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『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』(パートタイム有期雇用労働法)の逐条解説④-第4章

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同一労働同一賃金について定めた『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』(パートタイム有期雇用労働法)をくわしく説明します

第1章
『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』の逐条解説①-第1章
第2章
『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』の逐条解説②-第2章
第3章
『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』の逐条解説③-第3章

偉そうに断定的な表現で記載していますが「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について(H31.1.30基発0130第1号・H31.1.30職発0130第6号・H31.1.30雇均発0130第1号・H31.1.30開発0130第1号)」という通達を読みやすくアレンジしただけです。

第4章 紛争の解決(第4章)

第4章は、紛争を解決するための仕組みとして第1節において苦情の自主的解決、都道府県労働局長による紛争の解決の援助について、第2節において調停制度について定めています。

4.1 苦情の自主的解決(第22条)

(苦情の自主的解決)
第二十二条 事業主は、第六条第一項、第八条、第九条、第十一条第一項及び第十二条から第十四条までに定める事項に関し、短時間・有期雇用労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関(事業主を代表する者及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処理するための機関をいう。)に対し当該苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を図るように努めるものとする。

(1)第22条の趣旨
企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使間で自主的に解決することが望ましいことから、事業主は、第6条第1項、第8条、第9条、第11条第1項及び第12条から第14条までに定める事項に関し、短時間・有期雇用労働者から苦情の申出を受けたときは、労使により構成される苦情処理機関に苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を図るよう努めなければならないとされたものです。
なお、この他の事項に関する苦情についても自主的解決が望ましいことについては、企業内における労使の自主的な取組を促進する観点から、自主的なの促進のための措置の実施に係る規定を設けたものです。

(2)苦情処理機関
苦情処理機関」とは、事業主を代表する者及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処理するための機関等をいいます。これは、労働者の苦情については、まずはこのような苦情処理機関における処理に委ねることが最も適切な苦情の解決方法の一つであることから、例示されたものです。

(3)苦情の処理を委ねる等
「苦情の処理を委ねる等」の「等」には、第16条に基づく相談のための体制の活用や短時間・有期雇用管理者が選任されている事業所においてはこれを活用する等労働者の苦情を解決するために有効であると考えられる措置が含まれています。

(4)苦情の自主的解決の仕組みの周知
苦情処理機関等事業所内における苦情の自主的解決のための仕組みについては、短時間・有期雇用労働者に対し、周知を図る必要があります。

(5)自主的解決と調停
パート有期法では、短時間・有期雇用労働者と事業主との間の個別紛争の解決を図るため、本条のほか、第24条第1項において都道府県労働局長による紛争解決の援助を定め、また、第25条第1項においては紛争調整委員会(以下「委員会」という。)による調停を定めていますが、これらはそれぞれ紛争の解決のための独立した手段であり、本条による自主的解決の努力は、都道府県労働局長の紛争解決の援助や委員会による調停の開始の要件とされているものではありません。しかしながら、企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使で自主的に解決することが望ましいことに鑑み、まず本条に基づき企業内において自主的解決の努力を行うことが求められています。

4.2 紛争の解決の促進に関する特例(第23条)

(紛争の解決の促進に関する特例)
第二十三条 前条の事項についての短時間・有期雇用労働者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成十三年法律第百十二号)第四条、第五条及び第十二条から第十九条までの規定は適用せず、次条から第二十七条までに定めるところによる。

(1)第23条の趣旨
第6条第1項、第8条、第9条、第11条第1項及び第12条から第14条までに定める事項に係る事業主の一定の措置についての短時間・有期雇用労働者と事業主との間の紛争(以下「短時間・有期雇用労働者の均衡待遇等に係る紛争」という。)については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(以下「個別労働関係紛争解決促進法」という。)第4条、第5条及び第12条から第19条までの規定は適用せず、本法第24条から第27条までの規定によるものとされています。
 これは、個別労働関係紛争解決促進法に係る紛争は、解雇等労使間の個別の事情に関わるものが多いことから、あっせん委員が労使の間に入って、その話し合いを促進するあっせんの手法が効果的であるのに対し、短時間・有期雇用労働者の均衡待遇等に係る紛争は、当該事業所における賃金制度等に由来するものであり、継続的な勤務関係にある中で、不合理な待遇の相違、差別的取扱い等かどうかの認定を行った上で必要な制度の見直し案等の調停案を示し、受諾の勧告を行うことが有効であるという、両者の紛争の性格が異なるためです。

