社会保険労務士川口正倫のブログ

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タケダシステム事件(最二小昭和58.11.25労判418号21頁)

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タケダシステム事件(最二小昭和58.11.25労判418号21頁)

1.事件の概要

Y社は、電子測定器等の製造販売を業として、従業員46名を雇用する会社であり、Xら9名はいずれもその従業員である。Y社の旧就業規則では、「女子従業員は毎月生理休暇を必要日数だけとることができる。そのうち年間24日を有給とする。」との定めがあり、同日数の生理休暇については、本給1日分の100%が支給されていた。しかし、昭和49年1月23日より、これを「女子従業員は毎月生理休暇を必要日数だけとることができる。そのうち月2回を限度とし、1日につき基本給1日分の68%を補償する。」との定めに変更した。Xらは、この変更は効力を生じないものとし、減額分を未払い賃金として請求した。

2.判決の概要

本件就業規則の変更がXらにとって不利益なものであるとしても、右変更が合理的なものであれば、Xらにおいて、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されないというべきである。そして、右変更が合理的なものであるか否かを判断するに当たっては、変更の内容及び必要性の両面からの考察が要求され、右変更により従業員の被る不利益の程度、右変更との関連の下に行われた賃金の改善状況のほか、上告人主張のように、旧規定の下において有給生理休暇の取得について濫用があり、社内規律の保持及び従業員の公平な処遇のため右変更が必要であったか否かを検討し、更には労働組合との交渉の経緯、他の従業員の対応、関連会社の取扱い、我が国社会における生理休暇制度の一般的状況等の諸事情を総合勘案する必要がある。

3.解説

最高裁が、合理性の具体的な判断要素として、①就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、②使用者側の変更の必要性の内容・程度、③変更後の就業規則の内容自体の相当性、④代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、⑤労働組合等との交渉の経緯、⑥他の労働組合または他の従業員の対応、⑦同種事項に関する我が国社会における一般的状況等の事情を総合考慮すべきでるとの見解を示した判例
なお、労働契約法10条では、合理性の判断要素として、①、②、③、⑤を列挙しており、④、⑥、⑦は規定されていない。しかし、同条は判断要素を限定する趣旨ではないので、④、⑥、⑦も必要に応じて判断要素となることある。

労働契約法10条
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。<<

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