社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【管理監督者】静岡銀行事件(静岡地判昭和53.3.28労判297号39頁)

バナー
Kindle版 職場の出産・育児関係手続ガイドブック~令和の常識~
定価:800円で好評発売中!!


にほんブログ村
続き

静岡銀行事件(静岡地判昭和53.3.28労判297号39頁)

参照法条 : 労働基準法32条,37条,41条2号,114条
裁判年月日 : 1978年3月28日
裁判所名 : 静岡地
裁判形式 : 判決
事件番号 : 昭和50年 (ワ) 234、昭和50年 (ワ) 308 

1.事件の概要

Xは、Y銀行の支店長代理として勤務していた。Y銀行では、支店長代理は「管理監督の地位にある者」であるとして、時間外手当の支給対象としてはいなかったが、昭和49年6月給与規定の改正してXを含む支店長代理に対して時間外手当を支給することとした。この給与規定の改正に際して、XがY銀行に対して過去の時間外手当等を請求したのが本件である。

2.判決の概要

労働基準法は労働時間・休憩・休日に関する労働条件の最低基準を規定しているが、このような規制の枠を超えて活動することが要請されている職務と責任を有する「管理監督の地位にある者」については、企業経営上の必要との調整を図るために、労働時間・休憩・休日に関する労働基準法の規定の適用が除外されるのであり、このような同法の立法趣旨に鑑みれば、同法第41条第2号の管理監督者とは、経営方針の決定に参画し或いは労務管理上の指揮権限を有する等、その実態からみて経営者と一体的な立場にあり、出勤退勤について厳格な規制を受けず、自己の勤務時間について自由裁量権を有する者と解するのが相当である。
Xは、昭和46年11月融資管理部調査役補(支店長代理相当)に昇格し、(中略)現在に至るまで、ほぼ一貫して本部で担保管理の仕事に携っていること、調査役補(支店長代理相当)に昇格した昭和46年11月以降も、毎朝出勤すると出勤簿に押印し、(中略)欠勤遅刻・早退をするには、事前或いは事後に書面をもって上司に届出なければならず、正当な事由のない遅刻・早退については、人事考課に反映され場合によっては懲戒処分の対象ともされる等、通常の就業時間に拘束されて出退勤の自由がなく、自らの労働時間を自分の意のままに行いうる状態など全く存しないこと、Xは、昭和46年11月以降現在に至るまで、部下の人事及びその考課の仕事には関与しておらず、銀行の機密事項に関与した機会は一度もなく、担保管理業務の具体的な内容について上司の手足となって部下を指導・育成してきたに過ぎず、経営者と一体となって銀行経営を左右するような仕事には全く携わっていないこと、(中略)右事実によれば、原告は、昭和46年11月以降現在に至るまで、出退勤について厳格な規制を受け、自己の勤務時間について自由裁量権を全く有せず、経営者と一体的な立場にある者とは到底解せられないので、原告が労働基準法第41条第2号の管理監督者に当たらないことは明らかである。



実務家のための労働判例の読み方・使い方 (労判Selection) [ 八代徹也 ]

価格:1,512円
(2019/5/29 21:58時点)
感想(0件)