(2)紛争
短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置に係る事業主の一定の措置に関して労働者と事業主との間で主張が一致せず、対立している状態をいいます。

4.3 紛争の解決の援助(第24条)

(紛争の解決の援助)
第二十四条 都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。
2 事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の援助を求めたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

4.3.1 紛争の解決の援助(第24条第1項)
短時間・有期雇用労働者の均衡待遇等に係る紛争の迅速かつ円満な解決を図るため、都道府県労働局長は、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決について援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対して、必要な助言、指導又は勧告をすることができることとされています。

(1)紛争当事者
「紛争の当事者」とは、現に紛争の状態にある短時間・有期雇用労働者及び事業主をいいます。したがって、労働組合等の第三者は関係当事者にはなり得ないことに注意が必要です。

(2)助言、指導又は勧告
「助言、指導又は勧告」は、紛争の解決を図るため、当該紛争の当事者に対して具体的な解決策を提示し、これを自発的に受け入れることを促す手段として定められたものであり、紛争の当事者にこれに従うことを強制するものではありません。

4.3.2 紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(第24条第2項)

(1)第24条第2項の趣旨
第24条第1項の紛争の解決の援助により、紛争の当事者間に生じた個別具体的な紛争を円滑に解決することの重要性に鑑みれば、事業主に比べ弱い立場にある短時間・有期雇用労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、短時間・有期雇用労働者が紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いが禁止されたものです。

(2)その他
「理由として」及び「不利益な取扱い」の意義については、それぞれ3.10(12)と同じです。

4.4 調停の委任(第25条)

(調停の委任)
第二十五条 都道府県労働局長は、第二十三条に規定する紛争について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第六条第一項の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする。
2 前条第二項の規定は、短時間・有期雇用労働者が前項の申請をした場合について準用する。

4.4.1 調停の委任(第25条第1項)

(1)第25条第1項の趣旨
紛争の当事者(以下「関係当事者」という。)間の紛争について、当事者間の自主的な解決、都道府県労働局長による紛争解決の援助に加え、公正、中立な第三者機関の調停による解決を図るため、短時間・有期雇用労働者の均衡待遇等に係る紛争について、関係当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、都道府県労働局長は、委員会に調停を行わせるものとされたものです。

(2)関係当事者
「関係当事者」とは、現に紛争の状態にある短時間・有期雇用労働者及び事業主をいいます。したがって、労働組合等の第三者は関係当事者にはなり得ないことに注意が必要です。

(3)調停
「調停」とは、紛争の当事者の間に第三者が関与し、当事者の互譲によって紛争の現実的な解決を図ることを基本とするものであり、行為が法律に抵触するか否か等を判定するものではなく、むしろ行為の結果生じた損害の回復等について現実的な解決策を提示して、当事者の歩み寄りにより当該紛争を解決しようとするものです。

(4)調停に付すことが認められない場合
次の要件に該当する事案については、「当該紛争の解決のために必要があると認め」られないものとして、原則として、調停に付すことは適当であるとは認められないものとされています。

① 申請が、当該紛争に係る事業主の措置が行われた日(継続する措置の場合にあってはその終了した日)から1年を経過した紛争に係るものであるとき
② 申請に係る紛争が既に司法的救済又は他の行政的救済に係属しているとき(関係当事者双方に、当該手続よりも調停を優先する意向がある場合を除く。)
③ 集団的な労使紛争に関係したものであるとき

(5)紛争の解決のために必要がある否かの判断
都道府県労働局長が「紛争の解決のために必要がある」か否かを判断するに当たっては、(4)に該当しない場合は、第22条による自主的解決の努力の状況も考慮の上、原則として調停を行う必要があると判断されるものとされています。

4.4.2 調停の申請をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(第25条第2項)

(1)第25条第2項の趣旨
第25条第1項の調停により、関係当事者間に生じた個別具体的な紛争を円滑に解決することの重要性に鑑みれば、事業主に比べ弱い立場にある短時間・有期雇用労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、短時間・有期雇用労働者が調停の申請をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いが禁止されたものです。

