高知県観光事件(最判平6.6.13労判653号12頁)
事件番号:平成3(オ)63
裁判年月日:平成6年6月13日
法廷名:最高裁判所第二小法廷
裁判種別:判決
1.事件の概要
Xらは、Y社でタクシー運転手として勤務していた。Xらの勤務体制は、隔日勤務で、労働時間は午前8時から翌日午前2時(休憩2時間)で、賃金は月間の水揚高に一定の歩合を乗じて決定された額が支給されるだけで、時間外労働および深夜労働についての割増賃金は一切支払われていなかった。
Xらが、Y社に対して、午前2時以降の時間外労働及び午後10時から翌日5時までの深夜労働に対する割増賃金を請求したのが本件である。
2.判決の概要
本件請求期間にXらに支給された歩合給の額が、Xらが時間外及び深夜の労働を行った場合においても増額されるものではなく、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないものであったことからして、この歩合給の支給によって、Xらに対して労働基準法37条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることは困難なものというべきであり、Y社は、Xらに対し、本件請求期間におけるXらの時間外及び深夜の労働について、労働基準法37条及び労働基準法施行規則19条1項6号の規定に従って計算した額の割増賃金を支払う義務があることになる。
3.解説
本件は、固定残業代の有効性について最高裁が判事した初めての事件である。固定残業代の有効性が認められるためには、通常の労働時間の賃金にあたる部分と時間外および深夜の割増賃金にあたる部分とを明確に判別できることが要件となるとの見解が示された。なお、本判決を踏襲した判例として、テックジャパン事件(最判平24.3.8労判1060号5頁)がある。
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