1.事件の概要
POPパネル製造をしていたY社は、A社との間で業務委託契約を締結していた。XはA社の従業員として、Y社の工場に勤務していたが、その勤務形態はいわゆる偽装請負と目されるものであった。XおよびXが所属する労働組合はY社に直接雇用を求めて交渉を行い、労働局の指導もありY社はA社との業務請負契約を解消し、労働者派遣に切り替えることとした。Xは派遣労働者とはならなずY社との間で期間工としての雇用契約に署名押印したが、Y社はXに対して雇用契約の終了を通知した。
これを受けて、XはY社に対して、XY間の黙示の労働契約、労働者派遣法に基く労働契約の成立、雇止め無効等の確認および損害賠償を求めて訴えを提起した。第一審はXの請求(損害賠償)を一部認容したので、XY双方が控訴した。
2.判決の概要
仮に、前者を労働者派遣契約、後者を派遣労働契約と見得るとしても・・・(中略)当時は物の製造業務への労働者派遣及び受入は一律に禁止され、その違反に対しては、・・・(中略)派遣元事業者に対する刑事罰が課せられるなどされていたものであって、各契約はそもそも同法に適合した労働者派遣たり得ないものである。そうすると、いずれにしろ、脱法的な労働者供給契約として、職業安定法44条及び中間搾取を禁じた労働基準法6条に違反し、強度の違法性を有し公の秩序に反するものとして、・・・(中略)無効というべきである。
とうすると無効である前期各契約にもかかわらず継続したX・Y間の上記実体関係を法的に根拠づけ得るのは、両者の使用従属関係、賃金支払関係、労務提供関係等の関係から客観的に推認されるX・Y間の労働契約のほかなく、両者の間には黙示の労働契約の成立が認められるというべきである。