社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



育児休業における「子」とは(平28.8.2職発0802第1号、雇児発0802第3号、平成29.9.29雇均発0929第3号)

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育児休業における「子」とは(平28.8.2職発0802第1号、雇児発0802第3号、平成29.9.29雇均発0929第3号)~実子・養子だけではありません

「子」とは、
① 労働者と法律上の親子関係がある子(養子を含むものであること。)
② 特別養子縁組を成立させるために養親となる者が養子となる者を6か月以上の期間現実に監護しているときの当該期間(以下「監護期間」という。)にある者
③ 特別養子縁組により養親となろうとする者又は養子縁組里親に準ずる者として厚生労働省令で定める者に厚生労働省令で定めるところにより委託されている者
をいうこと。
なお、育児休業期間中に養子縁組が成立した場合には、法律上の子となるため、引続き育児休業をすることが可能であること。
また、子の看護休暇、育児をする労働者についての所定労働時間の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、育児のための短時間勤務措置等についても同様であるが、介護休業、介護休暇等介護に関する制度については、①のみをいうものであること。

(イ) 特別養子縁組とは、原則として6歳未満の未成年者の福祉のため特に必要であるときに、未成年者とその実親側との法律上の親族関係を消滅させ、実親子関係に準じる安定した養親子関係を家庭裁判所が成立させる縁組制度であること(民法第4編第3章5款)。裁判所が特別養子縁組を成立させるためには、養親となる者が養子となる者を6か月以上の期間監護した状況を考慮しなければならないものとされており(民法第817条の8第2項)、この期間について育児休業を認めるものであること。監護期間は、原則として家庭裁判所特別養子縁組の成立の請求をした日から起算するものであること(同条第2項)。特別養子縁組の成立の請求が裁判所に係属するまで*1は、育児休業の対象とならないものであること。

(ロ) 養子縁組里親*2とは、保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童(以下「要保護児童」をいう。)を養育すること及び養子縁組によって養親となることを希望する者(都道府県知事が厚生労働省令で定めるところにより行う研修を修了した者に限る。)のうち、児童福祉法第34の19に規定する養子縁組里親名簿に登録されたもののことをいうこと。委託措置が決定される間の一時的な預かりなどの期間は育児休業の期間の対象とならないものであること。

(ハ) 特別養子縁組により養親となろうとする者及び養子縁組里親に準ずる者として厚生労働省令で定める者に厚生労働省令で定めるところにより委託されている者とは、児童相談所において、当該労働者に養子縁組里親として委託すべきである要保護児童として手続を進めていたにもかかわらず、委託措置決定を出す段階に至って実親等の親権者等が反対したため、養子縁組里親として委託することができず、やむなく当該労働者を養育里親*3として委託されている要保護児童をいうこと(育児介護休業法施行規則第1条)。これに該当するかは、平成28年雇児総発0802第1号・雇児福発0802第1号・雇児職発0802第1号に基づき児童相談所が発行する証明書を参考に判断すべきこと。

(監護の状況)
民法第817条の8
1.特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を六箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。
2.前項の期間は、第817条の2に規定する請求の時から起算する。ただし、その請求前の監護の状況が明らかであるときは、この限りでない。

特別養子縁組の成立)
第817条の2
1.家庭裁判所は、次条から第817条の7までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
2.前項に規定する請求をするには、第794条又は第798条の許可を得ることを要しない。

児童福祉法第34条の19 都道府県知事は、第二十七条第一項第三号の規定により児童を委託するため、厚生労働省令で定めるところにより、養育里親名簿及び養子縁組里親名簿を作成しておかなければならない。

*1:請求が受理されて審査が開始されるまでは。「係属する」とは「審査中である」「訴訟中である」という意味。

*2:養子縁組前提の里親のことで、保護者のない子どもや家庭での養育が困難で実親が親権を放棄する意思が明確な場合の養子縁組を前提とした里親。児童が6歳未満の場合は特別養子縁組制度により、裁判所の審判により、実子扱いでの入籍が可能となる(民法817条の2)。審判は、特別養子縁組を届けた後、6か月間同居しての様子を見たうえで決定されるようになっている。

*3:養子縁組を目的とせずに、要保護児童を預かって養育する里親。基本的には、実親の元で暮らすことができるようになるまでとなり、期間はまちまちで、長い場合は成人になるまで委託を続けるケースもある。数週間や 1 年以内など短期間委託するなど、ニーズに応じた多様な里親委託ができ、施設で育つ子どもたちにとっては、社会に出る前に一般家庭での生活を経験することはとても重要な機会となる。