社会保険労務士川口正倫のブログ

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【普通解雇】クレディ・スイス証券(東京地判平24.1.23労判1047号74頁)

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クレディ・スイス証券(東京地判平24.1.23労判1047号74頁)

参照法条  : 労働契約法16条、民法536条2項、民法709条
裁判年月日 : 2012年1月23日
裁判所名  : 東京地
裁判形式  : 判決
事件番号  : 平成21(ワ)46657

1.事件の概要

Xは、スイスに本拠を置く銀行の日本法人であるY社に、平成16年10月に中途採用され、株式営業部のドメステック・セールス・チーム(日本株担当)で勤務していた。
Xは、入社以来、コア・アカウントと呼ばれる重要顧客のうち4社(A投信、B投資顧問、C信託銀行、Eマネジメント)のアカウント・マネージャー(営業責任者)を担当していた。Y社が機関投資家から得る手数料収入は、機関投資家による各証券会社の順位付けに従い、傾斜配分されることになっており、Y社は、全コア・アカウントのY社に対する評価を5位以内とすることを必達の目標として設定し、平成21年2月3日、その旨を再確認するメールを全営業担当者に送信していた。
Xは、平成21年5月11日に、収益に対する貢献が低いこと等を理由として業務改善命令に基づく業務改善プロセスを開始され、その後、同プロセスに基づく6月21日、7月14日(C信託銀行の第2四半期の評価が10位であったことを受けて行われたもので、XをC信託銀行のアカウント・マネージャーから外すことが通告された)の面談の後の7月27日の面談で、最終警告書(本件警告書)を渡されるとともに、退職勧奨を受け、社内に入るためのアクセスカードを回収され、同日(7月27日)以降出勤せずにいたところ(この後、弁護士を通じて復職に向けてY社と交渉している)、同年12月4日付けで3か月の無給の休職命令を受け(その後、さらに3か月間延長)、平成22年6月3日付で解雇された。なお、解雇理由は、①コア・アカウントの評価が低いこと、②収益貢献度が低いことであった。
これに対して、XがY社に対して、雇用契約上の地位確認等を求めて提訴したのが本件である。

2.判決の要旨

C信託銀行について5位必達という目標が達成できていなかったという意味において、形式的には、解雇事由該当性を認めることができる。しかし、Xは、本件警告書の交付を受けた時点では、C信託銀行の平成21年第2四半期における評価期間は残り20日を切ってしまっていたのであり、同四半期の評価を上げるにはあまりに期間不足であったというべきこと、F本部長の注意・指導によって本件警告書についての認識不足を改めるに至った7月面談の時点では、新たな改善の機会を与えられることなく同社のアカウント・マネージャーを外されるに至っていたこと、他方、本件警告書交付の時点で平成21年第2四半期の評価期間が50日程度残っていたA投信とB投資顧問については、評価が上昇し、5位必達の目標を達成することができていることに照らすと、C信託銀行の平成21年第2四半期におけるY社に対する評価が低いことをもって本件解雇の理由とすることは、改善可能性に関する将来的予測を的確に考慮した解雇理由であるということができず、合理性を欠くというべきである。
そうすると、平成21年第1及び第2四半期における収益貢献度が、Y社が指摘する程度に低いことをもって本件解雇の理由とすることは、改善可能性に関する将来的予測を的確に考慮した解雇理由であるということができるかどうかについて疑問がある上、解雇の最終的手段性の点からも問題があるというべきであり、Xが、外資系企業において高い能力が期待されてしかるべきいわゆる中途採用の高額所得者であることを前提としてもなお、客観的合理性を欠くというべきである。
以上によれば、本件解雇は無効であるというべきであるから(なお、Y社は、XとY社間の信頼関係破壊も解雇理由の1つに掲げているが、本件全証拠に照らしても、それを独立の客観的合理性のある解雇理由と評価することができるほどの事情はうかがい知ることができない。)、Xの雇用契約上の地位確認請求と、平成21年12月25日以降の民法536条2項に基づく賃金請求については、理由があるものというべきである。


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