社会保険労務士川口正倫のブログ

横浜市の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



弘前電報電話局事件(最二小判昭和62.7.10民集41巻5号1229頁)

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弘前電報電話局事件(最二小判昭和62.7.10民集41巻5号1229頁)

1.事件の概要

Y社は雇用するXの年次有給休暇の時季指定に対し、成田空港反対集会に参加するおそれがあるとして時季変更権を行使したが、Xがこれを無視して出勤しなかったため、戒告処分および賃金カットを行った。そこで、Xは戒告処分の無効確認および未払い賃金の支払いを求めて提訴した。

.判決の概要

労働基準法39条3項ただし書にいう、「事業の正常な運営を妨げる場合」か否かの判断に当って、代替勤務者配置の難易は、判断の一要素となるというべきであるが、特に、勤務割による勤務体制がとられている事業場の場合には、重要な判断要素であることは明らかである。したがって、そのような事業場において、使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当るということはできないと解するのが相当である。

3.解説

労働者が年休を指定した場合、使用者は、労働者が当該日に年休を取得できるよう配慮する義務、当該指定日に年休を享受することを妨げてはならないという不作義務、当該指定日についての賃金または手当の支払義務を負う。しかし、当該指定日について、年休を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者は他の時季に与えることができる(労働基準法39条4項)。ここで法的に問題となるのは、いかなる場合に使用者は時季変更権を行使することができるかであるが、一般的には、当該企業の規模や事業内容、年休を請求した労働者の配置、担当業務の内容や性質、業務の繁閑、代替勤務者配置の難易、時季を同じくして請求した労働者の人数など、諸般の事情を考慮して合理的に決定される。本件は、とりわけ代替勤務者配置の難易について使用者としての「通常の配慮」を求め、そのような配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、事業の正常な運営を妨げる場合に当らないとの見解を最高裁が示した判例

労働基準法39条
1.使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
2.使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。 六箇月経過日から起算した継続勤務年数 労働日一年 一労働日二年 二労働日三年 四労働日四年 六労働日五年 八労働日六年以上 十労働日
3.次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前2項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。
一  一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者
二  週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、一年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に一日を加えた日数を一週間の所定労働日数とする労働者の一年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者
4.使用者は、前3項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

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