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働き方改革を推進するための法改正後の労働基準法の解釈について(時間外労働の上限規制編)

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働き方改革を推進するための法改正後の労働基準法の解釈について(時間外労働の上限規制編)

平成30年12月28日に厚生労働省労働基準局長より、通達「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について(平成30.12.28基発1228第15号)」が発せられ、平成31年(2019年)4月1日より施行される改正労働基準法等の解釈についての詳細が、QA方式で明らかとされました。
ここでは、時間外労働の上限規制(改正労働基準法第36条及び第139条から第142条)について、抜粋します。

時間外・休日労働協定の対象期間と有効期間

〔問1〕
時間外・休日労働協定の対象期間と有効期間の違いは何か?

〔答1〕
時間外・休日労働協定における対象期間とは、労働基準法第36条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、1年間に限るものであり、時間外・休日労働協定においてその起算日を定めることによって期間が特定される。
これに対して、時間外・休日労働協定の有効期間とは、当該協定が効力を有する期間をいうのであり、対象期間が1年間に限られることから、有効期間は最も短い場合でも原則として1年間となる。また、時間外・休日労働協定について定期的に見直しを行う必要があると考えられることから、有効期間は1年間とすることが望ましい。
なお、時間外・休日労働協定において1年間を超える有効期間を定めた場合の対象期間は、当該有効期間の範囲内において、当該時間外・休日労働協定で定める対象期間の起算日から1年毎に区分した各期間となる。

(補足)*1
時間外・休日労働協定とは36協定のことで、1日、1年間及び1か月の時間外・休日労働の上限を定めるものです。最長が1年間の上限ですので、残業時間をカウントする起算日から1年間が対象期間となります。そして、有効期間はその協定が効力を有する期間なので、最短でも1年間となりますが、労働協約による場合を除き、法的には上限がありません(なお、労働協約は上限が3年ですが、届出については通常の36協定と同様に1年毎に行うよう労働基準監督署で指導されるようです)。ただし、36協定は定期的に見直しを行う必要があることを理由に労働基準監督署は有効期間1年間を指導方針としており、1年を超える期間を定めた36協定は受理してもらえない可能性が高いです。36協定は労働基準監督署に届出て受理してもらうことで効力が生じるため、実務上は有効期間を1年間として締結し、毎年届出るのが無難です。

1日、1か月及び1年以外の期間について協定

〔問2〕
時間外・休日労働協定において、1日、1か月及び1年以外の期間について延長時間を定めることはできるか。定めることができる場合、当該延長時間を超えて労働させた場合は法違反となるか。

〔答2〕
1日、1か月及び1年に加えて、これ以外の期間について延長時間を定めることは可能である。この場合において、当該期間に係る延長時間を超えて労働させた場合は、労働基準法第32条違反となる。

1年単位の変形労働時間制の対象期間の一部が含まれる場合

〔問3〕
対象期間とする1年間の中に、対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働制の対象期間の一部が含まれる場合の限度時間は、月42時間かつ年320時間となるか。

〔答3〕
時間外・休日労働協定で対照時間として定められた1年間の中に、対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制の対象期間が3か月を超えて含まれている場合には、限度時間は月42時間及び年320時間となる。

限度時間等を超える協定の効力

〔問4〕
労働基準法第36条第4項に規定する限度時間又は同条第5項に規定する1か月及び1年についての延長時間の上限(1か月について休日労働を含んで100時間未満、1年について720時間)若しくは月数の上限(6か月)を超えている時間外・休日労働の効力はどうなるのか。

〔答4〕
設問の事項は、いずれも法律において定められた要件であり、これらの要件を満たしていない時間外・休日労働協定は全体として無効である。

(補足)
本問は特別条項付き36協定のことであるが、「全体として無効」とは、恐らく通常の36協定部分も無効とのことと思われます。

対象期間の途中における破棄・再締結

〔問5〕
対象期間の途中で時間外・休日労働協定を破棄・再締結し、対象期間の起算日を当初の時間外・休日労働協定から変更することはできるか。

〔答5〕
時間外労働の上限規制の実効性を確保する観点から、労働基準法第36条第4項の1年についての限度時間及び同条5項の月数は厳格に適用すべきものであり、設問のように対象期間の起算日を変更することは原則として認められない。
なお、複数の事業場を有する企業において、対象期間を全社的に統一する場合のように、やむを得ず対象期間の起算日を変更する場合は、時間外・休日労働協定を再締結した後の期間においても、再締結後の時間外・休日労働協定を遵守することに加えて、当初の時間外・休日労働協定の対象期間における1年の延長時間及び限度時間を超えて労働させることができる月数を引き続き遵守しなければならない。

