社会保険労務士川口正倫のブログ

横浜市の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ

【雇止め】報徳学園(雇止め)事件(大阪高判平22.2.12労判1062号71頁)

報徳学園(雇止め)事件(大阪高判平22.2.12労判1062号71頁)

1.事件の概要

Xは、中学・高校を設置している学校法人Yで美術科常勤講師として勤務していた。Xは、学校法人Yに採用され1年間勤務し、1年おいて再び採用され常勤講師となりさらに3度更新した後に雇止め(更新拒絶)された。これに対してXは、学校法人Yに地位の確認等を請求し、1審(神戸地尼崎支平20.10.14労判974号25頁 )が雇い止めを無効としたところ、学校法人Yが控訴したのが本件である。

2.判決の概要

有期雇用契約が多数回にわたって反復更新されるなどして期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となり、当事者の合理的な意思解釈としては実質的に期間の定めのない契約を締結していたものと認定される場合、雇止めの意思表示は実質的には解雇の意思表示に相当し、その効力を判断するに当たり、解雇に関する法理を類推適用するときがある(最一小判昭和49.7.22民集28巻第5号927頁)。また、期間の定めのない契約と実質的に異ならないとまで認められない場合であっても、当該雇用関係がある程度の継続が期待されていたものであり、現に契約が何度か更新されているような場合、契約期間満了による雇止めには解雇に関する法理が類推されることがある(最一小判昭和61.12.4裁判集民事149号209頁)。そして、期間の定めのない雇用契約において、使用者の解雇権の行使が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、当該解雇権の行使は権利の濫用として無効となり(最二小判昭50.4.25民集29巻4号456頁)、上記類推適用の場合も同様と解されるが、ただ、期間の定めのない契約と実質的に異ならないとまで認められない場合には、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に締結された期間の定めのない労働契約における解雇とは合理的な差異がある(最一小判昭和61.12.4裁判集民事149号209頁)。

学校法人Yにおける常勤講師制度は1年間の有期雇用契約であって、専任教諭採用のための試用となったことがあるとすれば、結果として生じた副次的なものであり、業務の内容は、授業、クラブ活動等の点では基本的に専任教諭と同様であった面はあるものの、本件当事者間での契約は3回にとどまっていたものである。また、Xは、B校長の発言により専任教諭への登用を期待したが、常勤講師契約とは別の契約に移行することの期待であったというべきである。さらに平成17年度、平成18年度も専任教諭には採用されず、その理由についても具体的な説明はなかったし、同年度の契約の前には、C校長らから、常勤講師は3回までであるとか、専任教諭採用について平成19年度は白紙であるなどと告げられていたものである。毎年翌年度の常勤講師契約に関する意向確認があり、年度はじめに契約書が作成されていたし、平成14年度から18年度までの間、常勤講師の多くは1年又は2年後に専任教諭に採用されたが、雇止めされた者も2名あった実態がある。
 そうすると、本件契約は、更新が多回数に及ぶとはいえず、契約の目的も必ずしも継続雇用を前提とするものとはいえず、専任教諭への登用の期待は当初あったが、年ごとに小さくなり、単年度の契約としての形式が整えられており、同じ常勤講師の中で雇止めの例もみられたなどの事情に照らし、期間の定めのない雇用契約と実質的に同視できるものということはできない。
平成16年度雇用契約の時点では、Xが・・・(中略)期待を持ったことの合理性があったかもしれないが、それは主としてB校長の言動に基づく主観的なものであって、常勤講師制度の目的等からの客観的根拠があったわけではない。そして、その後2年度にわたって専任教諭に採用されず、かえって、平成18年度雇用契約に先立ち、C校長らの・・・(中略)告知を受け、さらに平成17年度限りで1名の常勤講師が雇止めとなったことを考慮すれば、少なくとも平成18年度には、Xの・・・期待は減弱ないし消滅していたものと認めるのが相当であり、少なくとも合理性な根拠が乏しいものになっていたというべきである。
よって、本件で契約期間満了による雇止めに解雇に関する法理を類推適用することは相当でない(もとより同法理の適用はない。)。

Xの主張としては、少なくとも常勤講師としての雇用が継続されることを包含する趣旨で、専任教諭に採用されることを期待していたが、これは、専任教諭に採用されるという期待が実現しない場合でも、少なくとも常勤講師としての雇用は継続するという期待を有していたとの趣旨とも解される。しかし、・・・(中略)Xの期待は専任教諭としての採用の期待はあったが、常勤講師としての雇用継続自体を期待していたものと認めることはできない。B校長ほか学校法人Yも、常勤講師としての雇用継続自体を期待させるような言動をとったとは認められず、かえって、平成18年度雇用契約に先立ち、C校長が常勤講師契約は3回を限度とする旨告げて(本件内規なるものが存在したか否かはさておき)、次年度以降の常勤講師契約締結に否定的な見解を示したのであるから、Xとして、専任教諭に採用されることへの合理的期待とは別に、常勤講師契約継続への合理的期待を有してしかるべきであったと認めることはできない。
なお、常勤講師制度が導入される以前に専任講師として採用され、長期間専任講師として勤務を続けてから専任教諭に採用された実例があったとしても、専任講師は期間の定めのない雇用形態であるから、雇用がある程度長期継続することは当然予定されており、常勤講師の場合とは前提が異なる。また、Xが、平成16年度雇用契約に当たり、専任教諭に採用される期待がなければ常勤講師契約を締結しなかったであろうと解すべき事情はなく、非常勤講師と常勤講師との待遇の違い及び同契約当時Xが兼職していなかったことに照らし、同契約の締結によってXに特段の不利益を生じたともいえない。


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