社会保険労務士川口正倫のブログ

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【配転】オリンパス事件(東京高判平23.8.31労判1035号42頁)

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【配転】オリンパス事件(東京高判平23.8.31労判1035号42頁)

参照法条 : 民法709条、民法715条、公益通報者保護法2条、公益通報者保護法5条、公益通報者保護法6条
裁判年月日 : 2011年8月31日
裁判所名 : 東京高
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成22(ネ)794

1.事件の概要

Xは、デジタルカメラ、医療用内視鏡等の製造販売を行うY1社に昭和60年に入社してカメラの研究開発業務に従事し、平成6年に希望して営業職に転換し、平成17年10月にIMS事業部に異動し、平成19年4月から国内販売部NDT(非破壊検査機器)システムグループ営業チームリーダーの職についていた。Y2は、Y1社のIMS事業部を統括する事業部長であり、Y3は、IMS国内販売部の部長である。
平成18年12月に訴外顧客A社からY1社に訴外技術職従業員Bが転職したことについてA社取締役から抗議を受けていたXは、平成19年4月、Bが「A社からBの後輩が3号機の受注をおみやげとして入社することになっている、Xには内緒にしておくように」と他の従業員に言っていたことを知り、Y2に対し、A社からの2人目の採用はとりやめるべきであると述べた。これに対し、Y2は、「XがY2に相談しに来たのは大間違い、XのボスはY3だ」などの内容のメールを送信した。
平成19年6月、XはY1社のコンプライアンス室にA社からの従業員引き抜きについて相談し、コンプライアンス室の訴外Eらは通報者がXであることを告げたうえでY2から事情聴取した。平成19年7月、Eは、「人事部では、取引先担当者の採用は道義的な問題があり採用を控えるのが原則で、取引先と当社の間で同意が成立しない限り行わないこととしている」旨のメールを、X、Y2、人事部長らに送信した。
平成19年7月、Y2はXの配転について検討を始め、同年10月、Y1社はXに対し、IMS事業部IMS企画営業部部長付への配置転換を命じ(第1配転命令)、新事業創生探索活動を行うこととされた。
これに対し、Xは、Y1社、Y2、Y3に対し、上記の部長付として勤務する義務がないことの確認等を求めて提訴した。
1審は、上記配転命令につき違法不当な目的は認め難く、コンプライアンスヘルプライン運用規定にも反せず、当該人員配置を行う業務上の必要性、人員選択の合理的必要性が認められるとして、請求を棄却したが、Xは控訴した。
1審の口頭弁論終結後の平成22年1月、Y1社はXに対し、ライフ・産業システムカンパニー統括本部品質保証部部長付への配置転換を命じ(第2配転命令)、さらに控訴審係属中の同年10月、品質保証部システム品質グループへの配置転換を命じた(第3配転命令)。

2.判決の概要

第一配転命令は、Y2において、A社から転職者の受入れができなかったことにつきXの言動がその一因になっているものと考え、Y1社の信用の失墜を防ぐためにしたXの本件内部通報等の行為に反感を抱いて、本来の業務上の必要性とは無関係にしたものであって、その動機において不当なもので、内部通報による不利益取扱を禁止した運用規定にも反するものであり、第2及び第3配転命令も、いわば第1配転命令の延長線上で、同様に業務上の必要性とは無関係にされたものであること、第一ないし第三配転命令によって配置された職務の担当者としてXを選択したのは疑問があること、第一ないし第三配転命令はXに相当な経済的・精神的不利益を与えるものであることなどの事情が認められるから、第一ないし第三配転命令は、いずれも人事権の濫用であるというべきである。
第一配転命令及び第二配転命令は、いずれもY2が人事権を濫用したものであり、第三配転命令もその影響下で行われたものであって、これらによって、Xに・・・(中略)昇格・昇給の機会を事実上失わせ、人格的評価を貶めるという不利益を課すものであるから、Y2の上記行為は、不法行為上も違法というべきである。


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