社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【性差別】昭和シェル石油事件(東京高判平成19.6.28労判946号76頁)

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昭和シェル石油事件(東京高判平成19.6.28労判946号76頁)

参照法条 : 日本国憲法14条、労働基準法4条、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律8条、民法709条、民法724条
裁判年月日 : 2007年6月28日
裁判所名 : 東京高
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成15(ネ)2100、平成18(ネ)4794

1.事件の概要

Y社に雇用されていた女性労働者Xが、同年齢同学歴ないし数年若い男性労働者と比較して職能資格級、定期昇給額などにおいて著しい格差があることは性差別に当たるとして、差額賃金相当分の損害賠償を請求した。

2.判決の概要

職能資格等級の格付けは・・・(中略)均等法8条所定の労働者の昇進についての取扱いに当たると解するのが相当であるところ、均等法8条が・・・(中略)努力義務を定めているのは、まさに事業者に努力する義務を法律上課しているのであって、・・・(中略)単なる訓示規定ではなく、実効性のある規定であることは均等法自体が予定しているのであり、法の定めた目標を達成するための努力をなんら行わず、均等な取扱いが行われていない実態を積極的に維持すること、あるいは、配置及び昇進について男女性別を更に拡大するような措置をとることは、同条の趣旨に反するものであり、Xが主張する不法行為の成否についての違法性判断の基準とすべき雇用関係についての私法秩序に・・・(中略)同条の趣旨も含まれる。本件取扱いは、まさしく、労働者の昇進について、女子労働者に対して男子労働者と均等な取扱いをしないことを積極的に維持していたということができるから、不法行為を構成するものと解するのが相当である。

3.解説

配置及び昇進について、旧均等法は男女均等取扱いの努力義務を定めていたが、これについて法の定めた目標を達成するための努力を何ら行わず、均等な取扱いが行われていない実態を積極的に維持する場合には、不法行為成否の判断の要素となるとの見解が示された判決。

男女雇用機会均等法8条 事業主は、労働者の配置および昇進について、女子労働者に対して男子労働者と均等な取扱いをするよう努めなければならない。

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