社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【ハラスメント】中央観光バス事件(大阪地判昭和55.3.26労判339号27頁)

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中央観光バス事件(大阪地判昭和55.3.26労判339号27頁)

参照法条 : 労働基準法84条2項、労働者災害補償保険法14条
裁判年月日 : 1983年4月19日
裁判所名 : 最高三小
裁判形式 : 判決
事件番号 : 昭和55年 (オ) 82 

1.事件の概要

XらはY社にバスの運転手として勤務し、少数組合に属していたが、Y社の労働基準法及び道路交通法等の違反を労働基準監督署及び警察に申告し、その結果Y社は改善勧告、営業停止及び書類送検された。Xらに対し、Y社は他の従業員に「会社としてXらにできる嫌がらせ、排除行為などは全てやった。後は従業員の皆さんでやってほしい。」と述べ、「職場を守る同志一同」の名で、Xらの退職を求め、これに応じない場合にはXらと一切の交際を絶ち仲間外れににし、さらにXらの乗務するバスには一切の同条を拒否する旨の誓約書を作成させ、Xらに同趣旨の勧告書をもって退職の勧奨を行った。
これに対して、XらはY社に対して不法行為に基づく損害賠償等を請求した。

2.判決の概要

本件勧告書は、XらにY社から退職することを求め、これに応じなければXらと同乗・同行勤務することを拒むという、いわゆる共同絶交を宣言するものであるということができるところ、右共同絶交は、職場という限られた社会生活の場において行われるものであるとはいえ、右職場はXらにとって日常生活の重要な基盤を構成する場であり、それが実行されると、Xらはその意に反して右職場から離脱せざるを得ないこととなるであろうことが容易に推測され得るものである。従って、右勧告書が作成され、Xらに対し交付されたことは、XらにY社を退職することを強要し、退職しない限りXらの自由及び名誉を侵害することとなる旨告知した違法な行為というほかない。

3.解説

職場での退職目的の共同絶交の不法行為性が争われた事件。退職勧告書の作成と交付が労働者に退職を強要し、退職しない限り労働者の自由および名誉を侵害することを告知するものであり、会社に慰謝料の支払いを命じた。会社の考え方と異なった考えを持つ従業員を企業外に排除するという企業風土が当時は一般的であったが(現在でもありそうだが・・・)、不当労働行為における原状回復だけでなく少数組合の組合員の人格的利益の保護を図り、労働関係において労働者の人格権の法的保護が重要なものと認識された判例

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