(2)その他
「理由として」及び「不利益な取扱い」の意義については、それぞれ3.10(12)と同じです。

4.5 調停(第26条)

(調停)
第二十六条 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)第十九条、第二十条第一項及び第二十一条から第二十六条までの規定は、前条第一項の調停の手続について準用する。この場合において、同法第十九条第一項中「前条第一項」とあるのは「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第二十五条第一項」と、同法第二十条第一項中「関係当事者」とあるのは「関係当事者又は関係当事者と同一の事業所に雇用される労働者その他の参考人」と、同法第二十五条第一項中「第十八条第一項」とあるのは「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第二十五条第一項」と読み替えるものとする。

男女雇用機会均等法
(調停)
第十九条 前条第一項の規定に基づく調停(以下この節において「調停」という。)は、三人の調停委員が行う。
2 調停委員は、委員会の委員のうちから、会長があらかじめ指名する。
第二十条 委員会は、調停のため必要があると認めるときは、関係当事者の出頭を求め、その意見を聴くことができる。
2 委員会は、第十一条第一項及び第十一条の二第一項に定める事項についての労働者と事業主との間の紛争に係る調停のために必要があると認め、かつ、関係当事者の双方の同意があるときは、関係当事者のほか、当該事件に係る職場において性的な言動又は同項に規定する言動を行つたとされる者の出頭を求め、その意見を聴くことができる。
第二十一条 委員会は、関係当事者からの申立てに基づき必要があると認めるときは、当該委員会が置かれる都道府県労働局の管轄区域内の主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者から当該事件につき意見を聴くものとする。
第二十二条 委員会は、調停案を作成し、関係当事者に対しその受諾を勧告することができる。
第二十三条 委員会は、調停に係る紛争について調停による解決の見込みがないと認めるときは、調停を打ち切ることができる。
2 委員会は、前項の規定により調停を打ち切つたときは、その旨を関係当事者に通知しなければならない。
(時効の中断)
第二十四条 前条第一項の規定により調停が打ち切られた場合において、当該調停の申請をした者が同条第二項の通知を受けた日から三十日以内に調停の目的となった請求について訴えを提起したときは、時効の中断に関しては、調停の申請の時に、訴えの提起があつたものとみなす。
(訴訟手続の中止)
第二十五条 第十八条第一項に規定する紛争のうち民事上の紛争であるものについて関係当事者間に訴訟が係属する場合において、次の各号のいずれかに掲げる事由があり、かつ、関係当事者の共同の申立てがあるときは、受訴裁判所は、四月以内の期間を定めて訴訟手続を中止する旨の決定をすることができる。
一 当該紛争について、関係当事者間において調停が実施されていること。
二 前号に規定する場合のほか、関係当事者間に調停によつて当該紛争の解決を図る旨の合意があること。
2 受訴裁判所は、いつでも前項の決定を取り消すことができる。
3 第一項の申立てを却下する決定及び前項の規定により第一項の決定を取り消す決定に対しては、不服を申し立てることができない。
(資料提供の要求等)
第二十六条 委員会は、当該委員会に係属している事件の解決のために必要があると認めるときは、関係行政庁に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができる。
厚生労働省令への委任)
第二十七条 この節に定めるもののほか、調停の手続に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

【短時間・有期雇用労働法施行規則】
(準用)
第九条 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則(昭和六十一年労働省令第二号)第三条から第十二条までの規定は、法第二十五条第一項の調停の手続について準用する。この場合において、同令第三条第一項中「法第十八条第一項」とあるのは「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「短時間労働者法」という。)第二十五条第一項」と、同項並びに同令第四条(見出しを含む。)、第五条(見出しを含む。)及び第八条第一項中「機会均等調停会議」とあるのは「均衡待遇調停会議」と、同令第六条中「法第十八条第一項」とあるのは「短時間労働者法第二十五条第一項」と、「事業場」とあるのは「事業所」と、同令第八条第一項及び第三項中「法第二十条第一項又は第二項」とあるのは「短時間労働者法第二十六条において準用する法第二十条第一項」と、同項中「法第二十条第一項の」とあるのは「短時間労働者法第二十六条において準用する法第二十条第一項の」と、同令第九条中「関係当事者」とあるのは「関係当事者又は関係当事者と同一の事業所に雇用される労働者その他の参考人」と、同令第十条第一項中「第四条第一項及び第二項」とあるのは「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則第九条において準用する第四条第一項及び第二項」と、「第八条」とあるのは「同令第九条において準用する第八条」と、同令第十一条第一項中「法第二十一条」とあるのは「短時間労働者法第二十六条において準用する法第二十一条」と、同令別記様式中「労働者」とあるのは「短時間労働者」と、「事業場」とあるのは「事業所」と読み替えるものとする。

