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改正労働基準法に関するQ&A

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続き

改正労働基準法についてのくわしいQ&Aです

(注1)本文中の法律の略称は、以下によっています。
法 …労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号)
則 …労働基準法施行規則(昭和 22 年厚生省令第 23 号)
指針…労働基準法第 36 条第1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針(平成 30 年厚生労働省告示第 323 号)
限度基準告示…労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(平成 10 年労働省告示第 154号)

1.フレックスタイム制関係

1-1
(Q)清算期間が1か月を超える場合において、清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり 50 時間を超えて労働させた場合、36 協定の締結と割増賃金の支払は必要ですか。

(A)清算期間が1か月を超える場合において、清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり 50 時間を超えて労働させた場合は、時間外労働に該当します。このため、36 協定の締結及び届出を要し、清算期間の途中であっても、当該各期間に対応した賃金支払日に割増賃金を支払わなければなりません。
清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制における時間外労働の考え方については、パンフレット「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」P13の Point2をご参照ください。


1-2
(Q)フレックスタイム制において 36 協定を締結する際、現行の取扱いでは1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、清算期間を通算して時間外労働をすることができる時間を協定すれば足りるとしていますが、今回の法改正後における取扱いはどのようになりますか。

(A)1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、1か月及び1年について協定すれば足ります。


1-3
(Q)大企業(2023 年4月1日以降は、中小事業主も含む。)では、月 60 時間を超える時間外労働に対しては5割以上の率で計算した割増賃金を支払う必要がありますが、清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制に対してはどのように適用しますか。

(A)清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり 50 時間を超えて労働させた時間については、清算期間の途中であっても、時間外労働としてその都度割増賃金を支払わなければならず、当該時間が月 60 時間を超える場合は法第 37 条第1項ただし書により5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
また、清算期間を1か月ごとに区分した各期間の最終の期間においては、当該最終の期間を平均して1週間当たり 50 時間を超えて労働させた時間に加えて、当該清算期間における総実労働時間から、①当該清算期間の法定労働時間の総枠及び②当該清算期間中のその他の期間において時間外労働として取り扱った時間を控除した時間が時間外労働時間として算定されるものであり、この時間が 60 時間を超える場合には法第 37条第1項ただし書により5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
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1-4
(Q)フレックスタイム制清算期間の延長とともに、時間外労働の上限規制も施行されますが、時間外労働の上限規制のうち、時間外労働と休日労働の合計で、単月 100 時間未満(法第 36 条第6項第2号)、複数月平均 80 時間以内(法第 36 条第6項第3号)の要件は、清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制に対してはどのように適用されますか。

(A)清算期間が1か月を超える場合のフレックスタイム制については、時間外労働の上限規制(法第 36 条第6項第2号及び第3号)は、清算期間を1か月ごとに区分した各期間について、当該各期間(最終の期間を除く。)を平均して1週間当たり 50 時間を超えて労働させた時間に対して適用されます。
また、清算期間を1か月ごとに区分した各期間の最終の期間においては、当該最終の期間を平均して1週間当たり 50 時間を超えて労働させた時間に加えて、当該清算期間における総実労働時間から、①当該清算期間の法定労働時間の総枠及び②当該清算期間中のその他の期間において時間外労働として取り扱った時間を控除した時間が時間外労働時間として算定されるものであり、この時間について時間外労働の上限規制(法第 36 条第6項第2号及び第3号)が適用されます(※1)。
フレックスタイム制における時間外労働の考え方については、パンフレット「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」P13~P18 をご参照ください。

※1 なお、フレックスタイム制は、労働者があらかじめ定められた総労働時間の範囲内で始業及び終業の時刻を選択し、仕事と生活の調和を図りながら働くための制度であり、長時間の時間外労働を行わせることは、フレックスタイム制の趣旨に合致しないことに留意してください。


1-5
(Q)フレックスタイム制のもとで休日労働を行った場合、割増賃金の支払いや時間外労働の上限規制との関係はどのようになりますか。

(A)フレックスタイム制のもとで休日労働を行った場合には、その休日労働の時間は清算期間における総労働時間や時間外労働とは別個のものとして取り扱われ、3割5分以上の割増賃金率で計算した賃金の支払いが必要です。
なお、時間外労働の上限規制との関係については、時間外労働と休日労働を合計した時間に関して、①単月 100 時間未満、②複数月平均 80 時間以内の要件を満たさなければなりません。


1-6
(Q)同一事業場内で、対象者や部署ごとに清算期間を変えることは可能ですか。

(A)労使協定に明記すれば可能です。


1-7
(Q)フレックスタイム制のもとで年次有給休暇を取得した場合、どのように取り扱えばよいでしょうか。

(A)フレックスタイム制のもとで年次有給休暇を取得した場合には、協定で定めた「標準となる1日の労働時間」の時間数を労働したものとして取り扱います。したがって、賃金清算に当たっては、実労働時間に、「年次有給休暇を取得した日数×標準となる1日の労働時間」を加えて計算します。


1-8
(Q)清算期間が同一のフレックスタイム制を導入している事業場に異動した場合、異動前後での労働時間を合算して取り扱うことは可能ですか。

(A)労使協定が異なる事業場に異動した場合には、労働時間を合算することはできません。それぞれの事業場で労働した期間について賃金清算を行う必要があり、それぞれの期間について週平均 40 時間を超えていれば時間外労働として割増賃金の支払が必要です。


1-9
(Q)清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制において、清算期間の途中に昇給があった場合、清算期間終了時の割増賃金の算定はどのように行うのでしょうか。

(A)割増賃金は、各賃金締切日における賃金額を基礎として算定するものであり、フレックスタイム制においても同様です。
したがって、清算期間の途中に昇給があった場合には、昇給後の賃金額を基礎として、清算期間を平均して1週間当たり 40 時間を超えて労働した時間について、割増賃金を算定することとなります。
ただし、清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり 50 時間を超えて労働させた時間については、清算期間の途中であっても、当該各期間に対応した賃金支払日に割増賃金を支払う必要があります。そのため、昇給後においては、昇給後の賃金額を基礎として割増賃金を算定することとなりますが、昇給前の賃金によって賃金計算が行われる期間がある場合には、昇給前の賃金額を基礎として割増賃金を計算して差し支えありません。


1-10
(Q)清算期間が3か月のフレックスタイム制を導入している事業場で2か月間働き、3か月目の初めにフレックスタイム制を導入していない事業場に異動した場合の賃金の取扱いはどのようになりますか。

(A)清算期間の途中で事業場が異動となった場合には、フレックスタイム制適用事業場で働いた期間についてはフレックスタイム制による賃金計算を行い、異動後のフレックスタイム制非適用事業場で働いた期間については通常の労働時間制度における賃金計算を行う必要があります。
したがって、3か月目の初めから別の事業場に異動した場合には、1か月目の賃金は所定の賃金を支払い、2か月目の賃金については2か月間の実際の労働時間に応じて賃金計算をすることとなります。
なお、その際に、2か月間の実際の労働時間が週平均 40 時間を超えていた場合には、超えた時間について割増賃金の支払が必要となります。
(※ただし、この場合にも、1か月目、2か月目にそれぞれ週平均 50時間を超えて労働した場合には、超えた時間に対する割増賃金を1か月目の賃金に加算して支払う必要があります。)
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1-11
(Q)清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制においては、①各月ごとに週平均 50 時間を超えた時間を時間外労働時間としてカウントした上で、②清算期間の終了時には法定労働時間の総枠を超えて労働した時間を更に時間外労働としてカウントし、割増賃金を支払いますが、事業場独自に時間外労働として取り扱う労働時間の水準を引き下げ、例えば①の場合について週平均 45 時間を超えた時間とすることや、②の場合について週平均 35 時間を超えた時間とすることは可能ですか。

(A)清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制において、時間外労働として取り扱う労働時間を法定の水準より引き下げることは、差し支えありません。なお、この場合においても、時間外労働の上限規制は法定の時間外労働の考え方に基づいて適用されることから、法定の算定方法による時間外労働時間数についても併せて管理してください。

