社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



日立、無期転換求めた女性社員に解雇通告(日立型と東芝型の雇止めの法理)

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雇い止めの法理と日立製作所東芝の関係

 

headlines.yahoo.co.jp

 (上記のリンクからの引用です)

 日立製作所が、5年を超えて有期雇用で働き、無期雇用への転換を求めた40代の女性社員に対し、今月末での解雇を通告したことがわかった。「無期転換」は有期雇用で5年を超えて働く労働者に法律で認められた権利で、女性社員は昨年6月に「無期転換」を申請し、今年4月から無期雇用になる予定だった。日立は事業の縮小を解雇の理由に挙げているが、女性側は「無期転換逃れだ」として解雇の撤回を求めている。(中略)

この女性社員は、日立製作所派遣社員として約10年間勤務した後、12年10月に半年間の有期契約で日立に入社。13年4月以降は、半年または1年間の契約を更新して、有期雇用で働いてきた。(中略)

女性社員によると、日立に無期転換を申し込んだのは18年6月。同年11月には、日立が準備した申請書に勤務地の変更や残業を受け入れると記入して提出したが、翌12月に「19年4月以降は仕事がなくなる」と説明された。日立は今年2月、契約社員就業規則の「業務上の都合」に基づいて3月31日付での解雇を通知した。無期転換を申し込んだ別の横浜研究所の社員にも、同日付で解雇を通知したという。

 

 

言語道断。コンプライアンスという意識が全く無いんですかね。

恐らく、人事管理の責任者が無期雇用転換権が発生する前に雇止めするのを失念していたんですね。そして、解雇にしないと自分の立場も危うくなるでしょうから、なりふり構ってられないのでしょうね。(全て私の想像ですので悪しからず)

 

労働法を勉強していると、雇止めといえば「日立」と「東芝という企業名が、すぐ頭に浮かぶくらい有名な判例があるので、少々不謹慎かも知れませんが、この記事を目にして噴出しそうになりました。

こちらがその判例です。どちらも最高裁まで争っていて労働法の超基本的な判例です。

日立メディコ事件 最一小判昭和61.12.4労判486号6頁

東芝柳町工場事件 最一小判昭和49.7.22民集28巻5号927頁

 

ちなみ、いわゆる雇止めの法理のうち、有期雇用契約が期間の定めのない契約と実質的に同視できない場合でも,作業内容・更新回数などから雇用継続が期待されていた場合には,解雇権濫用法理が類推適用されるという論法を「日立型」ということがあります。

また、有期雇用契約が期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していて、雇止めの意思表示は、実質において解雇の意思表示にあたる場合には、解雇権濫用法理が適用されるという論法を東芝型」ということがあります。

どちらの論法も現在は労働契約法に反映されており、労働契約法第19条第1号が「東芝型」、第2号が「日立型」となります。

 

労働契約法

(有期労働契約の更新等)
第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。