男女雇用機会均等法施行規則】
(主任調停委員)
第三条 紛争調整委員会(以下「委員会」という。)の会長は、調停委員のうちから、法第十八条第一項の規定により委任を受けて同項に規定する紛争についての調停を行うための会議(以下「機会均等調停会議」という。)を主任となつて主宰する調停委員(以下「主任調停委員」という。)を指名する。
2 主任調停委員に事故があるときは、あらかじめその指名する調停委員が、その職務を代理する。
(機会均等調停会議)
第四条 機会均等調停会議は、主任調停委員が招集する。
2 機会均等調停会議は、調停委員二人以上が出席しなければ、開くことができない。
3 機会均等調停会議は、公開しない。
(機会均等調停会議の庶務)
第五条 機会均等調停会議の庶務は、当該都道府県労働局雇用環境・均等部(北海道労働局、東京労働局、神奈川労働局、愛知労働局、大阪労働局、兵庫労働局及び福岡労働局以外の都道府県労働局にあっては、雇用環境・均等室。)において処理する。
(調停の申請)
第六条 法第十八条第一項の調停(以下「調停」という。)の申請をしようとする者は、調停申請書(別記様式)を当該調停に係る紛争の関係当事者(労働者及び事業主をいう。以下同じ。)である労働者に係る事業場の所在地を管轄する都道府県労働局の長に提出しなければならない。
(調停開始の決定)
第七条 都道府県労働局長は、委員会に調停を行わせることとしたときは、遅滞なく、その旨を会長及び主任調停委員に通知するものとする。
2 都道府県労働局長は、委員会に調停を行わせることとしたときは関係当事者の双方に対して、調停を行わせないこととしたときは調停を申請した関係当事者に対して、遅滞なく、その旨を書面によって通知するものとする。
(関係当事者等からの事情聴取等)
第八条 法第二十条第一項又は第二項の規定により委員会から出頭を求められた者は、機会均等調停会議に出頭しなければならない。この場合において、当該出頭を求められた者は、主任調停委員の許可を得て、補佐人を伴って出頭することができる。
2 補佐人は、主任調停委員の許可を得て陳述を行うことができる。
3 法第二十条第一項又は第二項の規定により委員会から出頭を求められた者は、主任調停委員の許可を得て当該事件について意見を述べることができる。この場合において、法第二十条第一項の規定により委員会から出頭を求められた者は、主任調停委員の許可を得て他人に代理させることができる。
4 前項の規定により他人に代理させることについて主任調停委員の許可を得ようとする者は、代理人の氏名、住所及び職業を記載した書面に、代理権授与の事実を証明する書面を添付して、主任調停委員に提出しなければならない。
(文書等の提出)
第九条 委員会は、当該事件の事実の調査のために必要があると認めるときは、関係当事者に対し、当該事件に関係のある文書又は物件の提出を求めることができる。
(調停手続の実施の委任)
第十条 委員会は、必要があると認めるときは、調停の手続の一部を特定の調停委員に行わせることができる。この場合において、第四条第一項及び第二項の規定は適用せず、第八条の規定の適用については、同条中「主任調停委員」とあるのは、「特定の調停委員」とする。
2 委員会は、必要があると認めるときは、当該事件の事実の調査を都道府県労働局雇用環境・均等部(北海道労働局、東京労働局、神奈川労働局、愛知労働局、大阪労働局、兵庫労働局及び福岡労働局以外の都道府県労働局にあっては、雇用環境・均等室。)の職員に委嘱することができる。
(関係労使を代表する者の指名)
第十一条 委員会は、法第二十一条の規定により意見を聴く必要があると認めるときは、当該委員会が置かれる都道府県労働局の管轄区域内の主要な労働者団体又は事業主団体に対して、期限を付して関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者の指名を求めるものとする。
2 前項の求めがあつた場合には、当該労働者団体又は事業主団体は、当該事件につき意見を述べる者の氏名及び住所を委員会に通知するものとする。
(調停案の受諾の勧告)
第十二条 調停案の作成は、調停委員の全員一致をもつて行うものとする。
2 委員会は、調停案の受諾を勧告する場合には、関係当事者の双方に対し、受諾すべき期限を定めて行うものとする。
3 関係当事者は、調停案を受諾したときは、その旨を記載し、記名押印した書面を委員会に提出しなければならない。