2 時間外労働の上限規制関係

2-1
(Q)36 協定の対象期間と有効期間の違いを教えてください。

(A)36 協定における対象期間とは、法第 36 条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、1年間に限るものであり、36 協定においてその起算日を定めることによって期間が特定されます。
これに対して、36 協定の有効期間とは、当該協定が効力を有する期間をいうものであり、対象期間が1年間に限られることから、有効期間は最も短い場合でも原則として1年間となります。また、36 協定について定期的に見直しを行う必要があると考えられることから、有効期間は1年間とすることが望ましいです。

※ なお、36 協定において1年間を超える有効期間を定めた場合の対象期間は、当該有効期間の範囲内において、当該 36 協定で定める対象期間の起算日から1年ごとに区分した各期間となります。


2-2
(Q)36 協定において、1日、1か月及び1年以外の期間について延長時間を定めることはできますか。定めることができる場合、当該延長時間を超えて労働させた場合は法違反となりますか。

(A)1日、1か月及び1年に加えて、これ以外の期間について延長時間を定めることも可能です。この場合において、当該期間に係る延長時間を超えて労働させた場合は、法第 32 条違反となります。


2-3
(Q)36 協定の対象期間とする1年間の中に、対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制の対象期間の一部が含まれている場合の限度時間は、月 42 時間かつ年 320 時間ですか。

(A)36 協定で対象期間として定められた1年間の中に、対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制の対象期間が3か月を超えて含まれている場合には、限度時間は月 42 時間及び年 320 時間となります。


2-4
(Q)36 協定により延長できる時間の限度時間(原則として月 45 時間・年360 時間。法第 36 条第4項)や 36 協定に特別条項を設ける場合の 1 か月及び1年についての延長時間の上限(1か月について休日労働を含んで 100 時間未満、1年について 720 時間。法第 36 条第5項)、特別条項により月 45 時間を超えて労働させることができる月数の上限(6か月。法第 36 条第5項)を超えている 36 協定の効力はどのようになりますか。

(A)ご質問の事項は、いずれも法律において定められた要件であり、これらの要件を満たしていない 36 協定は全体として無効です。


2-5
(Q)対象期間の途中で 36 協定を破棄・再締結し、対象期間の起算日を当初の 36 協定から変更することはできますか。

(A)時間外労働の上限規制の実効性を確保する観点から、1年についての限度時間(原則として 360 時間。法第 36 条第4項)及び特別条項により月 45 時間を超えて労働させることができる月数の上限(法第 36 条第5項)は厳格に適用すべきものであり、ご質問のように対象期間の起算日を変更することは原則として認められません。
なお、複数の事業場を有する企業において、対象期間を全社的に統一する場合のように、やむを得ず対象期間の起算日を変更する場合は、36協定を再締結した後の期間においても、再締結後の 36 協定を遵守することに加えて、当初の 36 協定の対象期間における1年の延長時間及び限度時間を超えて労働させることができる月数を引き続き遵守しなければなりません。


2-6
(Q)特別条項により月 45 時間・年 360 時間(対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制の場合は月 42 時間・年 320 時間)を超えて労働させることができる「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合」(法第 36 条第5項)とは具体的にどのような状態をいいますか。

(A)「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合」とは、全体として1年の半分を超えない一定の限られた時期において一時的・突発的に業務量が増える状況等により限度時間を超えて労働させる必要がある場合をいうものであり、「通常予見することのできない業務量の増加」とは、こうした状況の一つの例として規定されたものです。
その上で、具体的にどのような場合を協定するかについては、労使当事者が事業又は業務の態様等に即して自主的に協議し、可能な限り具体的に定める必要があります。
なお、法第 33 条の非常災害時等の時間外労働に該当する場合はこれに含まれません。


2-7
(Q)同一企業内のA事業場からB事業場へ転勤した労働者について、①36協定により延長できる時間の限度時間(原則として月 45 時間・年 360 時間。法第 36 条第4項)、②36 協定に特別条項を設ける場合の1年についての延長時間の上限(720 時間。法第 36 条第5項)、③時間外労働と休日労働の合計で、単月 100 時間未満、複数月平均 80 時間以内の要件(法第36 条第6項第2号及び第3号)は、両事業場における当該労働者の時間外労働時間数を通算して適用しますか。

(A)①36 協定により延長できる時間の限度時間(法第 36 条第4項)②36協定に特別条項を設ける場合の1年についての延長時間の上限(法第 36条第5項)は、事業場における 36 協定の内容を規制するものであり、特定の労働者が転勤した場合は通算されません。
これに対して、③時間外労働と休日労働の合計で、単月 100 時間未満、複数月平均 80 時間以内の要件(法第 36 条第6項第2号及び第3号)は、労働者個人の実労働時間を規制するものであり、特定の労働者が転勤した場合は法第 38 条第1項の規定により通算して適用されます。


2-8
(Q)時間外労働と休日労働の合計で、複数月平均 80 時間以内の要件(法第36 条第6項第3号)は、改正法施行前の期間や経過措置の期間も含めて満たす必要がありますか。
また、複数の 36 協定の対象期間をまたぐ場合にも適用されますか。

(A)時間外労働と休日労働の合計で、複数月平均 80 時間以内の要件(法第36 条第6項第3号)については、改正法施行前の期間や経過措置の期間の労働時間は算定対象となりません。
また、この要件は、複数の 36 協定の対象期間をまたぐ場合にも適用されます。


2-9
(Q)36 協定を適用する業務の区分が細分化されていないなど、指針に適合しない 36 協定の効力はどのようになりますか。

(A)指針は、時間外・休日労働を適正なものとするために留意すべき事項等を定めたものであり、36 協定を適用する業務の区分が細分化されていないなど、法定要件を満たしているものの、指針に適合しない 36 協定は直ちには無効とはなりません。
なお、指針に適合しない 36 協定は、法第 36 条第9項の規定に基づく助言及び指導の対象となるものです。


2-10
(Q)適用猶予・除外業務等について上限規制の枠内の 36 協定を届け出る場合に、則様式第9号又は第9号の2を使用することは差し支えありませんか。

(A)時間外労働の上限規制の適用が猶予・除外される対象であっても、同条に適合した 36 協定を締結することが望ましいです。この場合において、則様式第9号又は第9号の2を使用することも差し支えありません。


2-11
(Q)改正前の労働基準法施行規則様式第9号(以下「旧様式」といいます。)により届け出るべき 36 協定を則様式第9号(以下「新様式」といいます。)により届け出ることは可能ですか。
また、その際、チェックボックスへのチェックを要しますか。

(A)新様式の記載項目は、旧様式における記載項目を包含しており、旧様式により届け出るべき 36 協定を新様式により届け出ることは差し支え
ありません。
旧様式により届け出るべき 36 協定を新様式で届け出る際は、改正前の法及び則並びに限度基準告示に適合していれば足り、時間外・休日労働の合計を単月 100 時間未満、複数月平均 80 時間以内とすること(法第 36条第6項第2号及び第3号に定める要件を満たすこと)について協定しない場合には、チェックボックスへのチェックは要しません。


2-12
(Q)深夜業の回数制限(指針第8条第2号の健康確保措置)の対象には、所定労働時間内の深夜業の回数も含まれますか。
また、目安となる回数はありますか。

(A)深夜業の回数制限(指針第8条第2号の健康確保措置)の対象には、所定労働時間内の深夜業の回数制限も含まれます。なお、交替制勤務など所定労働時間に深夜業を含んでいる場合には、事業場の実情に合わせ、その他の健康確保措置を講ずることが考えられます。
また、指針は、限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置として望ましい内容を規定しているものであり、深夜業を制限する回数の設定を含め、その具体的な取扱いについては、労働者の健康及び福祉を確保するため、各事業場の業務の実態等を踏まえて、必要な内容を労使間で協定すべきものです。
例えば、労働安全衛生法(昭和 47 年法律第 57 号)第 66 条の2の規定に基づく自発的健康診断の要件として、1月当たり4回以上深夜業に従事したこととされていることを参考として協定することも考えられます。


2-13
(Q)「終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること」(指針第8条第3号の健康確保措置)の「休息時間」とはどのような時間ですか。
また、目安となる時間数はありますか。

(A)「終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること」(指針第8条第3号の健康確保措置)の「休息時間」は、使用者の拘束を受けない時間をいうものですが、限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置として望ましい内容を規定しているものであり、休息時間の時間数を含め、その具体的な取扱いについては、労働者の健康及び福祉を確保するため、各事業場の業務の実態等を踏まえて、必要な内容を労使間で協定すべきものです。