限度時間を超えて労働させる必要がある場合

〔問6〕
労働基準法第36条5項に規定する「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第3項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合」とは具体的にどのような状態をいうのか。

〔答6〕
「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第3項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合」とは、全体として1年の半分を超えない一定の限られた時期において一時的・突発的に業務量が増える状況等により限度時間を超える労働をさせる必要がある場合をいうものであり、「通常予見することのできない業務量の増加」とは、こうした状況の一つの例として規定されたものである。
その上で、具体的にどうような場合を協定するかについては、労使当事者が事業又は業務の態様等に即して自主的に協議し、可能な限り具体的に定める必要があること。
なお、労働基準法第33条の非常災害等の時間外労働に該当する場合はこれに含まれないこと。

(補足)
労働基準法第33条の非常災害等の時間外労働に該当する場合とは、災害等の際に労働基準監督署から許可を得るか、もしくは事態急迫のため許可を受ける暇がない場合には事後に届け出ることにより、必要な限度で時間外労働及び休日労働を行うことができる制度。この場合は、36協定の締結も不要です。

労働基準法第33条
1.災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。
2.前項ただし書の規定による届出があつた場合において、行政官庁がその労働時間の延長又は休日の労働を不適当と認めるときは、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを、命ずることができる。
3.公務のために臨時の必要がある場合においては、第1項の規定にかかわらず、官公署の事業(別表第一に掲げる事業を除く。)に従事する国家公務員及び地方公務員については、第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。

転勤の場合

〔問7〕
同一企業内のA事業場からB事業場へ転勤した労働者について、①労働基準法第36条第4項に規定する限度時間、②同条第5項に規定する1年についての延長時間の上限、③同条第6項第2号及び第3号の時間数の上限は、両事業場における当該労働者の時間外労働時間を通算して適用するのか。

〔答7〕
労働基準法第36条第4項に規定する限度時間及び②同条第5項に規定する1年についての延長時間の上限は、事業場における時間外・休日労働協定の内容を規制するものであり、特定の労働者が転勤した場合は通算されない。
これに対して、③同条第6項第2号及び第3号の時間数の上限は、労働者個人の実労働時間を規制するものであり、特定の労働者が転勤した場合は労働基準法第38条第1項の規定により通算して適用される。

(補足)
通常の36協定の限度時間、特別条項の1年についての延長の上限及び特別条項が適用された回数については、転勤すると通算されません。
特別条項の1か月の上限(100時間)及び対象期間の初日から1か月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の1か月、2か月、3か月、4か月及び5か月の期間を加えたそれぞれの期間における時間外労働及び休日労働の1か月当たりの平均時間の上限(80時間)は通算されます。

労働基準法38条1
労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

労働基準法第36条第6項第3号の適用範囲

〔問8〕
労働基準法第36条第6項第3号に規定する要件は、改正法施行前の期間や経過措置の期間も含めて満たす必要があるのか。
また、複数の時間外・休日労働協定の対象期間をまたぐ場合にも適用されるものであるか。

〔答8〕
労働基準法第36条第6項第3号の要件については、同号の適用がない期間(整備法の施行前の期間、整備法附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされている期間及び労働基準法第139条から第142条までの規定により労働基準法第36条第6項が適用されない期間)の労働時間は算定対象とならない。
また、労働基準法第36条第6項第3号の規定は、複数の時間外・休日労働協定の対象期間をまたぐ場合にも適用されるものである。

(補足)
労働基準法第139条から第142条までの規定とは、業種による適用除外について定めた規定です。

指針に適合しない時間外・休日労働協定の効力

〔問9〕
指針に適合しない時間外・休日労働協定の効力はどうなるか。

〔答9〕
指針は、時間外・休日労働を適正なものとするために留意すべき事項等を定めたものであり、法定要件を満たしているが、指針に適合しない時間外・休日労働協定は直ちに無効とはならない。
なお、指針に適合しない時間外・休日労働協定は、労働基準法第36条第9項の規定に基づく助言及び指導の対象となるものである。

(補足)
指針とは、「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」のことです。
なお、同指針のリーフレットもご参照ください。

適用猶予・除外業務等に係る届出様式の取扱い

〔問10〕
適用猶予・除外業務等について上限規制の枠内の時間外・休日労働協定を届け出る場合に、則様式9号の2を使用することは差し支えないか。

〔答10〕
労働基準法第36条の適用が猶予・除外される対象であっても、同条に適合した時間外・休日労働を締結することが望ましい。
この場合において、則様式第9号または第9号の2を使用することも差し支えない。

