社会保険労務士川口正倫のブログ

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【性差別】野村證券事件(東京地判平成14.2.20労判822号13頁)

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野村證券事件(東京地判平成14.2.20労判822号13頁)

参照法条 : 労働基準法4条、労働基準法13条、男女雇用機会均等法6条、民法90条、労働基準法3条
裁判年月日 : 2002年2月20日
裁判所名 : 東京地
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成5年 (ワ) 24224、平成10年 (ワ) 12628

1.事件の概要

性労働者であるXらは、同期同学歴の男性社員が入社後13年次には課長代理に昇格したにもかかわらず、Xらが課長代理に昇格していないのは性差別によるものであるとして、総合職掌「指導職一級」の職位にあることの地位確認および賃金差額等の損害賠償を求めて提訴した。

2.判決の概要

社員の募集、採用に関する条件は、労働基準法3条の定める労働条件ではなく、また、・・・(中略)男女のコース別の採用、処遇が労働基準法4条に直接違反するともいえないこと、Xらの入社当時、募集、採用、配置、昇進についての男女の差別的取扱いをしないことを使用者の努力義務とする旧均等法のような法律も無かったこと、企業には労働者の採用について広範な採用の自由があることからすれば、会社が、原告らの入社当時、社員の募集、採用について男女に均等の機会を与えなかったからといって、それが直ちに不合理であるとはいえず、公序に反するものとまではいえない。しかし、平成9年に均等法が制定され、平成11年4月1日から施行されているところ、同法が定めた男女の差別的取扱い禁止は使用者の法的義務であるから、この時点以降において、会社が、それ以前に会社に入社した社員について、男女のコース別の処遇を維持し、男性を総合職掌に位置づけ、女性のほとんどを一般職掌に位置づけていることは、配置及び昇進について、女性であることを理由として、男性と差別的取扱いをするものであり、均等法6条に違反するとともに、公序に反し違法であるから、Xらについて、均等法施行後もなおそれまでの男女の性の別によるコース別の処遇を維持することは、均等法施行以後においては、違法、無効となったものというべきである。

3.解説

下級審ながら、男女雇用機会均等法が施行後も性別を理由にコース別の処遇を維持することは、違法、無効となるとの見解を示した判例

(均等待遇)
労働基準法3条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

(男女同一賃金の原則)
労働基準法4条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

男女雇用機会均等法第6条 事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。
一 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練
二 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの
三 労働者の職種及び雇用形態の変更
四 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新


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