2-14
(Q)「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」(法第 36 条第 11項)の具体的な範囲を教えてください。

(A)「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」(法第 36 条第 11項)は、専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務をいい、既存の商品やサービスにとどまるものや、商品を専ら製造する業務などはここに含まれません。


2-15
(Q)建設工事現場における交通誘導警備業務を主たる業務とする労働者は、時間外労働の上限規制の適用猶予の対象となりますか。

(A)建設現場における交通誘導警備の業務を主たる業務とする労働者については、時間外労働の上限規制の適用猶予の対象となります(則第 69 条第1項)。


2-16
(Q)時間外労働の上限規制の適用が猶予される自動車の運転の業務の範囲を教えてください。

(A)「自動車の運転の業務」(法第 140 条及び則第 69 条第2項)に従事する者は、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年労働省
告示第7号)第1条の自動車運転者と範囲を同じくするものです。すなわち、物品又は人を運搬するために自動車を運転することが労働契約上の主として従事する業務となっている者が原則として該当します。(ただし、物品又は人を運搬するために自動車を運転することが労働契約上の主として従事する業務となっていない者についても、実態として物品又は人を運搬するために自動車を運転する時間が現に労働時間の半分を超えており、かつ、当該業務に従事する時間が年間総労働時間の
半分を超えることが見込まれる場合には、「自動車の運転に主として従事する者」として取り扱います。)
そのため、自動車の運転が労働契約上の主として従事する業務でない者、例えば、事業場外において物品等の販売や役務の提供、取引契約の締結・勧誘等を行うための手段として自動車を運転する者は原則として該当しません。
なお、労働契約上、主として自動車の運転に従事することとなっている者であっても、実態として、主として自動車の運転に従事することがなければ該当しません。


2-17
(Q)時間外労働の上限規制の適用が猶予される「医業に従事する医師」の範囲を教えてください。

(A)「医業に従事する医師」(法第 141 条)とは、労働者として使用され、医行為を行う医師をいいます。なお、医行為とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為をいいます。


2-18
(Q)労働者派遣事業を営む事業主が、時間外労働の上限規制の適用が猶予される事業又は業務(法第 139 条から第 142 条まで)に労働者を派遣する場合、時間外労働の上限規制の適用猶予の対象となりますか。
また、事業場の規模により時間外労働の上限規制の適用が開始される日が異なりますが、派遣元又は派遣先のいずれの事業場の規模について判断すればよいでしょうか。

(A)労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和 60 年法律第 88 号。以下「労働者派遣法」といいます。)第 44条第2項前段の規定により、派遣中の労働者の派遣就業に係る法第 36 条の規定は派遣先の使用者について適用され、同項後段の規定により、36協定の締結・届出は派遣元の使用者が行うこととなります。このため、法第 139 条から第 142 条までの規定は派遣先の事業又は業務について適用されることとなり、派遣元の使用者においては、派遣先における事業・業務の内容を踏まえて 36 協定を締結する必要があります。
また、事業場の規模についても、労働者派遣法第 44 条第2項前段の規定により、派遣先の事業場の規模によって判断することとなります。36 協定の届出様式については、派遣先の企業規模や事業内容、業務内容に応じて適切なものを使用することとなります。


2-19
(Q)時間外労働の上限規制(法第 36 条の規定)が全面的に適用される業務(以下「一般則適用業務」といいます。)と時間外労働の上限規制の適用除外・猶予業務等との間で業務転換した場合や出向した場合の取扱いはどのようになりますか。

(A)
【業務転換の場合】
同一の 36 協定によって時間外労働を行わせる場合は、対象期間の途中で業務を転換した場合においても、対象期間の起算日からの当該労働者の時間外労働の総計を当該 36 協定で定める延長時間の範囲内としなければなりません。したがって、例えば法第 36 条の適用除外・猶予業務から一般則適用業務に転換した場合、当該協定における一般則適用業務の延長時間(最大1年 720 時間)から、適用除外・猶予業務等において行った時間外労働時間数を差し引いた時間数まで時間外労働を行わせることができ、適用除外・猶予業務等において既に年 720 時間を超える時間外労働を行っていた場合は、一般則適用業務への転換後に時間外労働を行わせることはできません。
なお、時間外労働と休日労働の合計で、単月 100 時間未満、複数月平均 80 時間以内の要件(法第 36 条第6項第2号及び第3号)は、時間外・休日労働協定の内容にかかわらず、一般則適用業務に従事する期間における実労働時間についてのみ適用されるものです。

【出向の場合】
出向先において出向元とは別の 36 協定の適用を受けることとなる場合は、出向元と出向先との間において特段の取決めがない限り、出向元における時間外労働の実績にかかわらず、出向先の 36 協定で定める範囲内で時間外・休日労働を行わせることができます。
ただし、一般則適用業務の実労働時間については、時間外労働と休日労働の合計で、単月 100 時間未満、複数月平均 80 時間以内の要件(法第36 条第6項第2号及び第3号)を満たす必要があり、法第 38 条第1項により出向の前後で通算されます。


2-20
(Q)施行前(大企業は 2019 年3月 31 日まで、中小企業は 2020 年3月 31日まで)と施行後(同年4月1日以後)にまたがる期間の 36 協定を締結している場合には、4月1日開始の協定を締結し直さなければならないのでしょうか。

(A)改正法の施行に当たっては、経過措置(※)が設けられています。この経過措置によって、施行前と施行後にまたがる期間の 36 協定を締結している場合には、その協定の初日から1年間に限っては、その協定は有効となります。
したがって、4月1日開始の協定を締結し直す必要はなく、その協定の初日から1年経過後に新たに定める協定から、上限規制に対応していただくこととなります。
※ 経過措置の内容
上限規制は、2019 年4月1日(中小企業は 2020 年4月1日)以後の期間のみを定めた 36 協定に対して適用されます。2019 年3月 31 日を含む期間について定めた 36協定については、その協定の初日から1年間は引き続き有効となり、上限規制は適用されません。


2-21
(Q)中小企業は上限規制の適用が1年間猶予されますが、その間の 36 協定届は従来の様式で届け出てもよいのでしょうか。

(A)適用が猶予される1年間については、従来の様式での届出で構いません。なお、上限規制を遵守する内容で 36 協定を締結する場合には、新様式で届け出ていただいても構いません。


2-22
(Q)上限規制の適用が1年間猶予される中小企業の範囲について、以下の場合はどのように判断されるのでしょうか。
①  「常時使用する労働者」の数はどのように判断するのですか。
②  「常時使用する労働者数」を算定する際、出向労働者や派遣労働者はどのように取り扱えばよいですか。
③  中小企業に当たるか否かを判断する際に、個人事業主や医療法人など、資本金や出資金の概念がない場合はどうすればよいですか。
④  中小企業に当たるか否かを判断する際に、グループ企業については、グループ単位で判断するのですか。

(A)
【①について】
臨時的に雇い入れた労働者を除いた労働者数で判断します。なお、休業などの臨時的な欠員の人数については算入する必要があります。
パート・アルバイトであっても、臨時的に雇い入れられた場合でなければ、常時使用する労働者数に算入する必要があります。

【②について】
労働契約関係のある労使間に算入します。在籍出向者の場合は出向元・出向先双方の労働者数に算入され、移籍出向者の場合は出向先のみの労働者数に算入されます。派遣労働者の場合は、労働契約関係は派遣元との間にありますので、派遣元の労働者数に算入します。

【③について】
資本金や出資金の概念がない場合は、労働者数のみで判断することとなります。

【④について】
企業単位で判断します。

※ 中小企業の範囲の詳細については、パンフレット「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」P5をご参照ください。パンフレット全体は以下のURLからご覧いただけます。


2-23

(Q)「休日労働を含んで」というのはどういった意味でしょうか。休日労働は時間外労働とは別のものなのでしょうか。

(A)労働基準法においては、時間外労働と休日労働は別個のものとして取り扱います。
・時間外労働・・・法定労働時間(1日8時間・1週 40 時間)を超えて労働した時間
休日労働 ・・・法定休日(1週1日又は4週4日)に労働した時間
今回の改正によって設けられた限度時間(月 45 時間・年 360 時間)はあくまで時間外労働の限度時間であり、休日労働の時間は含まれません。
一方で、今回の改正による、1か月の上限(月 100 時間未満)、2~6か月の上限(平均 80 時間以内)については、時間外労働と休日労働を合計した実際の労働時間に対する上限であり、休日労働も含めた管理をする必要があります。