(補足)
則様式第9号または第9号の2は、36協定届の様式で、適用猶予される中小企業や除外業務である医業に従事する医師等も所定の36協定届を使用しても差し支えないという意味です。

中小企業に係る届出様式の取扱い

〔問11〕
改正前の労働基準法施行規則様式9号(以下「旧様式」。)により届け出るべき時間外・休日労働協定を則様式第9号(以下「新様式」という。)により届け出ることは可能か。
また、その際、チェックボックスへのチェックを要するか。

〔答11〕
新様式の記載項目は、旧様式における記載事項を包合しており、旧様式により届け出るべき時間外・休日労働協定を新様式により届け出ることは差し支えない。
旧様式により届け出るべき時間外・休日労働協定が新様式で届け出られた際は、改正前の労働基準法及び同施行規則並びに労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(平成10年労働省告示第154号)に適合していれば足り、労働基準法第36条第6項第2号及び第3号に定める用件を満たすことについて協定しない場合には、チェックボックスへのチェックは要しない

(補足)
労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(平成10年労働省告示第154号)また、チェックボックスについては、新様式を確認してみてください。

指針第8条第2号の深夜業の回数制限

〔問12〕
指針第8条第2号に規定する健康確保措置の対象には、所定労働時間内の深夜業の回数も含まれるのか。
また、目安となる回数はあるのか。

〔答12〕
指針第8条第2号に規定する健康確保措置の対象には、所定労働時間内の深夜業の回数制限も含まれるものである。なお、交替制勤務など所定労働時間に深夜業を含んでいる場合には、事業場の実情に合わせ、その他の健康措置を講ずることが考えられる。
また、指針は、限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置として望ましい内容を規定しているものであり、深夜業を制限する回数の設定を含め、その具体的な取扱いについては、労働者の健康及び福祉を確保するため、各事業場の業務の実態を踏まえて、必要な内容を労使間で協議すべきものである。
例えば、労働安全衛生法第66条の2の規定に基づく自発的健康診断の要件として、1月当たり4回以上深夜業に従事したこととされていることを参考として協定することも考えられる。

(補足)

36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針8条
労使当事者は、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合において、健康福祉確保措置を協定するに当たっては、次に掲げるもののうちから協定することが望ましいことに留意しなければならないものであること。

二  労働基準法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること。

指針8条第3号の休息時間

〔問13〕
指針8条第3号の「休息時間」とはどのような時間か。目安となる時間数はあるか。

〔答13〕
指針8条第3号の「休息時間」は、使用者の拘束を受けない時間をいうものであるが、限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置として望ましい内容を規定しているものであり、休息時間数を含め、その具体的な取扱いについては、労働者の健康と福祉を確保するため、各事業場の業務の実態等を踏まえて、必要な内容を労使間で協定すべきものである。

(補足)

36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針8条
労使当事者は、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合において、健康福祉確保措置を協定するに当たっては、次に掲げるもののうちから協定することが望ましいことに留意しなければならないものであること。

三 終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること。

労働基準法第36条第11項に規定する業務の範囲

〔問14〕
労働基準法第36条第11項に規定する「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」の具体的な範囲はどうなのか。

〔答14〕
労働基準法第36条第11項に規定する「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」は、専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務をいい、既存の商品やサービスにとどまるものや、商品を専ら製造する業務などはここに含まれないこと。

労働基準法施行規則第69条第1項第3号の対象となる範囲

〔問15〕
労働基準法施行規則第69条第1項第3号の対象となる範囲はどうなのか。

〔答15〕
建設現場における交通誘導警備の業務を主たる業務とする労働者を指すものである。

(補足)
労働基準法施行規則第69条第1項第3号の対象とは、施行から5年間は適用しないこととされている「工作物の建設の事業に関連する警備の事業」のことです。

自動車の運転の範囲

〔問16〕
労働基準法第140条及び労働基準法施行規則第69条2項に規定する自動車の運転の業務の範囲はどうなのか。

〔答16〕
労働基準法第140条及び労働基準法施行規則第69条2項に規定する「自動車の運転の業務」に従事する者は、自動者運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年労働省告示第7号。以下「改善基準告示」という。)第1条の自動車運転者と範囲を同じくするものである。
すなわち、改善基準告示第1条の「自動車の運転に主として従事する者」が対象となるものであり、物品又は人を運搬するために自動車を運転することが労働契約上の主として従事する業務となっている者は原則として該当する。(ただし、物品又は人を運搬するために自動車を運転することが労働契約上の主として従事する業務となっていない者についても、実態として物品又は人を運搬するために自動車を運転する時間が現に労働時間の半分を超えており、かつ、当該業務に従事する時間が年間総労働時間の半分を超えることが見込まれる場合には、「自動車の運転に主として従事する者」として取り扱うこと。)
そのため、自動車の運転が労働契約上の主として従事する業務でない者、例えば、事業場外において物品等の販売や役務の提供、取引契約の締結・勧誘等を行うための手段として自動車を運転する者は原則として該当しない。
なお、労働契約上、主として自動車の運転に従事することになっている者であっても、実態として、主として自動車の運転に従事することがなければ該当しないものである。

