社会保険労務士川口正倫のブログ

横浜市の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ

【性差別】三陽物産事件(東京地判平成6.6.16労判651号15頁)

三陽物産事件(東京地判平成6.6.16労判651号15頁)

参照法条 : 労働基準法4条
裁判年月日 : 1994年6月16日
裁判所名 : 東京地
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成3年 (ワ) 5511、平成4年 (ワ) 14509 

1.事件の概要

Y社では、非世帯主および独身の世帯主の従業員にはみなし年齢(25歳または26歳)の本人給を、家族を有する世帯主の従業員には実年齢に応じた本人給を支払うという基準を立て、40歳代後半の女性従業員Xらに対し、非世帯主に当たるとして、同年齢の男性従業員に比して低い賃金を支給していた。Xらは男性従業員と同様に実年齢に応じた賃金の支払いを求めて提訴した。

2.判決の概要

世帯主・非世帯主の基準は、形式的にみる限りは、男女の別によって本人給に差を設けるものではないが、Y社は、世帯主・非世帯主の基準を設けながらも、実際には、男子従業員については、非世帯主又は独身の世帯主であっても、女子従業員とは扱いを異にし、一貫して実年齢に応じた本人給を支給してきているうえ、少なくとも、現在における社会的現実は、結婚した男女が世帯を構成する場合、一般的に男子が住民票上の世帯主になるというのが公知の事実である。その結果、世帯主・非世帯主の基準を適用するならば、女子従業員は、独身である間は非世帯主又は独身の世帯主の立場にあり、結婚すれば非世帯主の立場にあるということで、結局、終始本人給を据え置かれることになる。Y社は社会的現実及び被告の従業員構成を認識しながら、世帯主・非世帯主の基準の適用の結果生じる効果が女子従業員に一方的に不利益となることを容認して右基準を制定したものと推認することができ・・・(中略)女子であることを理由に賃金を差別したものというべきであるから、世帯主・非世帯主の基準は、労働基準法4条の男女同一賃金の原則に反し、無効である。

余談
住宅手当や扶養手当等にも、世帯主・非世帯主基準が用いられるがこれは夫婦共働きの場合には、収入が高いほう=世帯主にのみ支給するという趣旨から設けられる。また、会社によっては社会保険扶養に配偶者を入れていることが条件となるケースもある(扶養を外れると夫の住宅手当5万円が支給されなくなるため、働きたくても働けないという話も聞いたことがある。)。現在は、共働きがむしろ標準となりつつあり、労働力確保のため政府もこれを進めていることから、これらの手当も夫婦両方がそれぞれの勤務先から支給を受けることを想定した設計にすべきであろう。(両方が支給を受けるのであれば、単身生計者と同等な条件が妥当である)

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