2-24

(Q)時間外労働と休日労働の合計が、2~6か月間のいずれの平均でも月80 時間以内とされていますが、この2~6か月は、36 協定の対象期間となる1年間についてのみ計算すればよいのでしょうか。

(A)時間外労働と休日労働の合計時間について2~6か月の平均で 80 時間以内とする規制については、36 協定の対象期間にかかわらず計算する必要があります。
なお、上限規制が適用される前の 36 協定の対象期間については計算する必要はありません。


2-25

(Q)長時間労働者に対する医師の面接指導が法律で定められていますが、その対象者の要件と、今回の時間外労働の上限規制とは計算方法が異なるのでしょうか。

(A)時間外労働の上限規制は、労働基準法に定める法定労働時間を超える時間について上限を設けるものです。法定労働時間は、 原則として1日8時間・1週 40 時間と決められていますが、変形労働時間制やフレックスタイム制を導入した場合には、原則とは異なる計算をすることとなります。
一方、労働安全衛生法に定める医師による面接指導の要件は、労働時間の状況が1週間当たり 40 時間を超える時間が 80 時間を超えた労働者で本人の申出があった場合となっており、これは変形労働時間制やフレックスタイム制を導入した場合でも変わりません。
(※研究開発業務に従事する労働者については、1週間当たり 40 時間を超える時間が 100 時間を超えた場合に、本人の申出の有無にかかわらず、医師の面接指導を受けさせる必要があります。)


2-26

(Q)どのような場合に、法律に違反してしまうのでしょうか。

(A)時間外労働を行わせるためには、36 協定の締結・届出が必要です。したがって、36 協定を締結せずに時間外労働をさせた場合や、36 協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせた場合には、法第 32 条違反となります。(6か月以下の懲役又は 30 万円以下の罰金)
今回の法改正では、この 36 協定で定める時間数について、上限が設けられました。また、36 協定で定めた時間数にかかわらず、
・ 時間外労働と休日労働の合計時間が月 100 時間以上となった場合
・ 時間外労働と休日労働の合計時間について、2~6か月の平均のいずれかが 80 時間を超えた場合
には、法第 36 条第6項違反となります。(6か月以下の懲役又は 30 万円以下の罰金)


2-27

(Q)36 協定では1か月についての延長時間を定めることとなっていますが、この「1か月」の起算日はどのように考えればよいでしょうか。

(A)36 協定の対象期間の初日から1か月ごとに区分した各期間の初日が「1か月」の起算日となります。


2-28

(Q)特別条項における1か月の延長時間として、「100 時間未満」と協定することはできますか。

(A)36 協定において定める延長時間数は、具体的な時間数として協定しなければなりません。「100 時間未満」と協定することは、具体的な延長時間数を協定したものとは認められないため、有効な 36 協定とはなりません。


2-29

(Q)特別条項において、1か月についてのみ又は1年についてのみの延長時間を定めることはできますか。

(A)特別条項において、1か月についてのみ又は1年についてのみ限度時間を超える延長時間を定めることは可能です。
1年についてのみ限度時間を超える延長時間を定める場合には、1か月の限度時間を超えて労働させることができる回数を「0回」として協定することとなります。これは、臨時的な労働時間の増加の有無を月ごとに判断した結果を協定していただくためです。
なお、特別条項は限度時間(1か月 45 時間・1年 360 時間。対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制により労働させる場合は、1か月 42 時間・1年 320 時間)を超えて労働させる必要がある場合に定めるものであり、1日の延長時間についてのみ特別条項を協定することは認められません。


2-30

(Q)36 協定の様式では、「労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻」を記載することとなっていますが、始業及び終業の時刻ではなく、労働時間数の限度を記載しても構いませんか。

(A)「労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻」の欄には、原則として始業及び終業の時刻を記載していただく必要がありますが、これが困難な場合には、労働時間数の限度を記載していただいても構いません。


2-31

(Q)特別条項を設けておらず、かつ、時間外労働時間数と休日労働時間数を合計しても1か月 80 時間に満たない内容の 36 協定についても、チェックボックスへのチェックが必要ですか。

(A)休日労働を含んで、1か月 100 時間未満、2~6か月平均 80 時間以内とする要件(法第 36 条第6項第2号及び第3号)を満たすことは、特別条項の有無や時間外労働時間数等の協定内容にかかわらず、必ず協定しなければならない事項であり、則様式第9号により届出を行う場合は、チェックボックスへのチェックが必須です。


2-32

(Q)副業・兼業や転職の場合、休日労働を含んで、1か月 100 時間未満、複数月平均 80 時間以内(法第 36 条第6項第2号及び第3号)の上限規制が通算して適用されることとなりますが、その場合、自社以外での労働時間の実績は、どのように把握することが考えられますか。

(A)厚生労働省では、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定しており、ガイドラインにおいて、就業時間の把握については、労働者からの自己申告により副業・兼業先での労働時間を把握することが考えられると示しています。
なお、転職の場合についても自社以外の事業場における労働時間の実績は、労働者からの自己申告により把握することが考えられます。


2-33

(Q)法改正前の 36 協定では、法定労働時間を下回る所定労働時間を基準に延長時間を協定することや、法定休日における労働時間を含めて協定することも例外的に認められており、これらの時間を、法定労働時間を基準とした労働時間に換算する概算式が通達で定められていましたが、法改正後はどのように取り扱われますか。

(A)36 協定は、本来、法定労働時間(1週 40 時間・1日8時間)を超える時間数について協定するものであり、法定労働時間を下回る所定労働時間を基準に延長時間を協定して届け出ることや、法定休日・法定外休日の労働時間を含めて協定して届け出ることについては、本来の制度趣旨には必ずしも沿わないものですが、これまでは労使慣行への影響等を考慮して、やむを得ないものとして取り扱ってきました。
これに対して、今回の法改正は、法定労働時間を超える時間外労働について罰則付きの上限を設けるものであることから、必ず法定労働時間を基準とした労働時間について協定し、届け出る必要があり、従来の概算式を使用することはできなくなります。
なお、所定労働時間を基準に時間外労働時間を管理している事業場においては、法定労働時間を基準とした延長時間を協定した上で、「所定労働時間を超える時間数」を併せて協定することも可能です。新様式には、任意の記載項目として「所定労働時間を超える時間数」の欄が設けられていますので、こちらの記載欄を適宜活用してください。


2-34

(Q)36 協定の様式には、「所定労働時間を超える時間数(任意)」の記載欄が設けられていますが、ここに具体的な時間数を記載した場合の効力について教えてください。
また、1か月における「所定労働時間を超える時間数」は、各月の所定労働日数によって変動しますが、変動する中で最大となる時間数を記載すればよいでしょうか。

(A)「所定労働時間を超える時間数(任意)」の記載欄は、法定労働時間を下回る所定労働時間を基準に時間外労働の管理を行っている事業場において、任意に活用していただけるように設けられたものであり、「法定労働時間を超える時間数」を、所定労働時間を基準としたものに換算した時間数を記載していただくものです。
このため、「所定労働時間を超える時間数(任意)」の欄に記載した時間数それ自体が、「法定労働時間を超える時間数」と別途の効力を持つものではありません。
また、1か月における「所定労働時間を超える時間数」は、36 協定の対象期間において各月ごとに変動する中で最大となる時間数を記載してください。


2-35

(Q)改正前の法が適用される 36 協定の内容を 2019 年4月1日以降に見直して、労働基準監督署に改めて届け出る場合(例えば、2019 年2月1日から 2020 年1月 31 日までを対象期間とする 36 協定の内容を 2019 年8月に見直し、労働基準監督署に改めて届け出る場合)、改めて届け出る 36協定は、改正後の法に適合したものとし、新様式を使用する必要がありますか。

(A)対象期間の変更を伴わない見直しの場合は、引き続き改正前の法が適用されますので、旧様式を使用していただいて構いません。
協定の内容とともに、対象期間についても見直し、2019 年4月1日以降の期間のみを対象期間とする場合には、改正後の法に適合したものとし、新様式を使用してください。
※ 中小企業においては、上限規制は 2020 年4月1日から適用されますので、「2019 年」は「2020 年」と、「2020 年」は「2021 年」と読み替えてください。


