社会保険労務士川口正倫のブログ

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【性差別】秋田相互銀行事件(秋田地判昭和50.4.10労民集26巻2号388頁)

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秋田相互銀行事件(秋田地判昭和50.4.10労民集26巻2号388頁)

参照法条 : 労働基準法4条,11条
裁判年月日 : 1975年4月10日
裁判所名 : 秋田地
裁判形式 : 判決
事件番号 : 昭和46年 (ワ) 210 

1.事件の概要

Yでは男性従業員に対しては(1)表またはA表に基づく本人給を、女性従業員に対しては(2)表またはB表に基づく本人給を支払っていた。女性従業員であるXらは、このような賃金制度は違法無効であるとして、男性従業員と同一の賃金の支払いを求めて提訴した。当該制度について、Y社は標準生計費的な扶養家族の有無によって区別していると主張していた。

2.判決の概要

扶養家族の有無にかかわらず、男子行員には・・・(中略)(1)表またはA表に掲げる金額が年齢に応じ支払われ、女子行員には・・・(中略)(2)表またはB表に掲げる金額が年齢に応じ支払われたこと、・・・(中略)扶養家族を有する男子行員には同年度の(1)表に掲げる金額が年齢に応じて支払われ、扶養家族がない男子行員には同(2)表に掲げる金額が年齢に応じて支払われるものとしたうえ、調整給が支払われ、結局同(1)表に掲げる金額が年齢に応じて支払われた場合と同額の金額が本人給として支払われたこと・・・(中略)以上のような事実を総合すれば、他に特段の事情の認められない限りは、Y社において、Xらが女子であることを理由として、賃金(本人給および臨時給与)について、男子と差別的取扱をしたものであると推認することができる。そして、労働契約において、使用者が、労働者が女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱いをした場合には、労働契約の右の部分は、労働基準法4条に違反して無効であるから、女子は男子に支払われた金額との差額を請求することができるものと解するのを相当とする。なぜなら、労働基準法で定められ、無効となった部分は、労働基準法で定める基準による旨の労働基準法13条の趣旨は、同法4条違反のような重大な違反がある契約については、より一層この無効となった空白の部分を補充するためのものとして援用することができるものとみなければならないからである。

3.解説

労働基準法4条違反の場合は、男女どちらか優遇された方の賃金をこの法律で定める基準とみなして、労働基準法第13条前段により無効としてうえで、無効となった部分については、同様に優遇された方の賃金をこの法律で定める基準とみなして、同条後段により、直律的に差額を請求することができるという見解を示した判例
労働基準法の直律的効力と補充的効力は、本来、最低基準に満たない場合に適用されるが、男女同一賃金の原則のような重大な違反がある契約については、より一層無効・空白となる部分を補充する必要性が高いことから、援用することができるものとした。


(男女同一賃金の原則)
労働基準法第4条  使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

(この法律違反の契約)
労働基準表第13条  この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。

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