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入管法に基づく外国人労働者の就労等の許可の概要

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入管法に基づく外国人労働者の就労等の許可の概要

1.外国人の入国・在留・出国の概要

① 外国人の入国の要件

外国人が日本国内に入国するためには次の6つ要件を全て満たす必要があります。空港または港で行われる入国審査官による審査で、これらの要件を満たしているかが審査されます。

(1) 有効な旅券(パスポート)を持っていること。

(2) 旅券に「査証」(ビザ)が記載されていること。
日本国との間に相互に査証免除取決めを結んでいる国の国民が、観光等の目的で入国しようとする場合は査証は必要がありませんが、就職その他報酬を伴う活動に従事する目的で日本国に入国する外国人には適用されません。したがって、入国後に就労する場合には、日本国との間に査証免除取決めを結んでいる国の国民であっても、あらかじめ査証を取得することが必要になります。

(3)入国目的が法定の「在留資格」のいずれかに該当していて、かつ、虚偽でないこと。
在留資格は次のとおりです。なお、2018年入管法等の改正により、「特定技能」が追加されました。(特定技能については「2019年4月施行の入管法等の改正の概要」を参照)

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在留資格の一覧

(4)法務省令で定める上陸許可基準を満たしていること。
在留資格のほとんどについては、入管法に基づき「上陸許可基準」が設けられており、外国人がこれらの在留資格を取得するためには、この上陸許可基準を満たしていることも必要です。

(5)希望する「在留期間」が法定の在留期間に適合していて、かつ、虚偽でないこと。
「在留期間」とは、当該外国人が適法に日本国内に在留することが認められる期間のこといい、それぞれの在留資格ごとに定められています。

(6)その外国人が「上陸拒否事由」に該当していないこと。
次のような上陸拒否事由があり、いずれかに該当すると日本国内への上陸が認められません。

  • 一定の事由により日本国内から退去強制させられた者
  • 火薬類等を不法に所持する者
  • 1年以上の懲役・禁固の刑に処せられたことのある者

② 外国人の日本国内への入国手続

外国人が日本国の空港や港での入国審査をパスするポイントは、その外国人の予定している日本国内での活動が、入管法で定められている「在留資格」のいずれかに該当していて、かつ、虚偽でないと認められることです。
在留資格」が認められるためには、入国審査の際に、「在留資格認定証明書」を提示します。これは、日本国内への入国を希望する外国人が、あらかじめこれを取得し、当該外国人の活動が在留資格取得に必要な要件を満たしていることを証明する書類となります。

(1)在留資格証明書取得の2つの方法
外国人が、日本国の法務省から「在留資格認定証明書」の交付を受けるには、次の2つの方法があります。

  • 代理申請:その外国人を受け入れようとする日本国内の企業等の職員が、その外国人の代理人として、企業等の所在地を管轄する出入国在留管理庁地方入国管理局に申請する方法
  • 本人申請:その外国人本人が、母国に設けられている日本国大使館に申請する方法

