社会保険労務士川口正倫のブログ

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【雇止め】ダイフク(雇止め)事件(名古屋地判平7.3.24労働判例678号47頁)

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ダイフク(雇止め)事件(名古屋地判平7.3.24労働判例678号47頁)

参照法条  : 労働基準法2章、労働基準法89条1項3号
裁判年月日 : 1995年3月24日
裁判所名  : 名古屋地
裁判形式  : 判決
事件番号  : 平成5年 (ワ) 42 
裁判結果  : 一部認容,一部棄却

1.事件の概要

Xは、昭和63年11月、諸機械、器具および電気機械、器具の製造販売等を目的とするY社のシルバー人材活用であるフレンド社員の名称の募集に応じ、6か月の期間の定めのあるパートタイマー契約を締結し、その後6か月ごとに契約を更新した。この間、Xは、フルタイムの従業員と差のない労働時間で勤務し、3回配置換えされた。
Y社は、平成4年10月1日からの期間を3か月として、Xと雇用契約を締結し、同年末をもってXを雇止めとし、これに対して、Xが地位確認等を求めて提訴したのが本件である。

2.判決の要旨

本件労働契約の更新の状況についてみても、採用後7回にわたって更新を繰り返し、平成4年9月30日の段階において、すでに約4年近くの間継続してY社の命ずる職務に従事してきたものであることが認められる。このような本件労働契約の特徴からすれば、本件労働契約は、必ずしも短期の雇用を前提としたものではなく、XがY社の従業員として相当期間労務提供することが当初から予定されていたものであって、その意味で、期間の定めにもかかわらず、特段の事情のない限り、労働契約が反復更新されてXの雇用が継続されることが、本件労働契約の内容となっていたというべきである。
したがって、本件労働契約は、当初、X・Y社間において期間の定めのある雇用契約として成立し、外形的にはこれが更新されてきたにすぎないものであるとしても、本件雇止め当時は、すでにその性質を変じ、実質的には期間の定めのない雇用契約と異ならない状態で存続していたものというべきである。それ故、Y社から、解雇の意思表示がなされた場合はもとより、単に更新拒絶(の意思表示)がなされた場合においても、少なくとも解雇に関する法理が準用され、解雇において解雇事由及び解雇権の濫用の有無が検討されるのと同様に、更新拒絶における正当事由及び更新拒絶権の濫用の有無が検討されなければならないというべきである。
そうすると、本件雇止めにより本件労働契約の期間が満了したとして、XがY社従業員の地位を喪失したとのY社主張は採用できない。
本件雇止めが、整理解雇としてなされた色彩の強いものであることを考慮すると、整理の対象としてXを選択したことについては、整理の基準及び基準適用の合理性の視点から、さらに慎重な検討を要するところ、Y社がXを整理解雇の対象として選択した点について、以下のとおり合理性が認められず、本件雇止めは権利の濫用であって無効といわざるを得ない。
すなわち、Y社小牧事業所においては、本件解雇の頃、パートタイマーが相当数就労しており、その後も小牧事業所においては必要に応じてパートタイマーを募集していたのであるから、このような事情の存する本件においては、Y社にパートタイマーを削減する抽象的な必要性があったとしても、単にXがパートタイマーであるということのみをもってXを整理の対象とすることが許されないことはいうまでもない。
また、Xが正規の従業員の定年年齢たる60歳を超過していることについても、XがY社に採用されたのが満59歳のときであること、本件労働契約は相当期間反復更新されることが予定されたものであったこと、X採用時のY社の募集対象人員の年齢が55歳から65歳程度までであったこと等のXの採用の経緯に照らすと、Y社がこれを選択基準にしてXを整理の対象とすることは、Xとの間の信義則に反し、著しく不合理であって許されないというべきである。
もっとも、平成4年9月30日付けのXとY社間のフレンド社員雇用契約書には、「追記、本契約をもって最終雇用契約とする。(九/三〇、三者(A、B、C)にて面談の上了解)。」との書き込みがなされており、右追記部分は、訴外Cが記載したことが認められる。 しかしながら、右追記部分には、Cの訂正印のみが押されており、Xの押印はないこと及びX本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すれば、右追記部分は、実際にはXの承諾を得たうえ記載されたものではなく、むしろ、Xが右契約書に署名押印してY社側に渡した後に記載された疑いがあり、いずれにせよ、Xが右のごとき追記内容を承諾したうえで、9月30日の調印に応じたとは到底認めがたい。
このように、Xが9月30日の調印において、Y社を退職する旨の明確な意思を有していなかったことは明らかというべきであり、Y社担当者も、Xが12月末日をもって退職するとの明確な意思を有したうえで右調印に至ったものでないことを十分認識していたものというべきである。
そうすると、たとえ、Y社の担当者において、今回の更新をもって最終契約とするとの意思をXに伝え、右意思を示す契約書にXが署名押印したとしても、なんら退職の合意(本件合意解約)の成立を意味するものではないといわなければならない。
したがって、本件合意解約が成立したためXはY社の従業員の地位を喪失した旨のY社主張は採用できない。

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