2-36

(Q)36 協定の協定事項である「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」(則第 17 条第1項第5号)は、限度時間を超えるたびに講じる必要がありますか。また、限度時間を超えてからどの程度の期間内に措置を実施すべきですか。

(A)「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」(則第 17 条第1項第5号)は、原則として、限度時間を超えるたびに講じていただく必要があります。また、当該措置の実施時期については、措置の内容によっても異なりますが、例えば、医師による面接指導については、1か月の時間外労働時間を算定した日(賃金締切日等)から概ね1か月以内に講じていただくことが望ましいです。


2-37

(Q)指針に示された健康確保措置のうち、心とからだの健康問題についての相談窓口を設置することについて、相談窓口の設置さえ行えば、措置を果たしたことになるのでしょうか。
また、この場合、どのような内容について記録を保存すればよいでしょうか。

(A)心とからだの健康問題についての相談窓口については、それを設置することにより、法令上の義務を果たしたことになります。その際、労働者に対しては、相談窓口が設置されている旨を十分周知し、当該窓口が効果的に機能するよう留意してください。
また、この場合の記録の保存については、相談窓口を設置し、労働者に周知した旨の記録を保存するとともに、当該 36 協定の有効期間中に受け付けた相談件数に関する記録も併せて保存してください。


2-38

(Q)一般則適用業務と時間外労働の上限規制の適用除外・猶予業務等が混在する事業場の 36 協定については、則様式第9号(一般則適用業務について特別条項を設ける場合は、則様式第9号の2)と則様式第9号の4を別々に作成する必要がありますか。

(A)一般則適用業務と時間外労働の上限規制の適用除外・猶予業務等が混在する事業場の 36 協定は、基本的には、則様式第9号(一般則適用業務について特別条項を設ける場合は、則様式第9号の2)と則様式第9号の4を別々に作成する必要があります。
なお、則に定める様式は、必要な事項が記載できるよう定められたものであり、必要な事項が記載されている限り、異なる様式を使用することも可能です。したがって、必要な事項が紛れなく記載されていれば、一般則適用業務と時間外労働の上限規制の適用除外・猶予業務等を併せて一つの様式で届け出ることも可能です。


2-39

(Q)建設業(法第 139 条に規定する事業)において、研究開発業務を行う労働者がいる場合は、則様式第9号の4に加えて、則様式第9号の3を届け出る必要がありますか。

(A)建設業(法第 139 条に規定する事業)において、研究開発業務を行う労働者がいる場合は、当該労働者を含めて、則様式第9号の4により 36協定を届け出れば足り、則様式第9号の3を届け出ていただく必要はありません。
ただし、研究開発業務を行う労働者については、指針第9条第3項において、1か月について 45 時間又は1年について 360 時間(対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制により労働させる場合は、1か月について 42 時間又は1年について 320 時間)を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置を定めるように努めなければならないとされていることに留意してください。


2-40

(Q)労働者派遣事業における 36 協定について、派遣元が中小企業で、2019年4月1日以降に大企業にも中小企業にも労働者を派遣する場合、いずれの様式を用いればよいでしょうか。

(A)労働者派遣法第 44 条第2項前段の規定により、派遣中の派遣労働者の派遣就業に係る法第 36 条の規定は派遣先の使用者について適用され、同項後段の規定により、36 協定の締結・届出は派遣元の使用者が行うこととなっています(※1)。
このため、2019 年4月1日以後の期間のみを定める 36 協定については、派遣元において、派遣先の企業規模、業種及び業務内容に応じて様式を選択し、派遣先ごとに締結・届出を行うこととなります(※2)。
したがって、ご質問の場合には、中小企業に労働者を派遣する場合は旧様式第9号、大企業に労働者を派遣する場合は新様式第9号(特別条項を設ける場合は新様式第9号の2)を用いることとなります(※3)。
なお、同一の労働者が大企業にも中小企業にも派遣される場合、法第36 条第6項(時間外・休日労働の合計で単月 100 時間未満、2~6か月平均 80 時間以内)の規定は、中小企業に上限規制が適用されるまで(2020年3月まで)の間は、大企業に派遣されている期間についてのみ適用されます(※4)。

※1 労働者派遣法第 44 条第2項
派遣中の労働者の派遣就業に関しては、派遣先の事業のみを、派遣中の労働者を使用する事業とみなして、労働基準法(略)第三十六条第一項及び第六項(略)の
規定並びに当該規定に基づいて発する命令の規定(これらの規定に係る罰則の規定を含む。)を適用する。この場合において(略)同法第三十六条第一項中「当該事業場に」とあるのは「派遣元の使用者が、当該派遣元の事業の事業場に」と、「これを行政官庁に」とあるのは「及びこれを行政官庁に」とする。
※2 派遣元に使用される派遣労働者以外の労働者(派遣元で業務に従事する事務スタッフなど)については、派遣労働者とは別に、派遣元の企業規模によって様式を選択することとなり、ご質問のように中小企業である場合は旧様式第9号を用いることとなります。
※3 なお、御質問のように、上限規制の適用が分かれる複数の派遣先について、同じ日に 36 協定を締結するといった場合には、派遣先ごとに必要な事項が漏れなく記載されている限り、1つの 36 協定届の様式にまとめることも可能です(なお、それらの複数の派遣先について、必ずしも 36 協定の有効期間・対象期間が同一である必要はありません)。
また、派遣先が自社で締結した自社の労働者に係る 36 協定の対象期間と、派遣元で締結した派遣労働者に係る 36 協定の対象期間は必ずしも一致しません。この
ため、2019 年4月1日以降は、経過措置の対象であるか否か(適用される 36 協定が、2019 年3月 31 日を含む期間を定めるものであるか否か)によって、派遣先に
おいて、自社の労働者と派遣労働者で上限規制の適用の有無が異なる場合もあり得ます。
※4 例えば、平成 31 年4月、6~7月は大企業、同年5月は中小企業に派遣していた場合、同年4月、6月、7月の時間外・休日労働は単月 100 時間未満とし、この3
か月の平均で 80 時間以内としなければなりません。


3 年次有給休暇関係

3-1

(Q)使用者による時季指定(法第 39 条第7項)は、いつ行うのでしょうか。

(A)使用者による時季指定(法第 39 条第7項)は、必ずしも基準日からの1年間の期首に限られず、当該期間の途中に行うことも可能です。


3-2

(Q)使用者による時季指定の対象となる「有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」(法第 39 条第7項)には、法第 39 条第3項の比例付与の対象となる労働者であって、前年度繰越分の有給休暇と当年度付与分の有給休暇とを合算して初めて 10 労働日以上となる者も含まれますか。

(A)使用者による時季指定の対象となる「有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」(法第 39 条第7項)は、基準日に付与される年次有給休暇の日数が 10 労働日以上である労働者が該当するものであり、法第 39条第3項の比例付与の対象となる労働者であって、今年度の基準日に付与される年次有給休暇の日数が 10 労働日未満であるものについては、仮に、前年度繰越分の年次有給休暇も合算すれば 10 労働日以上となったとしても、「有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」には含まれません。


3-3

(Q)使用者による時季指定(法第 39 条第7項)を半日単位や時間単位で行うことはできますか。

(A)労働者の意見を聴いた際に半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合においては、使用者が年次有給休暇の時季指定を半日単位で行うことは差し支えありません。この場合において、半日の年次有給休暇の日数は 0.5 日として取り扱います。
また、使用者による時季指定を時間単位年休で行うことは認められません。


3-4

(Q)前年度からの繰越分の年次有給休暇を取得した場合は、その日数分を法第 39 条第7項の規定により使用者が時季指定すべき5日の年次有給休暇から控除することができますか。

(A)前年度からの繰越分の年次有給休暇を取得した場合は、その日数分を法第 39 条第7項の規定により使用者が時季指定すべき5日の年次有給休暇から控除することとなります(法第 39 条第8項)。
※ なお、法第 39 条第7項及び第8項は、労働者が実際に取得した年次有給休暇が、前年度からの繰越分の年次有給休暇であるか当年度の基準日に付与された年次有給休暇であるかについては問わないものです。


