社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【管理監督者】セントラルスポーツ事件(京都地判平24.4.17労判1058号69頁)

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セントラルスポーツ事件(京都地判平24.4.17労判1058号69頁)

1.事件の概要

Xは、スポーツクラブの運営等を行っているY社で、エリアディレクターとして勤務していた。Y社は、スポーツクラブを運営している地域を25のエリアに分け、各エリアには4から8店舗のスポーツクラブが所属しており、各エリアの長をエリアディレクターと呼んでいた。エリアディレクターの職務は、担当するエリア内におけるスポーツクラブの運営状況の把握、サービスの改善、スタッフの接客の監督、指示、エリア内の従業員の労務管理や人事考課、昇格、異動の起案等とされていた。このようなXが、Y社に対して、時間外手当等を請求したのが本件である。

2.判決の概要

管理監督者とは、労働条件の決定その他管理監督につき経営者と一体的な立場にあるものをいい、名称にとらわれず、実体(ママ)に即して判断すべきである。具体的には、①職務内容が少なくとも、ある部門全体の統括的な立場にあること、②部下に対する労務管理等の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、部下に対する人事考課、機密事項に接していること、③管理職手当等特別手当が支給され、待遇において時間外手当が支給されないことを十分に補っていること、④自己の出退勤について自ら決定し得る権限があること、以上の要件を満たすことを要すると解すべきである。Xの権限をみれば、①職制上の地位、及び、エリアを統括する上での人事権、人事考課、労務管理、予算管理など必要な権限を実際に有していることが認められ、Xは、エリアを統括する地位にあったことが認められる。また、②エリアディレクターは、従業員の出退勤を管理して、サービス残業の有無や従業員の健康等を管理し、指導する地位にあったものであり、部下に対する労務管理を担当していたことが認められ、・・・(中略)人事採用、人事考課、昇格について、相当程度の関与が認められ、以上によれば、Xにおいて、労務管理、人事、人事考課等の機密事項に一定程度接しており、また、予算を含めこれらの事項について一定の裁量を有していることが認められる。さらに、③Xの賃金は、(管理監督者ではない)副店長が月100時間の法定外残業を行った場合はエリアディレクターの月額基本給と大差がないことになるが、月100時間の法定外残業が継続するとは考えにくく、エリアディレクターは、副店長に比べると、高額な賃金を受け取っているといえ、エリアディレクターは管理監督者に対する待遇として十分な待遇を受けているといえる。そして、④Xは、従業員の労務管理のために、自己の労働時間を含め担当エリアにおけるすべての従業員の労働時間を承認・修正することができる権限を有しているうえ、業務時間中に自由に接骨院に通院するなど、出退勤の時間を拘束されていたものとは認められず、・・・(中略)自己の裁量で自由に出勤勤務していたものと認められる。したがって、Xは管理監督者に当たるというべきである。


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