社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【性差別】日産自動車事件(最三小判昭和56.3.24民集35巻2号300頁)

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日産自動車事件(最三小判昭和56.3.24民集35巻2号300頁)

参照法条 : 労働基準法3条、民法90条
裁判年月日 : 1973年3月12日
裁判所名 : 東京高
裁判形式 : 判決
事件番号 : 昭和46年 (ネ) 1114

1.事件の概要

Y社の就業規則には、「従業員は、男子満55歳、女子満50歳をもって定年として、男子は満55歳、女子は満50歳に達した月の末日をもって退職させる。」との規定が置かれていたところ、Y社は当該規準に当てはまる女性従業員であるXらに対し退職を命じた。Xらは雇用契約上の地位の確認を求めて提訴した。

2.判決の概要

原審は、Y社においては、女子従業員の担当職務は相当広範囲にわたっていて、従業員の努力とY社の活用策いかんによっては貢献度を挙げうる職種が数多く含まれており、女子従業員各個人の能力等の評価を離れて、その全体をY社に対する貢献度の上がらない従業員と断定する根拠はないこと、しかも、女子従業員について労働の質量が向上しないのに実質賃金が上昇するという不均衡が生じていると認めるべき根拠はないこと、少なくとも60歳前後までは、男女とも通常の職務であれば企業経営上要求される職務遂行能力に欠けるところはなく、各個人の労働能力の差異に応じた取扱がされるのは格別、一律に従業員として不適格とみて企業外へ排除するまでの理由はないことなど、Y社の企業経営上の観点から定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由は認められない旨判断したものであり・・・(中略)正当として是認することができる。そうすると、・・・(中略)Y社の就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効であると解するのが相当である。

3.解説

今では当たり前であるが、男女別定年制を性別のみによる不合理な差別を定めたものとして、違法とする見解を最高裁が初めて示した判決。


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