社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



関西医科大学事件(最二小判平成17.6.3民集59巻5号939頁)

バナー
Kindle版 職場の出産・育児関係手続ガイドブック~令和の常識~
定価:800円で好評発売中!!


にほんブログ村
続き

関西医科大学事件(最二小判平成17.6.3民集59巻5号939頁)

1.事件の概要

Aは、医師国家試験に合格後医師として登録され、大学病院Yの耳鼻咽喉科において研修医として臨床研修を受けていた。Aは、休診日を除き、原則的に午前7時30分から午後10時まで、Y病院内で指導医の指示に従って臨床研修に従事すべきこととされていたが、研修期間中、奨学金として月額6万円の金員および1回当たり1万円の副直手当を支払っていた。Yは、これらの金員は、給与所得として、源泉徴収を行っていた。ところが、Aは死亡した。
Aの親であるXは、Aは労基法9条の労働者であり、最低賃金法2条1項所定の労働者に当たるにもかかわらず、上記支払いのみでは、最低賃金額を下回る給与額しか受けていないとして、Yに対して、その差額分等を求めて提訴した。第一審、原審ともにXの主張を認めた。そこで、Yが上告した。

2.判決の概要

研修医は、教育的な側面を有しているが、そのプログラムに従い、臨床研修指導医の指導の下に、研修医が医療行為等に従事することを予定している。そして、研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には、これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することになるのであり、病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り、上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たるというべきである。本件病院の耳鼻咽喉科における臨床研修のプログラムは、研修医が医療行為等に従事することを予定しており、Aは、本件病院の休診日等を除き、Yが定めた時間及び場所において、指導医の指示に従って、Yが本件病院の患者に対して提供する医療行為等に従事していたというのであり、これに加えて、Yは、Aに対して奨学金等として金員を支払い、これらの金員につき給与等に当たるものとして源泉徴収まで行っていたというのである。そうすると、Aは、Yの指揮監督の下で労務の提供をしたものとして労働基準法9条所定の労働者に当たり、最低賃金法2条所定の労働者に当たるというべきである。

経営側弁護士による精選労働判例集 第8集 [ 石井 妙子 ]

価格:1,836円
(2019/5/29 21:48時点)
感想(0件)