社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



横浜南労基署長(旭紙業)事件I(最一小判平成8.11.28労判714号14頁)

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横浜南労基署長(旭紙業)事件I(最一小判平成8.11.28労判714号14頁)

1.事件の概要

Xは、自己所有トラックを持ち込み(傭車運転手)、A社B工場において、A会社の製品の運送業に従事していた。Xは、その積込み作業中に足を滑らせて転倒し、障害を負った。そこで、Xは、Y(横浜労基署長)に対し労災保険法所定の療養補償給付の請求をしたところ、YはXが「労働者」に当たらないことを理由に各給付を支給しない処分をした。XはYの不支給処分の取消しを求めて、訴えを提起した。第一審はXの請求を認容したが、原審は第一審判決を取り消して、Xの請求を棄却した。そこで、Xが上告した事案である。

2.判決の概要

右事実関係においては、Xは、業務用機材であるトラックを所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたものである上、A社は、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納付時刻の指示をしていた以外には、Xの業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、時間的、場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、XがY会社の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りないものといわざるを得ない。そして、報酬の支払方法、公租公課の負担等についてみても、Xが労働基準法上の労働者に該当すると解するのを相当とする事情はない。そうであれば、Xは、専属的にA社の製品の運送業務に携わっており、同社の運送係の指示を拒否する自由はなかったこと、毎日の始業時刻及び終業時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって事実上決定されることになること、右運賃表に定められた運賃は、トラック協会が定める運賃表による運送料よりも1割5分程度低い額とされていたことなど原審が適法に確定したその余の事実関係を考慮しても、Xは、労働基準法上の労働者ということはできず、労働者災害保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。

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