社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



年次有給休暇に関する最高裁判決(昭和48.3.6基発110号)

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年次有給休暇に関する最高裁判決(昭和48.3.6基発110号)~年次有給休暇の基本的な考え方が示された通達です

昭和48年3月2日、労働基準法第39条の解釈について最高裁第二小法定判決がなされたので、今後における同条の解釈運用は下記によって行うので、遺憾のないようにされたい。

(1)年次有給休暇の権利は、法定要件を満たした場合法律上当然に労働者に生ずる権利であって、労働者の請求をまつてはじめて生ずるものではない。労働基準法39条5項の「請求」とは休暇の時季を指定するという趣旨であって、労働者が時季の指定をしたときは、客観的に同項ただし書所定の事由が存在し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権を行使しない限り、その指定によって年次有給休暇が成立し、当該労働日における就労義務が消滅するものと解するのが相当である。
このように解するのならば、年次有給休暇の成立要件として、労働者による「休暇の請求」や、これに対する使用者の「承認」というような観念を容れる余地はない。

(2)年次有給休暇を労働者がどのように利用するかは労働者の自由である。しかし、労働者がその所属の事業場においてその事業の正常な運営の阻害を目的として一斉に休暇を提出して職場を放棄する場合は、年次有給休暇の名をかりた同盟罷業(ストライキのこと)にほかならないから、それは年次有給休暇権の行使ではない。
ただ、このようにいえるのは、当該労働者の所属する事業場で休暇闘争が行われた場合のことであって、他の事業場における争議行為に休暇をとって参加するような場合は、それを年次有給休暇の行使でないとはいえない。

林野庁白石営林署事件(最二小昭和48.3.2民集27巻2号191頁)の最高裁判決を受けて発せられた通達。

要約すると、

①労働者は、有給休暇の法定要件を満たすと、当然に有給休暇を取得する。

②労働者が有給休暇を「請求する」とは時季を指定する趣旨であって、使用者が時期変更権を行使しない限り、指定した日に有給休暇を利用できる。(使用者は、単に有給休暇を「許可しない」とか「認めない」とすることはできない

③労働者は、有給休暇を自由に利用することができる。遊びに行く目的でも、一日ゴロゴロする目的でもよい)。なお、ストライキをする目的で同一の事業場の労働者が一斉に有給休暇を取得することは、認められない(欠勤扱いとなる)。ただし、他の事業場でのストライキ等の争議行為に参加するために有給休暇を利用するのは差し支えない。