3-5

(Q)法第 39 条第7項の規定により使用者が指定した時季を、使用者又は労働者が事後に変更することはできますか。

(A)法第 39 条第7項の規定により指定した時季について、使用者が労働者に対する意見聴取の手続(則第 24 条の6)を再度行い、その意見を尊重
することによって変更することは可能です。
また、使用者が指定した時季について、労働者が変更することはできませんが、使用者が指定した後に労働者に変更の希望があれば、使用者は再度意見を聴取し、その意見を尊重することが望ましいです。


3-6

(Q)基準日から1年間の期間(以下「付与期間」といいます。)の途中に育児休業が終了した労働者等についても、5日の年次有給休暇を確実に取得させなければなりませんか。

(A)付与期間の途中に育児休業から復帰した労働者等についても、法第 39条第7項の規定により5日間の年次有給休暇を取得させなければなりません。
ただし、残りの期間における労働日が、使用者が時季指定すべき年次有給休暇の残日数より少なく、5日の年次有給休暇を取得させることが不可能な場合には、その限りではありません。

3-7

(Q)使用者は、5日を超える日数の年次有給休暇について時季指定を行うことができますか。

(A)労働者の個人的事由による取得のために労働者の指定した時季に与えられるものとして一定の日数を留保する観点から、使用者は、年5日を超える日数について年次有給休暇の時季を指定することはできません。
また、使用者が時季指定を行うよりも前に、労働者自ら請求し、又は計画的付与により具体的な年次有給休暇日が特定されている場合には、当該特定されている日数について使用者が時季指定することはできません(法第 39 条第8項)。


3-8

(Q)あらかじめ使用者が時季指定した年次有給休暇日が到来するより前に、労働者が自ら年次有給休暇を取得した場合は、当初使用者が時季指定した日に労働者が年次有給休暇を取得しなくても、法第 39 条第7項違反とはなりませんか。

(A)ご質問の場合は労働者が自ら年次有給休暇を5日取得しており、法第39 条第7項違反とはなりません。なお、この場合において、当初使用者が行った時季指定は、使用者と労働者との間において特段の取決めがない限り、当然に無効とはなりません。


3-9

(Q)則第 24 条の5第2項においては、基準日又は第一基準日を始期として、第二基準日から1年を経過する日を終期とする期間の月数を 12 で除した数に5を乗じた日数について時季指定する旨が規定されていますが、この「月数」に端数が生じた場合の取扱いはどのようになりますか。また、同規定により算定した日数に1日未満の端数が生じた場合の取扱いはどのようになりますか。

(A)則第 24 条の5第2項を適用するに当たっての端数については原則として下記のとおり取り扱うこととしますが、この方法によらず、月数について1か月未満の端数をすべて1か月に切り上げ、かつ、使用者が時季指定すべき日数について1日未満の端数をすべて1日に切り上げることでも差し支えありません。
【端数処理の方法】
① 基準日から翌月の応答日の前日までを1か月と考え、月数及び端数となる日数を算出します。ただし、基準日の翌月に応答日がない場合は、翌月の末日をもって1か月とします。
② 当該端数となる日数を、最終月の暦日数で除し、上記①で算出した月数を加えます。
③ 上記②で算出した月数を 12 で除した数に5を乗じた日数について時季指定します。なお、当該日数に1日未満の端数が生じている場合は、これを1日に切り上げます。

(例)第一基準日が 10 月 22 日、第二基準日が翌年4月1日の場合
① 10 月 22 日から 11 月 21 日までを1か月とすると、翌々年3月 31 日までの月数及び端数は 17 か月と 10 日(翌々年3月 22 日から3月 31 日まで)と算出されます。
② 上記①の端数 10 日について、最終月(翌々年3月 22 日から4月 21 日まで)の暦日数 31 日で除し、17 か月を加えると、17.32…か月となります。
③ 17.32…か月を 12 で除し、5を乗じると、時季指定すべき年次有給休暇の日数は、7.21…日となり、労働者に意見聴取した結果、半日単位の取得を希望した場合には 7.5 日、希望しない場合には8日について時季指定を行います。


3-10

(Q)使用者による時季指定を行う場合の労働者に対する意見聴取(則第 24条の6第1項)やその尊重(則第 24 条の6第2項)の具体的な内容について教えてください。

(A)則第 24 条の6第1項の意見聴取の内容としては、法第 39 条第7項の基準日から1年を経過する日までの間の適時に、労働者から年次有給休暇の取得を希望する時季を申告させることが考えられます。
また、則第 24 条の6第2項の尊重の内容としては、できる限り労働者の希望に沿った時季を指定するよう努めることが求められるものです。


3-11

(Q)労働者自らが半日単位又は時間単位で取得した年次有給休暇の日数分については、使用者が時季指定すべき年5日の年次有給休暇から控除することができますか。

(A)労働者が半日単位で年次有給休暇を取得した日数分については、0.5 日として使用者が時季指定すべき年5日の年次有給休暇から控除することとなり、当該日数分について使用者は時季指定を要しません。なお、労働者が時間単位で年次有給休暇を取得した日数分については、使用者が時季指定すべき年5日の年次有給休暇から控除することはできません。


3-12

(Q)事業場が独自に設けている法定の年次有給休暇と異なる特別休暇を労働者が取得した日数分については、使用者が時季指定すべき年5日の年次有給休暇から控除することはできますか。

(A)法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇(たとえば、法第 115条の時効が経過した後においても、取得の事由及び時季を限定せず、法定の年次有給休暇を引き続き取得可能としている場合のように、法定の年次有給休暇日数を上乗せするものとして付与されるものを除きます。以下同じ。)を取得した日数分については、使用者が時季指定すべき年5日の年次有給休暇から控除することはできません。
なお、法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇について、今回の改正を契機に廃止し、年次有給休暇に振り替えることは法改正の趣旨に沿わないものであるとともに、労働者と合意をすることなく就業規則を変更することにより特別休暇を年次有給休暇に振り替えた後の要件・効果が労働者にとって不利益と認められる場合は、就業規則の不利益変更法理に照らして合理的なものである必要があります。


3-13

(Q)年次有給休暇管理簿に記載すべき「日数」とは何を記載すべきですか。
また、電子機器を用いて磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク等により年次有給休暇管理簿を調整することはできますか。

(A)年次有給休暇管理簿に記載すべき「日数」としては、労働者が自ら請求し取得したもの、使用者が時季を指定し取得したもの又は計画的付与により取得したものにかかわらず、実際に労働者が年次有給休暇を取得した日数(半日単位で取得した回数及び時間単位で取得した時間数を含みます。)を記載する必要があります。
また、労働者名簿、賃金台帳と同様の要件を満たした上で、電子機器を用いて磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク等により調整することは差し支えありません。


3-14

(Q)使用者による時季指定(法第 39 条第7項)について、就業規則に記載する必要はありますか。

(A)休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項であるため、使用者による時季指定(法第 39 条第7項)を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載する必要があります。


就業規則の規定例
第○条
1~4(略)(※厚生労働省ホームページのモデル就業規則をご参照ください。)
5  第1項又は第2項の年次有給休暇が 10 日以上与えられた労働者に対しては、第3項の規定にかかわらず、付与日から1年以内に、当該労働者の有する年次有
給休暇日数のうち5日について、会社が労働者の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。ただし、労働者が第3項又は第4項の規定による年次有給休暇を取得した場合においては、当該取得した日数分を5日から控除するものとする。


3-15

(Q)2019 年4月より前(例えば 2019 年 1 月)に 10 日以上の年年次有給休暇を付与している場合には、そのうち5日分について、2019 年4月以後に年5日確実に取得させる必要がありますか。

(A)改正法が施行される 2019 年4月1日以後、最初に年 10 日以上の年次有給休暇を付与する日(基準日)から、年5日確実に取得させる必要があります。よって、2019 年4月より前に年次有給休暇を 10 日以上付与している場合は、使用者に時季指定義務が発生しないため、年5日確実に取得させなくとも、法違反とはなりません。


3-16

(Q)4月1日に入社した新入社員について、法定どおり入社日から6か月経過後の 10 月1日に年休を付与するのではなく、入社日に 10 日以上の年次有給休暇を付与し、以降は年度単位で管理しています。このような場合、基準日はいつになりますか。

