社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



裁量労働制の不適正な運用が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長による指導の実施及び企業名の公表について(H31.1.25基発0125 第1号)

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裁量労働制の不適正な運用が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長による指導の実施及び企業名の公表について〕H31.1.25基発0125 第1号

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今般、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(昭和41年法律第132号)に基づき国が定めた労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(平成30年12月28日閣議決定)において、「労働基準監督制度の適正かつ公正な運用を確保することにより、監督指導に対する企業の納得性を高め、労働基準法等関係法令の遵守に向けた企業の主体的な取組を効果的に促すこととし、そのための具体的な取組として、監督指導の実施に際し、重大な違反事案について指導結果を公表する場合の手続を一層明確化する」旨盛り込まれたところである。

 これを踏まえ、労働基準監督署における監督の結果、事案の態様が法の趣旨を大きく逸脱しており、これを放置することが全国的な遵法状況に悪影響を及ぼすと認められるものについて、都道府県労働局長(以下「局長」という。)が企業の幹部に対して特別に指導を行い、行政の対応を明らかにすることにより、同種事案の防止を図る観点から、その事実を明らかにすることについて、下記のとおり手続を定め、本日より運用することとしたので、この対応に遺憾なきを期されたい。

 

                            記

 

1 取組の概要

 複数の事業場を有する社会的に影響力の大きい企業(中小企業に該当しない企業をいう。以下同じ。)において、裁量労働制の不適正な運用が認められた場合、本社を管轄する局長から、当該企業の経営トップに対して、早期に全社的な是正を図るよう指導を行うとともに、指導を行った事実を公表すること。これにより、経営トップが当該企業の裁量労働制の不適正な運用の問題点を十分理解した上で、自ら率先して、全社的な早期是正に向けた取組を行い、当該企業全体の法定労働条件の履行確保を図るようにするものであること。

なお、当該取組における公表は、その事実を広く社会に情報提供することにより、他の企業における遵法意識を啓発し、法令違反の防止の徹底や自主的な改善を促進させ、もって、同種事案の防止を図るという公益性を確保することを目的とし、対象とする企業に対する制裁として行うものではないこと。

 

2 裁量労働制の運用実態の確認のための監督指導

 複数の事業場を有する社会的に影響力の大きい企業に対する監督指導において、下記アないしウの実態(以下「不適正な運用実態」という。)が認められた場合、当該企業の本社及び支社等に対する全社的な監督指導を実施し、裁量労働制の運用状況を確認すること。なお、支社等については、主要な支社等であって、企業規模及び事案の悪質性等を勘案し、全社的な是正・改善状況を確認するために必要な範囲で決定されるものであること。

 

ア 裁量労働制の対象労働者の概ね3分の2以上について、対象業務に該当しない業務に従事していること。

 

イ 上記アに該当する労働者の概ね半数以上について、労働基準法第32・40条(労働時間)、35条(休日労働)又は37条(割増賃金)の違反(以下「労働時間関係違反」という。)が認められること。

 

ウ 上記イに該当する労働者の1人以上について、1か月当たり100時間以上の時間

外・休日労働が認められること。

 

3 局長による企業の経営トップに対する指導及び企業名の公表

 

(1)本社管轄の局長による指導

 上記2の監督指導において、不適正な運用実態が組織的に複数の事業場で認められる場合であって、当該企業が裁量労働制を相当数の労働者に適用しているときは、当該企業の代表取締役等経営トップを本社管轄の労働局へ呼び出した上で、局長より早期に法違反の是正に向けた全社的な取組を実施することを求める指導書を交付することにより指導すること。

 

(2)企業名の公表

 上記(1)の指導を実施した際に、以下について公表すること。

ア 企業名

イ 裁量労働制の不適正な運用、それに伴う労働時間関係違反等の実態

ウ 局長から指導書を交付したこと

エ 当該企業の早期是正に向けた取組方針

 

 

以 上