(1)第26条の趣旨
調停の手続については、第26条において準用する男女雇用機会均等法第19条、第20条第1項及び第21条から第26条までの規定並びに則第9条の規定において準用する雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則(以下「男女雇用機会均等法施行規則」という。)第3条から第12条までの規定に基づき行われるものです。
第22条の苦情の自主的解決の努力は委員会の調停を開始する要件ではありませんが、企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使で自主的に解決することが望ましいことに鑑み、調停を申し立てる前に苦情の自主的解決の努力を行うことが望まれます。

(2)主任調停委員の指名
委員会の会長は、調停委員のうちから、第25条第1項の規定により委任を受けて同項に規定する紛争についての調停を行うための会議(以下「均衡待遇調停会議」という。)を主任となって主宰する調停委員(以下「主任調停委員」という。)を指名します。また、主任調停委員に事故があるときは、あらかじめその指名する調停委員が、その職務を代理するものとなるものとなります(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第3条第1項及び第2項)。

(3)均衡待遇調停会議の招集
均衡待遇調停会議は、主任調停委員が招集します。また、均衡待遇調停会議は、調停委員2人以上が出席しなければ、開くことができないとされています。さらに、均衡待遇調停会議は、非公開です(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第4条第1項から第3項まで)。

(4)均衡待遇調停会議の庶務
均衡待遇調停会議の庶務は、当該都道府県労働局雇用環境・均等部(室)において処理されます(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第5条)。

(5)調停の申請
第25条第1項の調停の申請をしようとする者は、調停申請書を当該調停に係る紛争の関係当事者である労働者に係る事業所の所在地を管轄する都道府県労働局長に提出しなければなりません(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第6条及び別記様式)。

(6)調停の通知
都道府県労働局長は、委員会に調停を行わせることとしたときは、遅滞なく、その旨を会長及び主任調停委員に通知します。また、都道府県労働局長は、委員会に調停を行わせることとしたときは関係当事者の双方に対して、調停を行わせないこととしたときは調停を申請した関係当事者に対して、遅滞なく、その旨を書面によって通知します。(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第7条第1項及び第2項)。

(7)調停委員の指名
調停は、3人の調停委員が行うこととされており、調停委員は、委員会のうちから、会長があらかじめ指名するものとされています。(第26条において準用する男女雇用機会均等法第19条第1項及び第2項)。

(8)関係当事者等の出頭
委員会は、調停のために必要があると認めるときは、関係当事者又は関係当事者と同一の事業所に雇用される労働者その他の参考人(以下「関係当事者等」という。)の出頭を求め、その意見を聴くことができます(第26条において準用する男女雇用機会均等法第20条第1項)。ただし、この「出頭」は強制的な権限に基づくものではなく、相手の同意によるものであるとされ、これらの出頭については、必ず関係当事者等(法人である場合には、委員会が指定する者)により行われることが必要です。
「その他の参考人」とは、関係当事者である短時間・有期雇用労働者が雇用されている事業所に過去に雇用されていた者、同一の事業所で就業する派遣労働者、関係当事者である短時間・有期雇用労働者と異なる事業所に雇用されている労働者、などをいいます。
委員会に「関係当事者と同一の事業所に雇用される労働者その他の参考人」の出頭を求めることができるとしたのは、委員会が通常の労働者との比較が問題となる短時間・有期雇用労働者の均衡待遇等に係る紛争を扱うため、比較対象となる通常の労働者の就業の実態について明らかにすることが必要であり、また、調停案の内容によっては同一の事業主に雇用される他の短時間・有期雇用労働者等に対しても影響を及ぼし得ることから、これらの者を参考人として意見聴取することが必要な場合があるためです。