(A)この場合、4月1日が基準日となります。


3-17

(Q)今回の法改正を契機に、法定休日ではない所定休日を労働日に変更し、当該労働日について、使用者が年次有給休暇として時季指定することはできますか。

(A)ご質問のような手法は、実質的に年次有給休暇の取得の促進につながっておらず、望ましくないものです。


3-18

(Q)出向者については、出向元、出向先どちらが年5日確実に取得させる義務を負いますか。

(A)在籍出向の場合は、労働基準法上の規定はなく、出向元、出向先、出向労働者三者間の取り決めによります。(基準日及び出向元で取得した年次有給休暇の日数を出向先の使用者が指定すべき5日から控除するかどうかについても、取り決めによります。)
移籍出向の場合は、出向先との間にのみ労働契約関係があることから、出向先において 10 日以上の年次有給休暇が付与された日から1年間について5日の時季指定を行う必要があります(なお、この場合、原則として出向先において新たに基準日が特定されることとなり、また、出向元で取得した年次有給休暇の日数を出向先の使用者が指定すべき5日から控除することはできません。)。
なお、基準日から1年間の期間の途中で労働者を移籍出向させる場合(※1、※2)については、以下の3つの要件を満たすときは、出向前の基準日から1年以内の期間において、出向の前後を通算して5日の年次有給休暇の時季指定を行うこととして差し支えありません。なお、この場合、出向先が年次有給休暇の時季指定義務を負うこととなります。
① 出向時点において出向元で付与されていた年次有給休暇日数及び出向元における基準日(※3)を出向先において継承すること
② 出向日から6か月以内に、当該労働者に対して 10 日以上(①で継承した年次有給休暇日数を含む。)の年次有給休暇を出向先で付与すること。すなわち、出向先における雇入れから6か月以内に、10 日以上の年次有給休暇を取得する権利が当該労働者に保障されていること。
③ 出向前の期間において、当該労働者が出向元で年5日の年次有給休暇を取得していない場合は、5日に不足する日数について、出向元における基準日から1年以内に出向先で時季指定する旨を出向契約に明記していること

※1 移籍出向先から出向元へ帰任する場合も同様です。

※2 労働者が海外企業に出向する場合や、出向先で役員となる場合については、6-1をご参照ください。

※3 出向した翌年の基準日は、出向元における基準日の1年後となります。


3-19

(Q)年5日の取得ができなかった労働者が1名でもいたら、罰則が科されるのでしょうか。

(A)法違反として取り扱うこととなりますが、労働基準監督署の監督指導において、法違反が認められた場合は、原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていただくこととしています。


3-20

(Q)使用者が年次有給休暇の時季指定をするだけでは足りず、実際に取得
させることまで必要なのでしょうか。

(A)使用者が5日分の年次有給休暇の時季指定をしただけでは足りず、実際に基準日から1年以内に年次有給休暇を5日取得していなければ、法違反として取り扱うことになります。


3-21

(Q)年次有給休暇の取得を労働者本人が希望せず、使用者が時季指定を行っても休むことを拒否した場合には、使用者側の責任はどこまで問われるのでしょうか。
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(A)使用者が時季指定をしたにもかかわらず、労働者がこれに従わず、自らの判断で出勤し、使用者がその労働を受領した場合には、年次有給休暇を取得したことにならないため、法違反を問われることになります。
ただし、労働基準監督署の監督指導において、法違反が認められた場合は、原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていただくこととしています。


3-22
(Q)休職している労働者についても、年5日の年次有給休暇を確実に取得させる必要がありますか。

(A)例えば、基準日からの1年間について、それ以前から休職しており、期間中に一度も復職しなかった場合など、使用者にとって義務の履行が不可能な場合には、法違反を問うものではありません。


3-23

(Q)期間中に契約社員から正社員に転換した場合の取扱いについて教えてください。

(A)対象期間中に雇用形態の切り替えがあったとしても、引き続き基準日から1年以内に5日取得していただく必要があります。
※ なお、雇用形態の切り替えにより、基準日が従来よりも前倒しになる場合(例えば、契約社員の時の基準日は 10/1だったが、正社員転換後は基準日が4/1に前倒しになる場合)には、5日の時季指定義務の履行期間に重複が生じます。
そのような場合の取扱いについては、パンフレット「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」P9をご参照ください。


3-24

(Q)使用者が時季指定した年次有給休暇について、労働者から取得日の変更の申出があった場合には、どのように対応すればよいでしょうか。また、年次有給休暇管理簿もその都度修正しなくてはいけないのでしょうか。

(A)労働者から取得日の変更の希望があった場合には、再度意見を聴取し、できる限り労働者の希望に沿った時季とすることが望ましいです。また、取得日の変更があった場合は年次有給休暇管理簿を修正する必要があります。


3-25

(Q)管理監督者にも年5日の年次有給休暇を確実に取得させる必要があるのでしょうか。

(A)管理監督者についても、年5日の年次有給休暇を確実に取得させる義務の対象となります。


3-26

(Q)使用者による時季指定義務は、中小企業にも適用されますか。

(A)使用者による時季指定義務は、企業規模にかかわらず全ての事業場に適用されます。


3-27

(Q)法定の年次有給休暇の付与日数が 10 日に満たないパートタイム労働者について、法を上回る措置として 10 日以上の年次有給休暇を付与している場合についても、年5日確実に取得させる義務の対象となるのでしょうか。

(A)ご質問の場合は、法定の年次有給休暇の付与日数が 10 日に満たないため、年5日確実に取得させる義務の対象とはならず、使用者が年次有給
休暇の取得時季を指定することはできません。


3-28

(Q)年次有給休暇の一部を基準日より前の日から与える場合(則第 24 条の5第4項の適用を受ける場合)、通達(平成6年1月4日付け基発第1号)により、次年度の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げることとなり、次年度においては年次有給休暇の付与期間に重複が生じるため、則第 24 条の5第2項の特例を適用することになるのでしょうか。

(A)ご見解のとおりです。具体例としては以下のような場合が考えられます。

【例】4月1日に入社した労働者に対して、入社日に5日の年次有給休暇を付与し、同年7月1日にさらに5日の年次有給休暇を付与する場合
① この場合は、入社年の7月1日(第一基準日)からの1年間において5日の年次有給休暇を取得させなければなりませんが、則第 24 条の5により、同年4月1日から同年7月1日までの間に労働者が取得した年次有給休暇の日数分については、使用者による時季指定を要しません。
② 翌年の基準日(第二基準日)は、従来であれば7月1日となりますが、入社年において法定の年次有給休暇の付与日数を一括して与えるのではなく、その日数の一部を法定の基準日から6か月間繰り上げていることから、通達(平成6年1月4日付け基発第1号)により、第二基準日も6か月間繰り上げ、4月1日となります。
③ 上記①及び②より、使用者による時季指定の義務を履行すべき期間は、入社年の7月1日からの1年間と翌年4月1日からの1年間となり、期間が重複します。
④ このため、則第 24 条の5第2項の特例を適用することとなり、入社年の7月1日から翌々年の3月 31 日までの 21 か月について、9日(21÷12×5=8.75)の時季指定を行うこととなります。
※ 詳しくは、パンフレット「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」P10 をご参照ください。パンフレット全体は、以下のURLからご覧いただけます。

(参考)平成6年1月4日付け基発第1号(抜粋)
イ 斉一的取扱いや分割付与により法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である八割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤した
ものとみなすものであること。
ロ 次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上
げること。


3-29

(Q)派遣労働者については、派遣元・派遣先のどちらで年次有給休暇の時季指定や年次有給休暇管理簿の作成を行えばよいでしょうか。

(A)派遣労働者については、派遣元で年次有給休暇の時季指定や年次有給休暇管理簿の作成を行います。


3-30

(Q)年次有給休暇管理簿は、いつから作成する必要がありますか。また、基準日よりも前に、10 労働日の年次有給休暇のうち一部を前倒しで付与している場合(分割付与の場合)は、いつから作成する必要がありますか。

(A)改正後の法及び則のうち、年次有給休暇に関する規定については、2019年4月1日以後の最初の基準日から適用されます。
年次有給休暇管理簿については、法定の年次有給休暇が付与されるすべての労働者について、2019 年4月1日以後の最初の基準日から作成していただく必要があります。
なお、基準日よりも前に、10 労働日の年次有給休暇のうち一部を前倒しで付与している場合(分割付与の場合)については、年次有給休暇の付与日数や取得状況を適切に管理する観点から、最初に分割付与された日から年次有給休暇管理簿を作成していただく必要があります。


