社会保険労務士川口正倫のブログ

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労働安全衛生法についての重要な通達

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労働安全衛生法についての重要な通達~社労士試験に出るかも

(目的)
労働安全衛生法第1条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

労働基準法第42条 労働者の安全及び衛生に関しては、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)の定めるところによる。

労働基準法との関係(昭和47年発基91号)
労働安全衛生法は、形式的には労働基準法から分離独立したものとなっているが、安全衛生に関する事項は労働者の労働条件の重要な一端を占めるものであり、労働安全衛生法1条、労働基準法42条等の規定により、労働安全衛生法と労働条件についての一般法である労働基準法は一体としての関係に立つものである。

労働安全衛生法第10条第2項 総括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者をもつて充てなければならない。

その事業の実施を統括管理する者(昭和47年基発602号)
「その事業の実施を統括管理する者」とは、工場長、作業所長等名称の如何を問わず、当該事業場における事業の実施について、実質的に統括管理する権限及び責任を有する者をいう。

統括管理とは(昭和47年基発602号)
「統括管理」とは、業務が適切かつ円滑に実施されるよう所要の措置を講じ、かつ、その実施状況を監督する等当該業務について責任をもって取りまとめることをいう。*1

(衛生管理者)
労働安全衛生法第12条第1項 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

労働安全衛生法第10条第1項 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
四 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
五 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの

衛生に係る技術的事項とは(昭和47年基発602号)
必ずしも衛生に関する専門的技術的事項に限るものではなく、総括安全衛生管理者が総括管理すべき労働安全衛生法10条1項(総括安全管理者の業務)の業務のうち、衛生に関する具体的事項をいう。また、労働者の負傷、それによる死亡、欠勤及び異動に関する統計の作成も含まれる。*2

労働安全衛生法第59条第3項 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
*3

(雇入れ時等の教育)
労働安全衛生法施行規則第35条第1項 事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。ただし、令第二条第三号に掲げる業種の事業場の労働者については、第一号から第四号までの事項についての教育を省略することができる。
一 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
二 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
三 作業手順に関すること。
四 作業開始時の点検に関すること。
五 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
六 整理、整頓とん 及び清潔の保持に関すること。
七 事故時等における応急措置及び退避に関すること。
八 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項
*4

安全衛生教育の実施(昭和47年基発602号)
所定労働時間に行うことを原則とする。

安全衛生教育の実施時間の取扱い(昭和47年基発602号)
安全衛生教育の実施に要する時間は労働時間と解され、法定労働時間外に行われた場合には、割増賃金が支払われなければならない。

企業外での特別の教育・職長教育の費用負担(昭和47年基発602号)
労働安全衛生法に基づく特別の教育や職長教育を企業外で行う場合には、講習会費、旅費等についても事業者が負担すべきものである。

(健康診断)
労働安全衛生法第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

健康診断の費用の負担(昭和47年基発602号)
労働安全衛生法の規定により実施される健康診断の費用については、労働安全衛生法で事業者に実施の義務を課している以上、事業者が当然負担すべきものである。

健康診断受診に要した時間の賃金(昭和47年基発602号)
・一般健康診断:当然には、事業者の負担するものではないが、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい。
・特殊健康診断:事業の遂行上当然実施しなければならないものであるので、所定労働時間内に実施することを原則とする。所定労働時間外に行われた場合には、割増賃金を支払わなければならない。

いわゆるパートタイム労働者について(平成19年基発1001016号)
いわゆるパートタイム労働者であっても、次の2つの要件を満たす労働者に対しては、一般健康診断を実施しなければならない。
① 期間の定めのない労働契約により使用される者であること(期間の定めのある労働契約により使用される者のうち、契約期間が1年以上(特定業務従事者の場合には6か月)である者、契約更新により1年以上使用されることが予定されている者、1年以上引き続き使用されている者を含む。)。
② 1週間の労働時間数(所定労働時間)がその事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること(所定労働時間数が通常の労働者の4分の3未満であっても概ね2分の1以上であれば一般健康診断を実施することが望ましいものとされている。)。

(安全衛生改善計画)
労働安全衛生法第79条第1項 都道府県労働局長は、事業場の施設その他の事項について、労働災害の防止を図るため総合的な改善措置を講ずる必要があると認めるとき(前条第一項の規定により厚生労働大臣が同項の厚生労働省令で定める場合に該当すると認めるときを除く。)は、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、当該事業場の安全又は衛生に関する改善計画(以下「安全衛生改善計画」という。)を作成すべきことを指示することができる。
*5

総合的な改善措置(昭和47年基発602号)
総合的な改善措置とは、労働災害防止を図るための設備、管理、教育面等全般にわたる改善措置をいう。必ずしも事業場全体に係るものである必要はなく、事業場の一部門に限った改善措置で差し支えない。

都道府県労働局長による指示(昭和47年基発91号)
都道府県労働局長が、事業者に対し、安全衛生改善計画を作成すべき旨の指示をすることができるのは、労働安全衛生法又はこれに基づく命令の規定に違反すると認める場合のみに限られるのではなく、当該改善措置を講ずる必要があると認められる場合であっても行うことができる。



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*1:「統括管理するものに準ずるもの」では選任基準を満たさない。あくまで、「統括管理するもの」である必要がある。ただし、安全管理者や衛生管理者のような実務経験や資格、専門的知識は不要。

*2:衛生管理者は業種を問わず常時50人以上の労働者を使用する事業場の事業者に選任義務が課せられている。

*3:事業者は、特別教育を行ったときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを3年間保存しておかなければならない。

*4:雇入れ時の安全衛生教育は、対象となる労働者を常時使用する労働者に限定しているわけではない。

*5:安全衛生改善計画は、特別安全衛生改善計画の対象とならない事業者を対象とするもの。また、特別安全衛生改善計画とは異なり、作成を指示するのは「都道府県労働局長」であり、変更の指示、勧告・公表の規定はない。またこの規定は遵守規定であり、罰則の規定は設けられていない。