社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【解雇】セガ・エンタープライゼス事件(東京地判平11.10.15労判770号34頁)

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セガ・エンタープライゼス事件(東京地判平11.10.15労判770号34頁)

1.事件の概要

Xは、Y社において、人材開発部人材教育課、企画制作部企画制作一課、開発業務部国内業務課等の部署に次々と異動を命じられたが、その後、所属部署から、与える仕事がないと通告され、他の部署での仕事も見つからなかったので、退職勧告を受けた。Xはこの退職勧告を受け入れなかったため、Y社は、就業規則19条1項2号の「労働能率が劣り、向上の見込みがない」という解雇事由にあたるとしてXを解雇した。なお、Xの人事考課の順位は下位10%未満であり、Xと同じ効果結果の従業員は、約3500名の従業員のうち200名であった。
これに対して、Xが、解雇は無効であるといsて、従業員としての地位保全等の仮処分を申請したのが本件である。

2.判決の概要

Xが、Y社の従業員として、平均的な水準に達していなかったからといって、直ちに本件解雇が有効となるわけではない。・・・(中略)就業規則19条1項各号に規定する解雇事由をみると、『精神又は身体の障害により業務に堪えないとき』、『会社の経営上やむを得ない事由があるとき』など極めて限定的な場合に限られており、そのことからすれば、2号についても、右の事由に匹敵するような場合に限って解雇が有効となると解するのが相当であり、2号に該当するといえるためには、平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならないというべきである。
Xについて、検討するに、確かに・・・(中略)平均的な水準に達しているとはいえないし、Y社の従業員の中で下位10パーセント未満の考課順位ではある。しかし、・・・(中略)右人事考課は、相対評価であって、絶対評価ではないことからすると、そのことから直ちに労働能率が著しく劣り、向上の見込みがないとまでいうことはできない。・・・(中略)就業規則19条1項2号にいう「労働能率が劣り、向上の見込みがない」というのは、右のような相対評価を前提とするものと解するのは相当でない。すでに述べたように、他の解雇事由との比較においても、右解雇事由は、極めて限定的に解されなければならないのであって、常に相対的に考課順位の低い者の解雇を許容するものと解することはできないからである。
Y社としては、Xに対し、さらに体系的な教育、指導を実施することによって、その労働能率の向上を図る余地もあるというべきであり、・・・(中略)、いまだ『労働能率が劣り、向上の見込みがない』ときに該当するとはいえない。
したがって、本件解雇は、権利の濫用に該当し、無効である。


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