健康保険組合)の被保険者であれば、出産手当金が支給されます。(「2.金銭的支援制度 ①出産手当金」を参照)

育児休業

(1)「育児休業」とは
 「育児休業」とは、子を養育する労働者が法律に基づいて取得できる休業です。

(2)育児休業を取得できる人
 原則として、1歳に満たない子を養育する男女労働者(日々雇い入れられる者を除く)が取得できます。ただし、有期雇用労働者は次のいずれにも該当する場合に取得できます。なお、有期雇用労働者について、就業規則等で取得できる労働者の範囲を広く定めてある場合はその定めに従います。(逆に狭く定めてある場合は、その就業規則の定めは無効です。)

ア. 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること。
 育児休業申出の直前の1年間について、勤務の実態に即して雇用関係が実質的に継続していることをいいます。契約期間が形式的に連続しているか否かにより判断するものではありません。例えば、年末年始や週休日を空けて労働契約が結ばれている場合や、前の契約終了時にすでに次の契約が結ばれている場合は、雇用関係は「実質的に継続している」と判断されます。
イ.子が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと。
 育児休業の申出があった時点で労働契約の期間満了や更新がないことが確実であるか否かによって判断されます。
※2歳までの育児休業の延長を申し出る場合には、イ.は「子が2歳に達する日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないこと」となります。
 イ.の要件を満たさないケース
f:id:sr-memorandum:20190912205905p:plain

ウ.一定の育児休業の対象者を除外する労使協定が締結されていないこと。もしくは、締結されていても除外の対象となっていないこと。なお、労使協定により次の有期雇用労働者を育児休業の対象外とすることができます。(労使協定が締結されていなければ該当しても育児休業を取得することができます。)

  • a.当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
  • b.育児休業申し出があった日から起算して、1年以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
  • c.1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

(3)育児休業の期間
原則は、子が1歳に達するまでの間に1回取得することができます。男性労働者は配偶者の出産日から取得可能ですが、女性労働者は産後休業期間が優先されこの期間は育児休業の期間に含まれません。ただし、育児休業の期間は(4)に説明するように一定の場合は最長で子が2歳に達するまで延長することができ、また(5)で説明するような「パパ・ママ育休プラス」により男性労働者は2回取得することもできます。

(4)育児休業期間の延長
 1歳到達日において育児休業をしている場合で次のいずれかの事情がある場合には、1歳到達日の翌日から1歳6か月に達する日まで育児休業をすることができます。また、1歳6か月到達時点でもこれらの事情がある場合には、再度申請することにより2歳に達する日まで育児休業を再延長できます。つまり、最長で2歳に達する日まで育児休業を取得できます。

ア.保育所等(※1)における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、1歳(または1歳6か月)に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合(※2)。
イ.常態として子の養育を行っている配偶者(育児休業に係る子のもう一人の親である者)であって1歳(または1歳6か月)に達する日後の期間について常態として子の養育を行う予定であった者が死亡、負傷・疾病等、離婚等により子を養育することができなくなった場合。

(※1)保育所等とは、児童福祉法に規定する保育所、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律に規定する認定こども園及び児童福祉法に規定する家庭的保育事業等をいいます。なお、無認可保育施設は含みません。
(※2)市町村に対して保育の申し込みをしているが、市町村から、少なくとも子が1歳(又は1歳6か月)に達する日の翌日において保育が行われない旨の通知(例えば市町村が発行する保育所の入所不承諾の通知書など)がなされている場合をいいます。
(※3)有期契約労働者について、子が1歳に達する日において育児休業をしている労働者本人が、引き続き育児休業をしようとする場合は、子が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないことが必要です。

ア.子が1歳に達する日の翌日から子が1歳6か月に達する日までの期間の育児休業については、申出時点において改めて育児休業の対象となる労働者の要件を満たすか否かは問われません。(例 育児休業の開始時点で、子が1歳6か月に達する日までに期間が満了することが明らかではなかったが、その後転職が決まり延長を申し出る時点では、子が1歳6か月に達する日に退職することとなっても、子が1歳6か月に達する日まで延長が可能です)

イ.アの後、子が1歳6か月に達する日の翌日から子が2歳に達する日までの期間の育児休業については、申出時点において以下の要件を満たした場合のみ再延長できます。

  • a.同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること。
  • b.子が2歳に達する日までに労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと。