「医業に従事する医師」の範囲

〔問17〕
労働基準法第141条に規定する「医業に従事する医師」の範囲はどうか。

〔答17〕
労働者として使用され、医行為を行なう医師をいう。なお、医行為とは、当該行為を行なうに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為をいうものである。

労働者派遣業の場合

〔問18〕
労働者派遣業を営む事業主が、労働基準法第139条から第142条までに規定する事業又は業務に労働者を派遣する場合、これらの規定は適用されるのか。
また、事業場の規模により労働基準法第36条の適用が開始される日が異なるが、派遣元又は派遣先のいずれかの事業場の規模について判断すればよいか。

〔答18〕
労働者派遣法第44条第2項前段の規定により、派遣中の労働者の派遣就業に係る労働基準表第36条の規定は派遣先の使用者について適用され、同項後段の規定により、時間外・休日労働協定の締結・届出は派遣元の使用者が行うこととなる。
このため、労働基準法第139条から第142条までの規定は派遣先の事業又は業務について適用されることとなり、派遣元の使用者においては、派遣先における事業・業務の内容を踏めて時間外・休日労働協定を締結する必要がある。
また、事業の規模についても、労働者派遣法第44条第2項前段の規定により、派遣先の事業場の規模によって判断することとなる。
時間外・休日労働協定の届け出様式については、派遣先の企業規模や事業内容、業務内容に応じて適切なものを使用することとなる。

一般則適用事業と適用除外・猶予業務等との間で転換した場合

〔問19〕
労働基準法第36条の規定が全面的に適用される業務(以下「一般則適用事業」という。)と同法36条の適用除外・猶予業務等との間で業務転換した場合や出向した場合の取扱いはどうなのか。

〔答19〕
【業務転換の場合】
同一の時間外・休日労働協定によって時間外労働を行わせる場合は、対象期間の途中で業務を転換した場合においても、対象期間の起算日から当該労働者の時間外労働の総計を当該時間外・休日労働協定で定める延長時間の範囲内としなければならない。したがって、例えば、労働基準法第36条の適用除外・猶予業務から一般則適用業務に転換した場合、当該協定における一般則適用業務の円長時間(最大1年720時間)から、適用除外・猶予業務において行った時間外労働時間数を差し引いた時間数まで時間外労働を行わせることができ、適用除外・猶予業務において既に年720時間を超える時間外労働を行っていた場合は、一般則適用業務への転換後に時間外労働を行わせることはできない。
なお、労働基準法第36条第6項第2号及び第3号の規定は、時間外・休日労働協定の内容にかかわらず、一般則適用業務に従事する期間における実労働時間についてのみ適用されるものである。
【出向の場合】
出向先において出向元とは別の時間外・休日労働協定の適用を受けることとなる場合は、出向元と出向先との間において特段の取決めがない限り、出向元における時間外労働の実績にかかわらず、出向先の時間外・休日労働協定で定める範囲内で時間外・休日労働を行わせることができる。
ただし、一般則適用業務の実労働時間については、労働基準法第36条第6項第2号及び第3号の要件を満たす必要があり、労働基準法第38条第1項により出向の前後で通算される。

改正労働基準法第36条  使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
2 前項の協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
 一 この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の
  範囲
 二 対象期間(この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、一年間に限るものとする。第四号及び第六項第三号において同じ。)
 三 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
 四 対象期間における一日、一箇月及び一年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
 五 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
3 前項第四号の労働時間を延長して労働させることができる時間は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限る。
4 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
5 第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない。
6 使用者は、第一項の協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。
 一 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、一日について労働時間を延長して労働させた時間 二時間を超えないこと。
 二 一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間 百時間未満であること。
 三 対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間 八十時間を超えないこと。
厚生労働大臣は、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするため、第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができる。
8 第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長及び休日の労働を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の指針に適合したものとなるようにしなければならない。
9 行政官庁は、第七項の指針に関し、第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。
10 前項の助言及び指導を行うに当たつては、労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない。
11 第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については適用しない

*1:「(補足)」は私の所見を記載しているもので、本通達には記載されていません。