社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【雇止め】本田技研工業事件(東京高判平24.9.20労経速2162号3頁)

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本田技研工業事件(東京高判平24.9.20労経速2162号3頁)

1.事件の概要

Xは、平成9年12月1日、車の製造、販売等を目的とするY社に、期間契約社員として採用された。その後、Xは、Y社との間で有期雇用契約の締結と契約期間終了・退職を繰り返した。Xは、平成20年9月29日、Y社との間で、同年10月1日から契約期間2か月とする有期雇用契約を締結し、さらに、同年11月28日、Y社との間で、同年12月1日から契約期間1か月とする本件雇用契約を締結した。同月31日、Y社は、本件雇用契約の契約期間が終了したとし、その後の契約の更新を拒絶した。
Xは、本件雇用契約の締結に先立つ平成20年11月26日に開催された説明会に出席し、リーマンショックによる自動車販売実績の急速な低迷により、Xの勤務してきたA製作所の部品生産の激減等について説明を受け、また、同月28日には、勤務シフトべ別に期間契約社員に対して開催された説明会に出席し、A製作所では、経営努力だけでは余剰労働力を吸収しきれず、期間契約社員を全員雇止めにせざるをえないこと等について説明を受けた。
Xは上記の説明を理解し、もはや期間契約社員の雇止めは回避し難くやむをえないものとして受け入れ、「本契約は、前項に定める期間の満了をもって終了し、契約更新はしないものとする。」という、本件不更新条項が盛り込まれた契約書に任意に署名した。Xは、この雇止めが、これまでのような、退職後に一定の空白期間経過後、再入社することが期待できる雇止めではないことは十分に理解していた。
Xは、Y会社からの雇用契約の更新拒絶は違法無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位の確認等を求めて訴えを提起した。1審は、Xの請求を棄却したため、控訴したのが本件である。

2.判決の概要

Xは、事前に、Y社から説明を受け、本件不更新条項が、もはや再入社が期待できない雇止めを予定する条項で、やむなくこれを受け入れざるをえないと判断し、不更新条項を規定する本件雇用契約を締結した。そして、本件雇用契約が締結された平成20年11月28日から本件雇止めが実行された同年12月末日までの間、Xは、Y社側に不満はもとより異議を述べたり、契約継続することを求めたりするなどせず、粛々と雇止めを受け入れる行動態度をとって期間満了に至り、退職手続を整然と履行してY社から支給される慰労金および精算金を受領した。
そうすると、Xは、Y社の説明会が開催された同年11月28日時点において、本件雇用契約の期間満了後における雇用契約のさらなる継続に対する期待利益を確定的に放棄したと認められるから、本件雇止めについては、解雇権濫用法理の類推適用の前提を欠く。



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