電電公社帯広局事件(最一小判昭和61.3.13労判470号6頁)
1.事件の概要
XはY社に電話交換手として採用され(交換業務)、従事していたところ脛肩腕症候群に罹患したとの診断を受けて休職後職場復帰し軽易な机上作業に就労していた。Y社は3年以上治癒しない長期患者を対象に総合精密検診を実施する労働協約を組合との間で締結した。
また就業規則と健康管理規定では、要管理者は健康管理従事者等の指示に従い、健康の回復につとめなければならない、とあった。またY社はA病院を設置していた。Y社はXに対しA病院での受診を受けるよう業務命令を出したがXは「A病院は信頼できない」とこれを拒否した。このことと職場離脱を理由として懲戒戒告処分を行った。Xはこれの無効確認を求めて提訴したところ、釧路地帯広支判昭和57.3.24労判385号41頁、札幌高判昭和58.8.25労判415号39頁は受診義務がないとしてXの請求を認めたのでY社が上告したのが本件である。
2.判決の概要
就業規則及び健康管理規程の規定に照らすと、要管理者(X)が労働契約上負担していると認められる前記精密検診の受診義務は、具体的な治療の方法についてまでY社の健康管理従事者の指示に従うべき義務を課するものではないことは明らかであるのみならず、要管理者が別途自ら選択した医師によって診療を受けることを制限するものでもないから、健康管理従事者の指示する精密検診の内容・方法に合理性ないし相当性が認められる以上、要管理者に右指示に従う義務があることを肯定したとしても要管理者が本来個人として診療を受けることの自由及び医師選択の自由を侵害することとはならないというべきである。
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