社会保険労務士川口正倫のブログ

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【健診拒否】愛知県教育委員会事件(最一小判平成13.4.26労判804号15頁)

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愛知県教育委員会事件(最一小判平成13.4.26労判804号15頁)

参照法条 : 労働安全衛生法66条5項、結核予防法7条1項、地方公務員法29条1項、学校保健法8条1項
裁判年月日 : 2001年4月26日
裁判所名 : 最高一小
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成9年 (行ツ) 229

1.事件の概要

公立中学校教諭であるXは、昭和58年5月、定期健康診断における胸部エックス線検査につき放射線暴露の危険性を理由として受診せず、その後の2回の未検査者検査の検診を命じた校長の職務命令を拒否した。また昭和58年11月28日、勤務条件に関する措置要求のため校長の不許可にもかかわらず職場離脱したことが地方公務員法29条(懲戒)1項1号(法律等違反)、2号(職務上の義務違反)に当たるとして、昭和59年2月1日、Y教育委員会から3か月間、減給処分を受けた。Xは、不服申立てが却下されたので、取消請求をした。第一審判決は減給処分を取り消したが、原審はそれを取り消したためXが上告したのが本件である。

2.判決の概要

市町村立中学校の設置者である市町村は、学校保健法8条1項により、毎学期に、学校の職員の健康診断を行わなければならず、当該健康診断においては、結核の有無をエックス線間接撮影の方法により検査するものとされている。また、当該市町村は、・・・(中略)職員に対し、毎年度、少なくとも1回、エックス線間接撮影の方法による健康診断を行わなければならないものとされ、・・・(中略)他方、市町村立中学校の教諭その他の職員は、労働安全衛生法66条5項により、当該市町村が行う定期の健康診断を受けなければならない義務を負っているとともに、・・・(中略)結核の有無に関するエックス線検査については、結核予防法7条1項によっても、これを受診する義務を負うものである。ところで、学校保健法による教職員に対する定期の健康診断、中でも結核の有無に関する検査は、教職員の保健及び能率増進のためはもとより、教職員の健康が、保健上及び教育上、児童、生徒等に対し大きな影響を与えることにかんがみて実施すべきものとされている。また、結核予防法は、結核が個人的にも社会的にも害を及ぼすことを防止し、もって公共の福祉を増進することを目的とするものであり、同法による教職員に対する定期の健康診断も、教職員個人の保護に加えて、結核が社会的にも害を及ぼすものであるため、学校における集団を防衛する見地から、これを行うべきものとされているものである。
これらによると、市町村立中学校の教諭その他職員は、その職務を遂行するに当たって、労働安全衛生法66条5項、結核予防法7条1項の規定に従うべきであり、職務上の上司である当該中学校の校長は、当該中学校に所属する教諭その他職員に対し、職務上の命令として、結核の有無に関するエックス線検査を受診することを命ずることができるものと解するべきである。




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