社会保険労務士川口正倫のブログ

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【性差別】住友セメント事件(東京地判昭和41.12.20労民集17巻6号1407頁)

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住友セメント事件(東京地判昭和41.12.20労民集17巻6号1407頁)

参照法条 : 労働基準法3条,4条,民法90条,1条の2,日本国憲法14条
裁判年月日 : 1966年12月20日
裁判所名 : 東京地
裁判形式 : 判決
事件番号 : 昭和39年 (ワ) 10401 

1.事件の概要

Xを雇用するY社では、女性労働者の採用に当たり、「結婚又は満35歳に達したときは退職する」旨の念書を提出させ、女性労働者が結婚したときには解雇しうることとしていた。Xについても、本採用前に念書を提出させていたところ、結婚後、退職しなかったために、解雇した。Xは雇用契約上の地位の確認を求めて提訴した。

2.判決の概要

両性の本質的平等を実現すべく、国家と国民との関係のみならず、国民相互の関係においても性別を理由とする合理性なき差別待遇を禁止することは、法の根本原理である。憲法14条は国家と国民との間において、民法1条2(現行民法2条)は国民相互の関係においてこれを直接明示する。労働基準法3条は国籍、信条又は社会的身分を理由とする差別を禁止し、同法4条は性差別を理由とする賃金の差別を禁止する。ところで、労基法上性別を理由として賃金以外の労働条件の差別を禁止する規定はなく、かえって、同法19条、61条ないし68条等は女子の保護のため男子と異なる労働条件を定めている。したがって、労働基準法は性別を理由とする労働条件の合理的差別を許容する一方、前示の根本原理に鑑み、性別を理由とする合理性を欠く差別を禁止するものと解させられる。・・・(中略)この禁止は労働法の公の秩序を構成し、労働条件に関する性別を理由とする合理性を欠く差別待遇を定める労働協約就業規則、労働契約は、いずれも民法90条に違反しその効力を生じない。

3.解説

当時、男女平等を直接規定している法律は、憲法14条1項(平等原則)と労働基準法4条(男女同一賃金の原則)があっただけで、これらの法律だけでは私人間を規範となるべき民法1条2(現行民法2条)の定める「個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。」に沿った結論を導くことはできなかった。そこで、労働条件に関する性別を理由とする合理性を欠く差別待遇は、民法の一般条項である民法90条(公序良俗)を用いて違反との見解を示したのが本件である。

(解釈の基準)
民法第2条
この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。

(公序良俗)
民法第90条
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

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