(2)代理申請による在留資格証明書取得申請
代理申請による在留資格証明書取得の手続は次のようになります。
ほとんどの外国人が代理申請の方法を用いています。

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本人申請による在留資格証明書取得申請のフロー

  • ① 日本国内の受入れ機関(企業、学校等)と日本国への入国を希望する外国人とが、在留の目的、期間その他諸条件について話合い、合意します。
  • ② その外国人の依頼を受けた申請代理人(受入れ企業等の職員)が、日本の地方入国管理局に対して「在留資格認定証明書交付申請書」を提出します。(誰が申請人になれるかは、取得しようとする在留資格の種類によって異なります。)
  • ③ 申請を受けた日本国内の地方入国管理局は、申請のあった外国人に関する審査を行い、適切と判断したときは、申請代理人に「在留資格認定証明書」を交付します。
  • ④ 申請代理人は、この「在留資格認定証明書」を海外にいる申請人本人(外国人)に直接送付します。
  • ⑤ 申請人(外国人)は、「在留資格認定証明書」が送付されるまでに、あらかじめ自国政府の外務省に申請して「旅券(パスポート)」をもらっておきます。また、申請人(外国人)は、自国内に設けられている日本国の大使館または領事館に「旅券」と「在留資格認定証明書」を提出して「査証(ビザ:日本政府が当人を日本国内に受け入れることの旅券への裏書き)」の申請をします。
  • ⑥ 大使館等は、申請人に「査証」を発給(裏書き)します。不適格の場合は、「不許可通知」をします。
  • ⑦ 査証を発給された外国人は、飛行機または船で日本国に来ます。そして外国人は、日本国の空港または港で査証の記載された旅券(パスポート)と在留資格認定証明書を提出し、日本国政府の入国審査官の審査を受けます。
  • ⑧ 外国人は、旅券に上陸の認印をもらいます。その際に、旅券に上陸許可年月日、在留資格、在留期間及び上陸港名が記載されます。ここで、その外国人の在留資格と在留期間が決定します。なお、中長期在留者には、「在留カード」が交付されます。
  • ⑨ 外国人は日本に上陸し、在留します。市役所等で居住地の届出を行います(住居地を定めてから14日以内)。

③ 日本国内に在留する外国人の義務

日本国内に在留する外国人は、次のことを守らなければなりません。これらに違反した場合には、入管法等に基づき、懲役、禁固あるいは罰金の刑に処せられます。また、場合によっては日本国外に強制退去させられます。

(1)旅券、在留カードを所持すること
日本に在留する外国人は、常に旅券または在留カードを携帯し、入国審査官、入国警備官、警察官等から提示を求められたときは、これを提示しなければなりません。

(2)在留資格に定められた活動範囲を守ること
外国人が日本国内に在留中に行うことができる活動の範囲は、それぞれの在留資格ごとに定められています。外国人は、その在留資格に属する活動以外の収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動(以下「資格外収入活動」という)を行ってはなりません。ただし、業として行う者ではない講演に対する謝金、日常生活に伴う臨時の報酬は収入の範囲から除かれます。
外国人が「資格外収入活動」を在留資格に基づく活動を阻害しない範囲内で行うおうとするときは、地方入国管理局に申請し、「資格外活動の許可」を受けなければなりません。
また、外国人が付与された在留資格のもとで適法に行うことができる活動をやめて、新たに別の在留資格を所持しなければ適法に行うことができない活動を専ら行おうとするときは、地方入国管理局に申請し、「在留資格の変更の許可」を受けなければなりません。

(3)在留期間を守ること
外国人は、許可された在留期間を超えて日本国内に在留することを禁止されています。
ただし、許された在留期間を超えて日本国内に在留する必要がある場合は、地方入国管理局に「在留期間の更新」を申請することができ、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとして更新が許可されれば、その外国人は、許可された期間、引き続き日本国内に在留することができます。

④ 外国人の出国、国外退去強制

(1)外国人の出国手続
日本の国外に出国しようとする外国人は、出入国港において、入国審査官に出国許可申請書を提出します。出国の確認は、旅券に出国に証印をすることによって行われます。また、外国人登録をしている外国人が出国する場合は、出入国港で、入国審査官に所持している在留カードを返さなければなりません。

(2)国外への退去強制
外国人が次ぎのいずれかに該当する場合には、国は所定の手続きを経て、日本国から強制的に退去させることができます。

  • ① 資格外収入・報酬活動をもっぱら行っていると明らかに認められる者
  • ② 在留期間の変更または更新の許可を受けないで、在留期間を経過して日本国内に残留する者
  • ③ 在留カードに関する法令の規定に違反して禁固以上の刑に処せられた者
  • ④ 他の外国人に不正に上陸許可等を受けさせる目的での、偽変造文書の作成等を教唆、幇助する行為をした者
  • ⑥ 資格外活動の罪により禁固以上の刑に処せられた者
  • ⑦ 犯罪を犯し、一定の処罰を受けた者
  • ⑧ 不法入国または不法上陸をあおり、そそのかし、または助けた者
  • ⑨ 法務大臣が日本国の利益または公安を害する行為を行なったと認定する者その他