(9)補佐人
委員会から出頭を求められた関係当事者等は、主任調停委員の許可を得て、補佐人を伴って出頭することができるものであり、補佐人は、主任調停委員の許可を得て陳述を行うことができます(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第8条第1項及び第2項)。「補佐人」は、関係当事者等が陳述を行うことを補佐することができます。なお、補佐人の陳述は、あくまでも関係当事者等の主張や説明を補足するためのものであり、補佐人が自ら主張を行ったり、関係当事者等に代わって意思表示を行ったりすることはできません。

(10)代理人
委員会から出頭を求められた関係当事者等は、主任調停委員の許可を得て当該事件について意見を述べることができるほか、他人に代理させることができます(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第8条第3項)。他人に代理させることについて主任調停委員の許可を得ようとする者は、代理人の氏名、住所及び職業を記載した書面に、代理権授与の事実を証明する書面を添付して主任調停委員に提出しなければなりません(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第8条第4項)。

(11)文書又は物件の提出
委員会は、当該事件の事実の調査のために必要があると認めるときは、関係当事者等に対し、当該事件に関係のある文書又は物件の提出を求めることができます(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第9条)。

(12)特定の調停委員
委員会は、必要があると認めるときは、調停の手続の一部を特定の調停委員に行わせることができます。「調停の手続の一部」とは、現地調査や、提出された文書等の分析・調査、関係当事者等からの事情聴取等が該当します。この場合において、則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第4条第1項及び第2項の規定は適用せず、則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第8条の規定の適用については、同条中「主任調停委員」とあるのは、「特定の調停委員」とするものです。
また、委員会は、必要があると認めるときは、当該事件の事実の調査を都道府県労働局雇用環境・均等部(室)の職員に委嘱することができます(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第10条第1項及び第2項)。

(13)関係当事者からの申立てによる意見の聴取
委員会は、関係当事者からの申立てに基づき必要があると認めるときは、当該委員会が置かれる都道府県労働局の管轄区域内の主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者から意見を聴くものとされています(第26条において準用する男女雇用機会均等法第21条)。
「主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者」については、主要な労働者団体又は事業主団体に対して、期限を付して関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者の氏名を求めるものとするものです(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第11条第1項)。関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者の指名は、事案ごとに行います。指名を求めるに際しては、管轄区域内の全ての主要な労働者団体及び事業主団体から指名を求めなければならないものではなく、調停のため必要と認められる範囲で、主要な労働者団体又は事業主団体のうちの一部の団体の指名を求めることで足りるものとされています。則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第11条第1項により委員会の求めがあった場合には、当該労働者団体又は事業主団体は、当該事件につき意見を述べる者の氏名及び住所を委員会に通知するものとされています(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第11条第2項)。

(14)調停案の受諾勧告
委員会は、調停案を作成し、関係当事者に対しその受諾を勧告することができます(法第26条において準用する男女雇用機会均等法第22条)。調停案の作成は、調停委員の全員一致をもって行われます(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第12条第1項)。また、「受諾を勧告する」とは、両関係当事者に調停案の内容を示し、その受諾を勧めるものであり、その受諾を義務付けるものではありません。委員会が、調停案の受諾を勧告する場合には、関係当事者の双方に対し、受諾すべき期限を定めて行われます(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第12条第2項)。
関係当事者は、調停案を受諾したときは、その旨を記載し、記名押印した書面を委員会に提出しなければなりません(則第9条において準用する男女雇用機会均等法施行規則第12条第3項)。
しかし、この「書面」は、関係当事者が調停案を受諾した事実を委員会に対して示すものであって、それのみをもって関係当事者間において民事的効力をもつものではありません。

(15)調停の打ち切り
委員会は、調停に係る紛争について調停による解決の見込みがないと認めるときは、調停を打ち切ることができ、その場合、その旨を関係当事者に通知しなければならないとされています(法第26条において準用する男女雇用機会均等法第23条)。「調停による解決の見込みがないと認めるとき」とは、調停により紛争を解決することが期待し難いと認められる場合や調停により紛争を解決することが適当でないと認められる場合がこれに当たり、具体的には、調停開始後長期の時間的経過を見ている場合、当事者の一方が調停に非協力的で再三にわたる要請にもかかわらず出頭しない場合のほか、調停が当該紛争の解決のためでなく労使紛争を有利に導くために利用される場合等が原則としてこれに含まれます。

