社会保険労務士川口正倫のブログ

横浜市の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ

宣伝会議事件(東京地判平成17.1.28労判890号5頁)

宣伝会議事件(東京地判平成17.1.28労判890号5頁) 

 

1.事件の概要

 

大学院博士課程の学生であったXは、平成14年6月17日、Y社から平成15年4月1日を入社日とする内定通知を受け、その際、Y社の担当者Aから、2週間に1回2~3時間程度の研修に参加しなければならないなどの説明を受け、これに同意した。しかし、同年12月以降、博士論文作成のため、研修を欠席するようになり、研修が遅れていることから、平成15年3月28日、Aから「試用期間の延長か中途採用試験の再受験」の選択を求められ、Xはこれを拒否したところ、Aは内定を取り消す旨の意思表示をした。Xは、平成15年5月1日から平成16年3月31日までB研究所に非常勤職員として勤務した。Xは、違法に内定を取り消されたとして、債務不履行に基づき、Y社に損害賠償を求めた。

2.判決の概要

 

効力始期付の内定では、使用者が、内定者に対して、本来は入社後に業務として行なわれるべき入社前の研修等を業務命令として命ずる根拠はないというべきであり、効力始期付の内定における入社前の研修等は、あくまで使用者からの要請に対する内定者の任意の同意に基づいて実施されるものといわざるを得ない。従って、Xが・・(中略)・・入社前研修に参加する義務はなかったのであるから、入社前研修への不参加を理由に本件内定を取り消すことはできない。
本件内定取消しは違法であるところ、Y社は、内定者に対して、違法な内定取消しを行なわないように注意すべき義務を負っているにもかかわらず、これを怠ったものとして、債務不履行(誠実義務違反)に基づき、本件内定取消しと相当因果関係があるXの損害を賠償すべき義務を負う。

3.解説

 

採用内定の法的性質を、始期付解雇権留保付労働契約とした場合、始期について、就労を除く権利義務は生じているとする就労の始期と解する考え方と、始期まで権利義務関係の効力が生じないとする契約の効力始期とする見解がある。この違いによって、就労開始前の内定期間中に、内定者が研修参加やレポート提出などの義務を負うか等について違いが生じるが、本件は下級審ながら、契約効力の始期と解し、研修参加拒否等を理由とする採用内定取消しを違法とした判例

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