2.入管法上適法に就労できる外国人

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在留資格の一覧

① 活動範囲に制限のない在留資格の取得者

在留資格のうち、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」及び「定住者」を取得している者は、日本国内での活動範囲に制限はありません。当然、働く職種・分野についても制限がありません。
外国人労働者として在留資格を取得できる主なケースは、次の人達です。

(1)日系二世・三世
ブラジルなど外国で生活している日系二世(日本人の子)と三世(日本人の孫)とこれらの配偶者は、「定住者」の在留資格を取得することができます。

(2)難民
日本国に上陸した外国人のうち、人種・宗教・政治的意見などを理由に、本国に戻ると迫害を受ける恐れのある者については、入管法により「難民」として認定され、「定住者」の在留資格が付与されます。
ただし、外国人が船に乗り日本に来ても、出稼ぎなどが真の目的で前述の要件に該当しない場合は、「難民」と認定されず本国に送り返されます。

(3)日本人の配偶者等である外国人
日本人と結婚した外国人、その夫婦の子供として生まれた者、または日本人の民法上の特別養子となった者は、「日本人の配偶者等」の在留資格を取得して入国できます。

② 就労を目的とする在留資格の取得者

「外交」「公用」「教授」「芸術」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興業」「技能」「特定技能」及び「技能実習」の分野で就労することを希望する外国人は、在留資格を取得することで就労が認められます。

③ 就労を目的とする在留資格への変更を許可された者

在留資格「留学」により大学生として在留している外国人留学生が、大学卒業前にあらかじめ、就労を目的とする在留資格(「外交」から「技能」まで)について「在留資格変更の許可」を得れば、卒業後、日本国内の企業等へ就職することができます。
また、例えば、「医療」の在留資格取得者が「教授」の在留資格への変更を許可されれば、その後、医師から大学教授として入管法上適法に就労することができます。
ただし、「短期在留」の在留資格所持者の変更許可申請については、やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可されません。
また、在留資格の変更を許可された外国人が就労できる範囲は、新たに取得した在留資格で認められている活動範囲です。

④ アルバイト

昼間の大学、短大、専修学校の専門課程、高等専門学校各種学校、高等学校等に留学している外国人が取得している在留資格は「留学」です。
これらの留学生は、本人が地方入国管理局に資格外活動(いわゆるアルバイト)の許可申請をし、認められれば、その範囲内で適法にアルバイトに従事できます。許可されると、本人の所持している「在留カード」にそのことが記載されます。
許可の基準は次のとおりです。

  • ① 1日の就労時間は、おおむね4時間以内とする(日曜日、休日も同じ)。ただし、長期休暇(夏休みなど)の期間中については、1日8時間まで認める。
  • ② 従事する仕事の内容は、留学生の身分にふさわしいものに限る(風俗営業、危険有害業務、深夜労働などについては許可されません)。バーやスナックでの接客、麻雀店、パチンコ店、ゲームセンターの労働や風俗営業に該当する。
  • ③ 上記①以外のアルバイトをすることを希望する場合は、個別に本来の学業に支障がないか否かを審査して、許可、不許可を決定する。
  • ④ 雇用形態は、常用雇用、臨時雇用などのいずれであってもさしつかえない。

企業等が外国人留学生をアルバイターとして雇い入れるときは、在留カードを確認して、「資格外活動許可」を得て入管法に関して適法に就労できる者であることを確認していください。

⑤ 外国人労働者の副業

「教授」から「技能」まで及び「家族滞在」の在留資格の者が、地方入国管理局からとくに許可されて副業を行う場合(資格外収入活動)も適法です。この場合は、留学生のアルバイトのように許可基準は定められておらず、ケースバイケースで判断されますが、単純労働は認められません。
なお、業として行うものではない講演に対する課金、日常活動に伴う臨時の報酬を受ける活動などについては、許可を得る必要はありません。

⑥ ワーキングホリデー制度による就労

「特定活動」の在留資格を取得している者のうち、ワーキングホリデー制度により働く青年も適法です。
これは、日本国と相手国との協定により、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ等の青年(18歳以上30歳未満の者)が日本国内で観光しながら働くことを認めているものです。