4.6 時効の完成猶予(第26条において準用する男女雇用機会均等法第24条関係)

男女雇用機会均等法
(時効の中断)
第二十四条 前条第一項の規定により調停が打ち切られた場合において、当該調停の申請をした者が同条第二項の通知を受けた日から三十日以内に調停の目的となった請求について訴えを提起したときは、時効の中断に関しては、調停の申請の時に、訴えの提起があつたものとみなす。

本条は、調停が打ち切られた場合に、当該調停の申請をした者が打切りの通知を受けた日から30日以内に調停の目的となった請求について訴えを提起したときは、調停の申請の時に遡り、時効の完成猶予が生じることを明らかにしたものです。
「調停の申請の時」とは、申請書が現実に都道府県労働局長に提出された日であって、申請書に記載された申請年月日ではありません。
また、調停の過程において申請人が調停を求める事項の内容を変更又は追加した場合にあっては、当該変更又は追加した時が「申請の時」に該当するものと解されます。
「通知を受けた日から30日以内」とは、民法の原則に従い、文書の到達した日の当日は期間の計算に当たり算入されないため、書面による調停打切りの通知が到達した日の翌日から起算して30日以内となります。 「調停の目的となった請求」とは、当該調停手続において調停の対象とされた具体的な請求(地位確認、損害賠償請求等)を指します。本条が適用されるためには、これらと訴えに係る請求とが同一性のあるものでなければなりません。

4.7 訴訟手続の中止(法第26条において準用する男女雇用機会均等法第25条関係)

男女雇用機会均等法
(訴訟手続の中止)
第二十五条 第十八条第一項に規定する紛争のうち民事上の紛争であるものについて関係当事者間に訴訟が係属する場合において、次の各号のいずれかに掲げる事由があり、かつ、関係当事者の共同の申立てがあるときは、受訴裁判所は、四月以内の期間を定めて訴訟手続を中止する旨の決定をすることができる。
一 当該紛争について、関係当事者間において調停が実施されていること。
二 前号に規定する場合のほか、関係当事者間に調停によって当該紛争の解決を図る旨の合意があること。
2 受訴裁判所は、いつでも前項の決定を取り消すことができる。
3 第一項の申立てを却下する決定及び前項の規定により第一項の決定を取り消す決定に対しては、不服を申し立てることができない。

本条は、当事者が調停による紛争解決が適当であると考えた場合であって、調停の対象となる紛争のうち民事上の紛争であるものについて訴訟が係属しているとき、当事者が和解交渉に専念する環境を確保することができるよう、受訴裁判所は、訴訟手続を中止することができることとするものです。
具体的には、法第25条第1項に規定する紛争のうち民事上の紛争であるものについて関係当事者間に訴訟が係属する場合において、次のいずれかに掲げる事由があり、かつ、関係当事者の共同の申立てがあるときは、受訴裁判所は、4月以内の期間を定めて訴訟手続を中止する旨を決定することができるものです。
(1) 当該紛争について、関係当事者間において調停が実施されていること。
(2) (1)の場合のほか、関係当事者間に調停によって当該紛争の解決を図る旨の合意があること。
なお、受訴裁判所は、いつでも訴訟手続を中止する旨の決定を取り消すことが認められています。また、関係当事者の申立てを却下する決定及び訴訟手続を中止する旨の決定を取り消す決定に対しては不服を申し立てることができません。

4.8 資料提供の要求等(第26条において準用する男女雇用機会均等法第26条関係)

男女雇用機会均等法
(資料提供の要求等)
第二十六条 委員会は、当該委員会に係属している事件の解決のために必要があると認めるときは、関係行政庁に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができる。

委員会は、当該委員会に継続している事件の解決のために必要があると認めるときは、関係行政庁に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができます。「関係行政庁」とは、例えば、国の機関の地方支分部局や都道府県等の地方自治体が考えられます。「その他必要な協力」とは、情報の提供や便宜の供与等をいいます。


続き

第1章
『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』の逐条解説①-第1章
第2章
『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』の逐条解説②-第2章
第3章
『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』の逐条解説③-第3章