社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



労働基準監督署による調査の概要

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労働基準監督署(労基署)による調査の概要についてわかりやすくまとめました

1.労基署による臨検監督

労基署の調査は、労基署から呼び出しが来るものと企業に訪問するものに分けられ、後者を臨検監督といいます。
臨検監督には、定期監督申告監督災害時監督及び再監督があります。

定期監督

定期監督は、臨検監督の中でももっとも一般的な調査で、労基署が独自でつくる年度監督計画によって、任意に対象をリストアップして調査をするものです。
この定期監督は労基署の基本業務であり、企業の労働時間や健康管理などを中心に調べます。
定期監督が行われるときには、電話や書面で事前に通知があり、日程調整をすることが多いですが、突然やってくることもあります。
どの程度深く調査するかは、労働基準監督官によってまちまちですが、調査目的や業種、担当者の態度や書類などから、監督官の判断で進められます。
一般的には、労務担当者との面会、労務関係書類の確認、実際の職場の調査、社員への聞き取りなどが行われます。

なお、定期監督で法令違反が発覚したときは、是正勧告を受けることになります。

申告監督

申告監督は、労働者から申告(通報)を受けた場合に行われる調査です。当然、調査は申告内容を中心に行われ、定期監督よりも厳しいものになります。
通報した人が在職していて不当に扱われる可能性がある場合や本人が秘匿を希望する場合は、定期監督を装って調査が行われます。

災害時監督

災害時監督は、過労死や事故などで一定以上の労災が発生したときに行われる調査です。
災害の実態調査、原因究明及び再発防止指導が行われます。

再監督

再監督は、定期監督後に指摘した事項が改善されていることを確認にするために、再度調査する場合に行われます。
これは、指摘した事柄の改善報告である是正報告書が提出されなかったり、問題があった場合、また労働者から再調査の希望があった場合に実施されます。
再監督によって、是正勧告の内容が改善されていないことが発覚したり、是正報告書の内容に虚偽があったりすると、再監督は厳しいものとなり、逮捕者が出ることもあります。


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2.押えておくべき3つのポイント

企業が調査を受ける際には、知っておくべき3つのポイントあります。

ポイント1 むやみに対応することを絶対に避けること

事前連絡なしにやってきた場合、調査自体を拒否することは原則できませんが、突然やって来たときに労務担当者がいない場合には、その旨を伝えて再訪をお願いすると、応じてもらえることがあります。
よくわからないのに、むやみ対応していまうことは絶対に避けるべきです。
なお、心配であれば再訪までに最寄の社会保険労務士に相談しておくをお勧めします。

ポイント2 法定の必要書類は常に準備しておくこと

要求される書類は個々の調査によって異なりますが、次のものは備え付けが義務付けられており、ほとんどのケースで求められます。

  1. 従業員名簿
  2. 労働契約書または労働条件通知書
  3. 賃金台帳(過去3年分)
  4. 出勤簿・タイムカード(過去3年分)
  5. 就業規則
  6. 時間外・休日労働に関する協定書(36協定)
  7. 変形労働制や採用労働制を採用している場合は、それに関する協定書等
  8. 定期健康診断個人票
  9. 設置されている場合は、安全衛生委員会または衛生委員会の議事録

なお、予告あり調査の場合には、準備しておくべき書類等について事前にお知らせしてくれることもありますが、調査の過程で他の書類の提出を求められる場合もあります。
一般的に、調査の結果に法令違反の事実があれば是正勧告書が交付され、明らかな法令違反でなくても改善の必要がある場合などには指導票が交付されますが、法定の書類がなければそれだけで是正指導の対象になってしまいます。ですので、法定の必要書類は常に常備しておくべきです。

ポイント3 書類の改ざんするなどの行為は絶対に行わないこと

必要書類の準備中にそれまで気が付かなかった違反を見つけたら、すぐに改善して対処するのがベターです。例えば、36協定の期限が切れていることに気づいたら、調査の前に締結して労働基準署に届け出ておくべきです。期限が切れている間に、法定時間外労働をしていたらそれだけで違法ですが、事前に届け出ておくことで改善する意思があることを監督官に示せるからです。(変に隠したりせずに、労基署から調査の連絡があり、書類を確認していたら切れていたことに気づいて提出したと正直に伝えてください。)しかし、36協定の期限が切れていた間のタイムカードや賃金台帳等の書類を改ざんするなどの行為は絶対に行ってはいけません。書類の改ざんなどを行うと、悪質な違法として送検されることにつながりかねないからです。


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3.指導・是正勧告を受けた場合

是正勧告とは

労基署の定期監督や申告監督の際に法令違反があると、労基署は是正勧告書を交付して是正改善を促します。

指導とは

明らかな違反でなくても、改善の必要がある場合などには、指導票が交付され、指導を受けることになります。

是正勧告を受けた企業は、違反事項を改善した後、指定された期日までに是正報告書を労基署に提出しなければなりません。
是正勧告及び指導は、企業に自主的な改善を促すものなので、是正勧告を受けたからといって直ちに処罰を課されるわけではありません。
是正報告書の作成にあたっては、従業員だけでなく、最寄の社会保険労務士などの第三者の意見を聴いて作成するのが良いです。
なお、是正勧告を受けるケースで多いのは、長時間・過重労働とサービス残業などの賃金未払いや健康診断に関するものです。

逮捕・送検されることも

是正勧告は行政指導なので強制的に従わせたり、従わない企業に罰則を課したりするということはありません。
あくまでも企業が自主的に改善するよう促すものです。
この点は、平成31年1月11日公表された「労働基準監督官行動規範」にも示されています。

しかし、重大な法令違反がある、虚偽の報告をする、あるいは再三の勧告にも従わないなど悪質な場合は、再監督が行われます。
再監督でも改善が見られない場合や繰り返し虚偽の報告をした場合などでは、逮捕者が出たり、送検されたりすることもあります。
また、調査段階でも調査自体を妨害して、経営者が逮捕された例もあります。
なお、逮捕されるのは経営者(社長)だけではありません。ケースによっては、中間管理職や直属の上長が逮捕・送検されることもあります。


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