社会保険労務士川口正倫のブログ

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【雇止め】ロイター・ジャパン事件(東京地判平成11.1.29労判760号54頁)

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ロイター・ジャパン事件(東京地判平成11.1.29労判760号54頁)

 

参照法条 : 労働基準法2章
体系項目 : 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 : 1999年1月29日
裁判所名 : 東京地
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成7年 (ワ) 13077 

1.事件の概要

通信社Yに新聞の募集広告を見て応募し、雇用期間1年とする通知書をもって契約社員(翻訳担当記者)として採用されたXが、1年で雇用契約が終了することを確認する通知を受けたので、主位的には、本件雇用契約は期間の定めのないものであり、通知は解雇権の濫用で無効であるとし、予備的請求として、期限付き労働契約であるとしても、更新拒絶は信義則上許されないとして、労働契約上の地位の確認を求めた。判決は、本件雇用契約を期間の定めのある契約としたうえで、予備的請求について、以下のとおり判断した。

 

2.判決の概要

 正社員の採用を予定し、Xを含めて7名の翻訳担当記者を採用したY社が、6名については正社員としての雇用契約書(通知書)を作成し、一人Xとの間でのみ期限付きの雇用契約書(通知書)を作成したこと、そもそもY社においては、正社員がほとんどで契約社員の例は極めて少ないことなどに照らせば、Y社にとって、契約社員としてXを採用するのは異例のことであったというべきで、したがって、通知書の期間の定めを形式的なものとする認識は全くなく、文字通り期限付きの雇用契約を締結する意思で、右通知書を作成したものということができる。そして、Xにおいても、Aの発言から期間満了後も契約の更新や正社員への採用があるとしても無条件ではないことを認識し、その上で前記のとおり、通知書に署名していること、さらに前記のとおり、Bから中間パフォーマンス・レビューの結果の説明を受ける際、Xの雇用期間が1年である旨説明されて異議を述べていないことなどに照らせば、Xとしても自分が期限付きの契約社員であることを認識していたというべきである。
本件雇用契約は、期限付きの契約というほかなく、他にXの主張を認めるに足りる証拠もないから、Xの主張は採用できない。
期限付き雇用契約の更新拒絶等が信義則上許されないのは、当該雇用契約について、労働者に契約更新を期待する合理的理由がある場合であることは確立した判例であり、当該労働者の期待が合理的であるかどうかは、当該雇用契約時の状況、就業実態や待遇、契約更新の手続等の事情を総合的に考慮して決するべきものと解されるところ、本件の場合、そのような事情はない。

 

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