社会保険労務士川口正倫のブログ

横浜市の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ

【配転】コナミデジタルエンタテイメント事件(東京高判平23.12.27労判1042号15頁)

コナミデジタルエンタテイメント事件(東京高判平23.12.27労判1042号15頁)

参照法条 : 憲法14条、労働基準法3条、労働基準法4条、育児・介護休業法10条、男女雇用機会均等法9条
裁判年月日: 2011年3月17日
裁判所名 : 東京地
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成21(ワ)20155

1.事件の概要

Xは、平成8年10月に電子応用機器関連のソフトウェア、ハードウェア及び電子部品の研究、制作、製造並びに販売等の事業を営む訴外A社に入社し、事業譲渡に伴い平成18年3月にY社した。Xは、平成19年10月にY社のライセンス部に配置替えとなり、海外ライセンス業務に従事した。Xは、長女出産のために平成20年7月中旬から9月まで産前産後休業し、10月から育児休業を取得し、平成21年4月からライセンス部に復職した。
Y社の人事制度は、「役割グレード」制によるものとされ、育成が重視されるAクラス、マネジメントによる貢献が重視されるB~Eクラス等があった。賃金体系は年俸制であり、年俸額は、役割報酬(その額は役割グレードに連動する報酬グレードに応じて決定)、成果報酬(前年4月~本年3月の成績査定により決定)、調整報酬(年俸の激変緩和、移行措置等に応じて支給)によるものとされていた。
Y社は、平成21年4月に復職したXを、海外ライセンス業務から国内ライセンス業務に配置換えし、役割グレードを引き下げ、年俸額を休業前の640万円(役割報酬550万円、成果報酬90万円)から520万円(役割報酬500万円、成果報酬0円、調整報酬20万円)に引き下げた。
Xは、平成21年6月、Y社に対し、減法前後の賃金の差額請求等を求めて提訴し、平成22年2月にY社を退職した。
1審は、担当変更、役割グレード引き下げ措置、役割報酬減額はY社の人事権を濫用したものということはできないが、成果報酬ゼロ査定は成果報酬の査定に係る裁量権を濫用したものと判断し、Y社に対し、成果報酬不支給行為による慰謝料30万円等の支払を命じ、その他の請求を棄却した。これに対して、Xが控訴したのが本件である。

2.判決の概要

Y社がXの職場復帰に伴い、平成21年6月16日以降のXの役割グレードをB-1からA-9に引き下げ、その役割報酬を550万円から500万円に減給させるとともに、同日以降の成果報酬をゼロと査定して、Xの年俸を、産休、育休等の取得前の合計640万円から復帰後は合計520万円に引き下げたことは、違法であると判断する。本件担当変更は、業務上の必要性に基づいて・・・(中略)人事上の権限の行使として行われたものということができ、本件復職に際してXに充てる業務の選択の観点からみても、不合理な点は見いだせない、他に・・・(中略)人事権を濫用したものと評価し得る特段の事情は認められないことからすると、本件担当変更自体ともってXの人事権を濫用したものということはできない。
しかし、役割報酬の引下げは、労働者にとって最も重要な労働条件の1つである賃金額を不利益に変更するものであるから、就業規則や年俸規程に明示的な根拠もなく、労働者の個別の同意もないまま、使用者の一方的な行為によって行うことは許されないというべきであり、そして、役割グレードの変更についても、そのような役割報酬の減額と連動するものとして行われるものである以上、労働者の個別の同意を得ることなく、使用者の一方的な行為によって行うことは、同じく許されないというべきであり、それが担当職務の変更を伴うものであっても、人事権の濫用として許されないというべきである。
担当業務の変更に伴って役割グレードがB-1からA-9へ変更され、それに連動する形で報酬グレードが6から5-1に変更されて、その役割報酬が年550万円から年500万円に減額されたものであるから、そのような大幅な報酬の減額を伴う役割グレードの変更を、就業規則や年俸規程に明示的な根拠もなく、個々の労働者の同意を必要とせず、使用者であるY社の一存で行うことができるとすることは、労使双方の対等性を損なうものとして許容することができないと解すべきである。

3.解説

第1段落は、1審引用して担当変更自体については人事権の濫用を認めなかったが、これにともない役割報酬を減額させたことについては、重要な労働条件の1つである賃金額を不利益に変更するものであるから、就業規則や年俸規程に明示的な根拠もなく、労働者の個別の同意もないまま、使用者の一方的な行為によって行うことは許されないず、人事権の濫用であると判断された。
逆にいえば、役割報酬を減額させた分を調整報酬に振り替える等により、報酬を減額させなければ、本件担当変更は人事権の濫用とはされなかったであろう。


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