社会保険労務士川口正倫のブログ

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【懲戒解雇】東京メトロ事件(東京地判平成27.12.25労判1133号5頁)

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東京メトロ事件(東京地判平成27.12.25労判1133号5頁)

参照法条 : 労働契約法15条
裁判年月日 : 2015年12月25日
裁判所名 : 東京地
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成26年(ワ)第27027号

1.事件の概要

旅客鉄道事業の運営等を営むY社に勤務していたXは、Y社の路線内で痴漢行為を行ない、迷惑防止条例違反で逮捕され、簡易裁判所で罰金20万円の略式命令を受けた。Y社は会社の名誉を損なったとして、平成26年4月25日付けでXを諭旨解雇処分とした。これに対して、Xが処分の無効並びに従業員としての地位確認を求めて提訴したのが本件である。

2.判決の概要

従業員の私生活上の非行であっても、会社の企業秩序に直接の関連を有するもの及び企業の社会的評価の毀損をもたらすと客観的に認められるものについては、企業秩序維持のための懲戒の対象となり得るものというべきである。・・・(中略)本件行為は、他の鉄道会社とともに痴漢行為の撲滅に積極的に取り組むY社が運行する電車の中で行われたものであるというのである。かかる点にかんがみれば、・・・(中略)本件行為は、Yにおける懲戒の対象となり得るものというべきである。他方、本件行為につき、略式命令を請求されるにとどまり、かつ、本件略式命令についても、罰金20万円の支払を命じられるにとどまった・・・(中略)本件行為の内容、態様等に加え、本件行為に対する処罰の根拠規定・・・(中略)が定める法定刑が6月以下の懲役または50万円以下の罰金であることをも併せ考えれば、本件行為のような痴漢行為が許されないものであることは当然であるものの、本件行為は、上記規定による処罰の対象となり得る行為の中でも、悪質性の比較的低い行為であるというべきである。・・・(中略)本件行為ないし本件行為に係る刑事手続についてマスコミによる報道がされたことはなく、その他本件行為が社会的に周知されることはなかった。
 以上にかんがみれば、本件行為がYの企業秩序に対して与えた具体的な悪影響の程度は、大きなものではなかったというべきであり、Y社が他の鉄道会社とともに本件行為の当時に痴漢行為の撲滅に向けた取組を積極的に行っており、Xが本件事故の当時駅係員として勤務していた、といった各点を考慮しても、なお、本件行為に係る懲戒処分として、諭旨解雇というXのY社における身分を失わせる処分をもって臨むことは、重きに失するといわざるを得ない。

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