3-31
(Q)年次有給休暇管理簿は、労働者名簿又は賃金台帳とあわせて調整することができますが、例えば、労働者名簿に「入社日」、賃金台帳に「時季」と「日数」、就業規則に雇入れ後6か月経過日が「基準日」となる旨の記載があれば、それらをもって年次有給休暇管理簿を作成したものとして認められますか。

(A)年次有給休暇管理簿では、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにする必要があり、則第 55 条の2では、使用者は、年次有給休暇管理簿、労働者名簿又は賃金台帳をあわせて調整することができるとされています。
ご質問のような方法では、労働者名簿と賃金台帳だけでは労働者ごとの基準日を直ちに確認することができないため、年次有給休暇管理簿を作成したものとは認められません。


3-32

(Q)年次有給休暇管理簿について、当社では勤怠管理システムの制約上、年次有給休暇の基準日、日数及び時季を同じ帳票で出力することができません。このような場合でも、年次有給休暇管理簿を作成したものとして認められますか。

(A)基準日、日数及び時季が記載されたそれぞれの帳票を必要な都度出力できるものであれば、年次有給休暇管理簿を作成したものとして認められます。


3-33

(Q)使用者による時季指定によって年5日の年次有給休暇を取得させた代わりに、精皆勤手当や賞与を減額することはできますか。

(A)年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをすることは禁止されており(法第 136 条)、精皆勤手当や賞与を減額することはできません。


3-34

(Q)当社では、法定の年次有給休暇に加えて、取得理由や取得時季が自由で、年次有給休暇と同じ賃金が支給される「リフレッシュ休暇」を毎年労働者に付与し、付与日から1年間利用できることとしています。
この「リフレッシュ休暇」を取得した日数分については、使用者が時季指定すべき年5日の年次有給休暇の日数から控除してよいでしょうか。

(A)ご質問の「リフレッシュ休暇」は、毎年、年間を通じて労働者が自由に取得することができ、その要件や効果について、当該休暇の付与日(※)からの1年間において法定の年次有給休暇の日数を上乗せするものであれば、当該休暇を取得した日数分については、使用者が時季指定すべき年5日の年次有給休暇の日数から控除して差し支えありません。
※ 当該休暇の付与日は、法定の年次有給休暇の基準日と必ずしも一致している必要はありません。

4 労働条件の明示の方法関係

4-1

(Q)労働者が希望した場合には、ファクシミリや電子メール等で労働条件を明示することができるようになりますが、口頭により希望することも認められますか。また、労働者の希望の有無について、明示をするときに個別に確認する必要がありますか。

(A)則第5条第4項の「労働者が(中略)希望した場合」とは、労働者が使用者に対し、口頭で希望する旨を伝達した場合を含むと解されますが、法第 15 条の規定による労働条件の明示の趣旨は、労働条件が不明確なことによる紛争を未然に防止することであることに鑑みると、紛争の未然防止の観点からは、労使双方において、労働者が希望したか否かについて個別に、かつ、明示的に確認することが望ましいです。


4-2

(Q)今回の改正により、電子メール等の送信により労働条件を明示することが可能となりますが、「電子メール等」には具体的にどのような方法が含まれますか。

(A)「電子メール等」とは、以下のものが含まれます。
① パソコン・携帯電話端末による E メール、Yahoo!メールや Gmail といったウェブメールサービス、
② +メッセージ等の RCS(リッチ・コミュニケーション・サービス)や、SMS(ショート・メール・サービス)、
③ LINE や Facebook 等の SNS メッセージ機能
が含まれます。
なお、上記②の RCS や SMS については、PDF 等の添付ファイルを送付することができないこと、送信できる文字メッセージ数に制限等があり、また、前提である出力による書面作成が念頭に置かれていないサービスであるため、労働条件明示の手段としては例外的なものであり、原則として上記①や③による送信の方法とすることが望ましいです。
また、労働者が開設しているブログ、ホームページ等への書き込みや、SNS の労働者のマイページにコメントを書き込む行為等、特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、第三者が特定個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものについては、「電子メール等」には含まれません。


4-3

(Q)電子メール等の送信によって労働条件を明示する場合、労働者が電子メールの受信を拒否しているケースも想定されますが、「送信」の具体的な考え方を教えてください。
また、電子メール等の中には Gmail や LINE など、受信した内容が労働者本人の利用する通信端末機器自体には到達せず、メールサーバー等においてデータが管理される場合がありますが、その場合は、メールサーバー等に到達した時点で送信されたことになるのでしょうか。

(A)労働者が受信拒否設定をしていたり、電子メール等の着信音が鳴らない設定にしたりしているなどのために、個々の電子メール等の着信の時点で、相手方である受信者がそのことを認識し得ない状態であっても、受信履歴等から電子メール等の送信が行われたことを受信者が認識しうるのであれば、送信をしたことになります。
また、web メールサービスや SNS 等において、本人の通信端末機器に受信した内容が到達していなくても、メールサーバー等に到達していれば、電子メール等の送信が行われたことを受信者が認識し得る状態にあると判断できるため、認められます。
なお、労働条件の明示を巡る紛争の未然防止の観点から、使用者があらかじめ労働者に対し、当該労働者の端末等が上記の設定となっていないか等を確認することや、web メールサービスや SNS 等については上記のような特色があることから、実際に労働者本人が着信できているか確認するように促すこと等の対応を行うことが望ましいです。


4-4

(Q)明示しなければならない労働条件の範囲は、以前から変更はありますか。

(A)今回の改正省令については、労働条件の明示方法について改正を行うものであることから、明示しなければならない労働条件の範囲について変更を加えるものではありません。


4-5

(Q)LINE 等の SNS を利用する場合、PDF 等のファイルを添付せずに、本文に直接入力することは可能ですか。

(A)本文に直接入力する場合でも、紙による出力が可能であれば、「出力することにより書面を作成することができる」ものに該当しますが、労働条件の明示を巡る紛争の未然防止及び書類管理の徹底の観点から、モデル労働条件通知書へ記入し、電子メール等に添付し送信する等、可能な限り紛争を防止しつつ、書類の管理がしやすい方法とすることが望ましいです。


4-6

(Q)「出力することにより書面を作成することができるものに限る」とは、プリンターの保有状況等、個人的な事情を指しますか。それとも世間一般的に出力可能なことを指しますか。

(A)則第5条第4項の要件は「当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるもの」であり、あくまで書面を作成するかどうかは当該労働者個人の判断に委ねられていることから、当該労働者の個人的な事情によらず、一般的に出力が可能な状態であれば、「当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるもの」に該当します。


4-7

(Q)電子メール等による送信をする場合、署名は必要ですか。

(A)電子メール等による送信の方法による明示を行う場合においても、書面による交付と同様、明示する際の様式は自由であり、使用者の署名や押印は義務付けられていませんが、紛争の未然防止の観点から、例えば、原則の書面の交付による明示の際には押印している等の事情があれば、電子メール等による送信の方法の際にも署名等をすることが望ましいです。

過半数代表者関係

5-1
(Q)労働者の過半数を代表する者が労使協定等に関する事務を円滑に遂行することができるようにするために、使用者に求められる「必要な配慮」(則第6条第4項)にはどのようなものが含まれますか。

(A)則第6条第4項の「必要な配慮」には、例えば、過半数代表者が労働者の意見集約等を行うに当たって必要となる事務機器(イントラネットや社内メールを含みます。)や事務スペースの提供を行うことが含まれます。

6 その他

6-1
(Q)労働者が海外企業に出向する場合や、出向先で役員となる場合の時間外労働の上限規制及び年次有給休暇の時季指定義務の考え方を教えてください。

(A)ご質問については、個別の事情に応じて判断されるものですが、一般的には、いずれの場合も出向先において法が適用されないため、出向している期間については、時間外労働の上限規制及び年次有給休暇の時季指定義務の対象とはなりません。
また、労働者が海外企業に出向する場合や、出向先で役員となる場合は、年次有給休暇の時季指定義務については、出向前の期間(すなわち、法が適用される期間)において、労働者に5日の年次有給休暇を取得させる必要があります。(ただし、海外企業に在籍出向する場合においては、出向元、出向先、出向労働者三者間の取り決めにより、出向前の基準日から1年以内の期間において、出向の前後を通算して5日の年次有給休暇の時季指定を行うこととしても差し支えありません。)