社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【安全配慮義務】川義事件(最三小判昭和59.4.10民集38巻6号557頁)

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川義事件(最三小判昭和59.4.10民集38巻6号557頁)

参照法条 : 労働基準法2章、民法415条
裁判年月日 :1984年4月10日
裁判所名 : 最高三小
裁判形式 : 判決
事件番号 : 昭和58年 (オ) 152

1.事件の概要

訴外Aは、繊維製品などの卸売業であるY社の従業員であり、鉄筋コンクリート造りのY社の社屋で宿直していたところ、知り合いである元従業員Bが訪問したので、AがBを社屋にいれたところ、隙を見て襲われ、殺害された。Bの訪問はY社の商品の窃取と目的としていた。そこで、Aの両親がY社に対して損害賠償を請求した。第一審、第二審、いずれも請求を認容した。そこで、Y社が上告した。

2.判決の概要

雇用契約は、労働者の労務提供と使用者の報酬支払をその基本内容とする双務有償契約であるが、通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、使用者は、右の報酬支払義務にとどまらず、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負っているものと解するのが相当である。宿直勤務の場所である本件社屋内に、宿直勤務中に盗賊等が容易に侵入できないような物的設備を施し、かつ、万一盗賊が侵入した場合は盗賊から加えられるかも知れない危害を免れることができるような物的施設を設けるとともに、これら物的施設等を十分に整備することが困難であるときは、宿直員を増員するとか宿直員に対する安全教育を十分に行うなどし、もって右物的施設等と相まって労働者たるAの生命、身体等に危害が及ばないように配慮する義務があったものと解すべきである。


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