(5)「パパ・ママ育休プラス」制度
両親ともに育児休業する場合で、次のいずれにも該当する場合には、育児休業の対象となる子の年齢が、原則1歳に満たない子から原則1歳2か月に満たない子に延長されます。要件が少々わかりにくいですが、産後休業中における父親の育児休業を取得を促すために、出産日以後産後休業中に父親が育児休業を取得すること(母親の育児休業開始前に父親が育児休業を取得)で育児休業期間を延長できるメリットを与える制度です。(産後休業中の育児休業取得を促す趣旨は、母体が最も危険な時期であるためかと思われます)
ア.育児休業を取得しようとする労働者(以下「本人」)の配偶者(※1)が、子の1 歳に達する日(1歳の誕生日の前日)以前において育児休業(※2)をしていること。
イ.本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前であること。
ウ.本人の育児休業開始予定日が、配偶者がしている育児休業の初日以降であること。
 なお、育児休業が取得できる期間(※3 出産した女性の場合は、出生日以後の産前・産後休業期間を含む。)は、これまでどおり1年間です。

(※1)「配偶者」には、法律上の配偶者のみならず、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含みます。
(※2)「配偶者が子の1歳に達する日以前のいずれかの日において育児休業をしている場合」には、育児・介護休業法の規定に基づく育児休業のみならず、公務員が国家公務員の育児休業等に関する法律等の規定に基づき取得する育児休業をしている場合を含みます。
(※3)育児休業が取得できる期間については、具体的には、「育児休業等取得日数」(①)が「育児休業等可能日数」(②)を超えた場合、その日において育児休業が終了することとされています。
①「育児休業等取得日数」とは、「出生日以後の産前・産後休業期間の日数」+「育児休業を取得した日数」をいいます。
②「育児休業等可能日数」とは、子が1 歳に達する日までの日数をいいます。すなわち、うるう日を含まない場合は365日、うるう日を含む場合は366 日となります。

(パパ・ママ育休プラスの具体例)
f:id:sr-memorandum:20190912211404p:plain

(パパ・ママ育休プラスから1歳6か月まで延長する場合の具体例)
f:id:sr-memorandum:20190912211947p:plain

③子の看護休暇

(1)子の看護休暇とは
 小学校就学前の子を養育する労働者は、負傷し、または疾病にかかった子の世話または疾病の予防を図るために必要な世話(※1)を行なう場合、事業主に申し出ることにより、1年度において(※2)5日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合にあっては、10日) を限度として、子の看護休暇を取得することができます。子どもが病気やけがの際に休暇を取得しやすくし、子育てをしながら働き続けることができるようにするための権利として子の看護休暇が位置づけられており、労働基準法第39 条の規定による年次有給休暇とは別に与える必要があります。なお、子の看護休暇に対して給与を支払うかどうかは就業規則等の定めによります。(なお、年次有給休暇を使っていない場合は年次有給休暇とするケースが多いかと思いますが、その場合は子の看護休暇の5日にはカウントされません)
(※1)「疾病の予防を図るために必要な世話」とは、子に予防接種又は健康診断を受けさせることをいい、予防接種には、予防接種法に定める定期の予防接種以外のもの(インフルエンザ予防接種など)も含まれます。
(※2)「1年度において」の年度とは、事業主が特に定めをしない場合には、毎年4月1日から翌年3月31日となります。

(2)子の看護休暇の取得単位
 子の看護休暇は、1日単位または半日単位(※ 1日の所定労働時間の2分の1。労使協定によりこれと異なる時間数を半日と定めた場合には、その半日。)で取得することができます。
(※)日によって所定労働時間数が異なる場合の1日の所定労働時間数の定め方については、1年間における1日平均所定労働時間数とします。1日の所定労働時間数または1年間における1日平均所定労働時間数に、1時間に満たない端数がある場合は、1時間に切り上げるものとして取り扱います。

(3)子の看護休暇の除外対象者
 日々雇い入れられる者は除かれます。また、次のような労働者について子の看護休暇を取得することができないこととする労使協定(※)があるときは、事業主は子の看護休暇の申出を拒むことができ、拒まれた労働者は子の看護休暇を取得することができません(ただし、ウの労働者については、1日単位で子の看護休暇を取得することはできます。)。
ア.その事業主に継続して雇用された期間が6か月に満たない労働者
イ.1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
ウ.半日単位で子の看護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者
(※)労使協定により1日の所定労働時間の2分の1以外の時間数を半日と定める場合には、次の事項を定めなくてはなりません。

  • ・当該労使協定による単位で子の看護休暇を取得することができることとされる労働者の範囲
  • ・子の看護休暇の取得の単位となる時間数(1日の所定労働時間に満たないものに限ります。)


出産・育児支援制度をざっくりまとめました2~金銭的支援編(給付金・社会保険料) - 社会保険労務士川口正倫のブログ